人妻 吉井香苗(102)

香苗が中嶋と関係を結んでから、もう2ヶ月以上が経っていた。

SEXの快楽に溺れる毎日。

しかしそんな日々の中でも、香苗は主婦としての家事もしっかりこなしている。

だから夫である祐二には中嶋との事はバレていない、香苗はそう自分で思っていた。

もちろん、いつか何かの切っ掛けで知られてしまうのではという恐怖感はある。

香苗は不倫をしているのだ。心置きなく日々を過ごせるわけがない。

そんな日々に香苗の心は疲れ果ていた。

なのに中嶋とのSEXはやめられない。

しかしそんな日々にもついに変化が訪れることになる。

ある日香苗は、買い物に行く為に部屋を出たところで隣人である恭子と出くわした。

そう、あの中嶋の恋人でもある恭子だ。

おそらく恭子がこの部屋に引っ越してこなければ、香苗が中嶋に出会う事は一生無かっただろう。ましてや不倫関係になる事も。

ここ最近はずっと恭子の仕事が忙しかったからなのか、顔を合わせる事はなかった。

しかし香苗にとって恭子は良き友人のはずだった。

恭子が引っ越してきたとき、新たな友人ができたと喜んでいた事を思い出す。

だからその分、余計に気まずい雰囲気が漂う。

先に声を掛けてきたのは恭子の方だった。

恭子 
「あ、香苗さん、こんにちは。」

香苗 
「こ、こんにちは。」

恭子 
「買い物ですか?」

香苗 
「えぇ……」

恭子 
「私、今日久しぶりに休みなんですよ。」

香苗 
「そうなんだ……。」

エレベーターは1つしかない。

そのまま2人は共にエレベーターの中に入る。

香苗の動揺した態度は分かり易いものだった。

エレベーターという狭い個室の中で、その気まずい雰囲気はさらに充満した。

恭子 
「……」

香苗 
「……」

沈黙が続く、重苦しい空気。

自分と中嶋との関係を、恭子は知っているのだろうか。そして知っているとしても、どう思っているのだろうか。

そんな考えが香苗の頭の中をグルグルと回る。

友人の恋人とあんな関係を結んでしまうなんて、自分自身でも信じられないくらい最低な行為だ。

なぜこんな事になってしまったのか、今となっては分からない。

しかし事実、ここ2ヶ月の間、香苗の頭の中にその罪悪感はなかったし、友人である恭子の事は考えてこなかった。

だからなのか、恭子の顔を見た瞬間、パニックに陥ったように混乱してしまう。

その場から早く逃げ出したかった。

このエレベーターの中にいると、苦しくて窒息してしまいそうだ。

そんな中でこの沈黙を破ったのも、恭子の方だった。

恭子 
「祐二さんも最近仕事がさらに忙しくなってるみたいですね。祐二さんは元気ですか?」

香苗 
「え……?」

突然夫の祐二の事を聞かれ、なんと答えたら良いのかわからなかった。

祐二が元気かどうか?

夫が元気かどうか、香苗はよく知らない。

確かに恭子の言うとおり、祐二はここ2ヶ月くらいでさらに忙しく働いていた。

帰りが遅くなったり、時には会社に泊まりこみなんて日も多くなっていた。

最近の祐二は、どんな顔をしていたか。

疲れた顔か、元気な顔なのか、香苗は全く見てなかった。

だから香苗は知らない。

知らない事を聞かれたから、夫の事を聞かれたから、香苗はどう答えたら良いのか分からないのだ。

香苗 
「……。」

恭子 
「……香苗さん、実は私、少し前に電車の中で祐二さんと一緒になったんですよ。」

恭子が言い出すことが全て思ってもみなかったことで、香苗は何も言えずただそれを黙って聞いていた。

恭子 
「祐二さん言ってましたよ。仕事は大変だけど、1日の内で香苗さんの料理だけが唯一の楽しみだって。」

香苗 
「ぇ……」

恭子 
「私も香苗さんくらい料理が上手だったらなぁ。」

恭子がそう言ったところで、1階に到着したエレベーターのドアが開いた。

しかし恭子はその場でこう続ける。

恭子 
「私羨ましいなぁ……香苗さんと祐二さんみたいな夫婦。」

そう呟き、エレベーターを出る恭子。

恭子 
「じゃあ私、行きますね。」

ただそこに立ち尽くす香苗を置いて、恭子はマンションを出て行く。

香苗には分からなかった。

恭子がなぜそんな事を言ってきたのか。

ただ、恭子の言葉を聞いた香苗の心が、何かに強く締め付けられている事だけは確かだった。

コメント

  1. ろっきー より:

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    うわぁ
    今後の展開が楽しみ♪

  2. まとめtyaiました【人妻 吉井香苗(102)】

    香苗が中嶋と関係を結んでから、もう2ヶ月以上が経っていた。SEXの快楽に溺れる毎日。しかしそんな日々の中でも、香苗は主婦としての家事もしっかりこなしている。だから夫である祐二には中嶋との事はバレていない、香苗はそう自分で思っていた。もちろん、いつか何か…

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