人妻 吉井香苗(103)

中嶋 
「ん?今なんて言ったんだ?」

中嶋は恭子の部屋のソファで寛ぎながらそう聞き返した。

恭子 
「だから、もう香苗さんには会ってほしくないの。」

恭子の表情は真剣だった。

そしてそれと同時にどこか悲しげでもあった。

中嶋 
「ハハッ、急にどうしたんだよ恭子。」

そう言ってソファから立ち上がると、中嶋は恭子の傍まできて肩に手を回す。

恭子 
「やめて欲しいの。」

中嶋 
「恭子、そういう方面は自由で良いって言ってくれてたじゃないか。気が変わったのか?」

恭子 
「そう、変わったの。だから止めて。」

中嶋 
「ハハッ、おいおい本気で言ってるのか?」

中嶋は笑っているが、恭子の表情は変わらない。

恭子 
「本気よ。止めてくれないなら……私……。」

中嶋 
「……どうするんだよ。」

恭子 
「別れるわ……もう私の部屋には入れない。」

中嶋 
「へぇ、そうか。恭子はそれでもいいのか?俺が居なくなっても。」

恭子の言葉を聞いて、中嶋が動揺している様子はない。

寧ろ落ち着き、余裕さえ感じる。

恭子 
「いいわ。でも、英治だって私が居なくなったら困るでしょ?……その……お金とか……。」

恭子の目には涙が溜まっていた。

この時、お金という言葉を使った恭子には、なにか覚悟のようなものがあったのかもしれない。

数日前の事だ。

仕事帰りの電車の中で、恭子は香苗の夫である吉井祐二と偶然にも会った。

祐二 
「あれ、恭子さん?こんばんは。」

恭子 
「え?あ、祐二さん、こんばんは。」

お互い働き盛りであるサラリーマンとOLは、共に少し疲れが顔にでていた。

祐二 
「相変わらず恭子さんも、こんな遅くまで仕事?大変だね。」

恭子 
「はい、でも祐二さんも最近は忙しそうですね。」

祐二 
「ハハ、まぁね。」

働く者同士のそんなありふれた会話。

しかし、恭子はそんな中で祐二に対して少し負い目を感じるような気持ちを抱いていた。

それは祐二の妻である香苗と、自分の恋人である中嶋英治との関係を知っているから。

不倫関係、セックスフレンド。いや、中嶋の言葉で言い表すなら性奴隷という関係。

2人がどれだけ身体を重ねているかは、詳しくは知らない。

だが、中嶋が香苗の身体を性処理の道具としてしか使っていない事は知っている。

祐二の様子を見るからに、おそらく祐二はその事には全く気付いていないのだろうと、恭子は感じていた。

祐二 
「こんな事聞くのもなんだけど、恭子さんは結婚とか考えてないの?」

いくつかの会話をして、少し打ち解けてきたところで、祐二がそう聞いてきた。

この歳で働く独身女性が、よくされる質問だ。

恭子 
「ん~結婚願望は一応あるんですけどね。」

祐二 
「彼氏、中嶋さんだっけ?もう付き合って長いの?」

恭子 
「えぇ、もう5年位かな……。」

祐二 
「じゃあそろそろって感じじゃないの?」

恭子 
「さぁ、彼がどう考えてるか分からないですから。」

恭子は自嘲するように笑みを浮かべならそう言った。

恭子と中嶋は一応恋人関係という事になっている。そう、一応だ。

恭子は中嶋を愛していた。

だが、中嶋の方は分からない。

中嶋のどこが好きなのか、なぜ中嶋を愛してしまうのかは自分でも分からない。

でも、中嶋に抱かれている時はいつも感じる。

私はこの人を愛しているのだと。

中嶋は遊び人だ。働いてもいない。

株式トレーダーだというのも嘘。

本当は、恭子が働いた得た金で生活しているようなヒモ男なのだ。

それどころか、平日は毎日のように他の女を連れ込みSEXをしている。

中嶋は女を虜にさせる程のSEXの技を持つ男だ。

中嶋のSEXを知った女性は、殆どがその快楽に夢中になってしまう。

そして恭子もその内の1人であった。

しかし恭子自身はそんな女達と自分は同じではないと思っていた。

自分が中嶋に対して抱いている気持ちは、他の人達とは違うと。

だが中嶋にはそれが伝わっているかどうかわからない。いや、きっと伝わっていない。

だから恭子はお金で中嶋を繋ぎ止める事でしか、それを表現できなかったのだ。

恭子 
「祐二さん……あの……結婚生活って良いものですか?」

祐二 
「ん?ん~そうだなぁ、まぁ人にもよるんだろうけど、俺は間違いなく結婚して良かったと思ってるよ。」

祐二はそれ程考える事もく、サラリとそう言い放った。

おそらくそれは祐二の中に何の疑いもなく存在する確かな気持ちなのだろう。

祐二 
「俺なんて香苗の料理だけが1日の内の唯一の楽しみみたいなものだからね。」

恭子 
「香苗さんの料理、本当に美味しいですもんね。」

祐二 
「やっぱり家に帰ればご飯を作って待ってくれている人がいる。それがあるのとないとじゃ全然違うよ。」

恭子 
「……なんか良いですね。」

祐二 
「まぁ俺なんて、元々根性ある方じゃないからね、家族が居なかったら疾うに会社なんて辞めてギブアップしてるよ。」

嬉しそうにそう話す祐二の表情を見て、恭子はこれが幸せを感じているって事なのだろうなと思っていた。

だからなのかもしれない。

恭子が中嶋にあんな事を言ったのは。

もう終わりにしないといけない、と。

コメント

  1. より:

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    いつも興奮しながら読ませていただいてます。
    いつの日か、香苗さんだけでなくて、恭子さんも、激しくア○ルをピストンされるようなストーリーが出てくることを期待してます。というより、今日こそは今日こそは、と楽しみにチェックしてます。

  2. メンメン より:

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    コメントありがとうございます。

    恭子のア〇ルですかぁ、それはそれで良いですねぇ(笑)

    いや実はそろそろ香苗の物語は完結するって予定なんですが、意外と恭子関連のリクエストも多いですね。

    番外編みたいにするか……でも、女子大生水野果歩に出てくるサブキャラの番外編とかも書くとか言っておいて、まだ全然書いてないんですよねぇ。

    恭子も書きたいけど……検討しておきますと一応言っておきます(笑)

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