祐二
「いえ…あの……すみませんでした!こちらとしましても今後はこういった事がないように……」
……こんなにペコペコ他人に謝る姿、香苗には絶対に見せたくないな……
工場長の前で深々と頭を下げる祐二。
まさか、自分の人生でこんなにも人に頭を下げ続けなければいけない日々が来るとは思っていなかった。
どうして俺がこんな事を……そんな風に本気で思う事もしばしば。
しかしそこは歯を食いしばって我慢。それは責任ある立場の人間の宿命。
だから祐二は何を言われても耐え、そして謝り続ける。
今回の出張では、これが祐二の仕事なのだ。
祐二が働く会社のミスで、取引先の地方の工場に不利益が生じてしまった。そのため、祐二とその他数人の社員で謝罪とその後の対処をするためにここまできたという事である。
自分の会社でも上司から怒られ、さらにこの地方まで怒られに来ているのだ。
だから正直、今回出張のために家を出る時は気持ちが沈んでいた。
祐二
「……はぁ……」
……キツイなぁ……
ストレスの溜まり具合が分かるような深いため息。
実は最近、祐二にはこういった仕事が多い。
社会人生活をスタートして今まで、順調に昇進してきたのは良いが、今は所謂中間管理職。
上からと下からのプレッシャーに挟まれる立場。
だから今は体力的疲労に加え、精神的な疲労に日々苦しんでいた。
しかしだからと言って、へこたれてはいられない。
なぜなら今の祐二はすでに結婚して家族を持ち、その家庭を支える大黒柱でもあるのだから。
今はまだ子供は居ないが、最愛の妻である香苗がいる。
家族のために頑張るしかない。
いつも心が折れそうになる時に支えになっているのは、やはり妻である香苗の存在だった。
家に帰れば、あの笑顔が待っていてくれる。それだけで、祐二は何事にも耐える事ができるのだ。
「吉井さん、今日はこの後どうします?」
出張を共にしてきた1つ年下の部下がそう祐二に声を掛けてきた。
祐二
「え?どうするって、晩飯の事?それなら昨日美味しい店を何軒か教えてもらったから……」
「違いますよぉ、さっき休憩の時に言ったじゃないですか、凄い可愛い子が居る良い店見つけたって。」
祐二
「あ~あの事か……え?もしかして今日も行くつもりなのか?」
「へへ……もちろん。もうストレス発散しないとやっていけないですよ。」
この独身の部下が言っているのは、もちろん風俗店の事だ。
祐二
「よくやるね。そんな所に行ったら1日働いた分の給料が飛んでしまうんじゃないか?」
「でもホントに可愛いかったんですよその子。だからどうです?吉井さんもたまには。」
祐二
「俺は遠慮しておくよ。一応結婚してる妻もいるしね。」
「はぁ、真面目だなぁ吉井さんは。結婚してても結構行ってる人多いですよ。」
祐二
「え~そうでもないだろう。まぁ俺はその前にそういう店、興味ないからね。」
「え?マジっスかぁ、でも1回行ってみたら意外とハマっちゃうかもしれませんよ。やっぱり素人とはテクニックが違いますから。」
祐二
「なんだよそれ……兎に角俺は遠慮しておくよ。」
「へぇ~奥さんに一途なんですね、吉井さんは。あ~そうか、あの美人な奥さんなら一途にもなりますよね。」
その部下は、数年前の祐二と香苗の結婚式を思い出しながらそう言った。
当時同じ職場仲間達の間では、祐二の結婚相手が相当に美人だとよく話題になったものだ。
それに加え料理上手、家事上手だと言うのだから文句のつけようが無い。
祐二
「ハハッ、お前も早く結婚した方が良いぞ。全然違うから。」
そう、祐二は妻である香苗に一途だ。
祐二自身は、香苗に出会ってから他の女性に目移りした事など一度も無い。
それはきっと香苗も同じだろうと、祐二は夫婦間の関係に自信を持っていた。
香苗はいつも素敵な笑顔でいるし、幸せそうであった。
それに何か結婚生活に不満を持っているなどとは一度も聞いた事はないし、そんな素振りも見たことはない。
1つだけ不安要素があるとすれば、最近祐二の仕事が忙しくなってきて、一緒にいる時間が少なくなったという事くらいであろうか。
しかし香苗も大人の女性だ。その辺りはしっかり理解してくれていると思う。
そういえば、忙しくなった影響で最近は夜の営みも減っていた。
それで少し前に香苗の方からベッドの中で誘ってきてくれた事があったが、それには祐二なりにしっかりと応えたつもり。
元々2人とも性に関しては淡白な方であるという認識だったため、祐二はSEXが減った事をそれ程深く考えていなかった。
子供に関しても、欲しいという気持ちが生まれたら作ろうと二人で決めている。
だから祐二は、香苗が何か生活に不満を抱えているなどとは夢にも思っていなかったのだ。
俺達の結婚生活は順調だと、信じて疑わなかった。
……香苗どうしてるかな……
精神的疲労が溜まったこんな日は、やっぱり香苗の声が聞きたい。
あの声を聞くだけで、どれだけ祐二が癒される事か。
祐二
「今頃、香苗も飯でも食ってる頃か……」
そんな事を呟きながら、祐二は携帯電話を取り出してボタンを押し始めた。
コメント
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毎日の更新ありがとうございます
夫の描写を丁寧に描いていただいて嬉しく思います
寝取られものは寝取られる側の描写が甘いと味気ないものになってしまうと感じてましたので香苗の堕ちていく肉体と心の落差が一段と感じられて興奮できます
個人的には寝取られものは大好きなのでこれからの展開にわくわくしてます
これからの更新も楽しみにしてます
がんばって下さい
メールにしようかとも思いましたが非公開でもコメントがあると他の方もコメントを残しやすいかなと思いこちらに書かせてもらいました
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メンメン様、今晩は。
コメント欄でのやり取り、私もいつも拝見しています。
ハラハラしていましたが、やり取りがいい流れで終わり、ホッと胸を撫で下ろしました。本当に良かったです…。
ところで、実はメンメン様に聞いていただきたい話があるんです。
日々、こちらの官能小説やH体験談を告白するサイトを読んだりアダルト動画を観たりしている内に、自分の中の性欲が日を増すごとに膨らんできてるんです。
今月の生理前後は、人生で最も強く性欲に飢えてしまうくらいムラムラしました。
私は25歳にも関わらず、まだ処女を護ってます。
でも誰かとセックスがしたくて、たまらなくなりました。
そして先日、ある男の人に「会いたい」と連絡し、今月の三週目に会う事になりました。
私はその人(以下、Nタツ)に処女を奪われることを望んでいます。
Nタツとの出会いは、大学の頃のダンス系のサークルでした。
私が三年の時、彼が一年で後輩として入ってきたのですが、お互いに人見知りだったので全く話す機会が無く、話そうとする努力もお互いしませんでした。
当時はお互いに対する興味が全く無かったんです。
彼とはじめて話したのは、それから一年半後です。
彼の名前はNタツ、私はN子。
Nの部分は同じ字で同じ呼び方だったので、そこで驚きましたし、仲良くなるきっかけにもなりました。
実はサークル内で唯一のゲーマー同士だったという事もあり、その後は今までの人見知りが嘘だったかのように打ち解け合いました。
「なんでもっと早く話しかけなかったんだろうね」が私達の口癖でした。
そして彼は執拗に私にボディタッチをするようになりました。
ボディタッチは日を追うごとに大胆にストレートになっていきました。
でも当時彼には彼女さんがいたので、これは単なるちょっかい、単なる遊び心なんだ、と思い、あしらってました。
ところが内心では、Nタツからのいやらしいタッチに悦んでる自分が現れはじめました。
彼は見た目も性格も好みでしたし(正直かなりのイケメンでした)、男らしい手つきで肌に触れられるとドキッとしました。
「私達、親友だよね」がその頃の二人の口癖でした。
続きます。
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続きです。
自分が恋してるのかしてないのか曖昧な気持ちのまま私は大学とサークルを卒業、新たに別の社会人中心のダンスサークルに入団しました。
なので、前にいたサークルとの交流は、その後もダンスイベントなどでしょっちゅうあり、Nタツとも変わらずの関係でした。
所属する団体がお互い別々になった事が、一層Nタツからのボディタッチを過激にしていきました。
この頃には、彼の目的が私の身体なのだという事がハッキリと判ってました。
ある日、いつものように仲の良いメンバーでNタツの家で飲んでました。
朝になって一人また一人と帰っていき、気付けば私だけが残っていました。
寝ていた私の布団の中に彼がスルリと入ってきて、ギュッと抱きしめられました。
私も自然に彼の背中に腕を回しました。
首にキスされ、胸に顔を埋められました。
その日はそれだけでしたが、私はなんともいえない幸福感を味わったように思いました。
そんな事が三度ほどあった後、彼には新たに別の彼女がいた事が発覚し、しかもその子はサークル内の仲間で、私にとっても大事な後輩であり友達でした。
それを隠して私にああいう事をしていたのが、その時は悔しくて許せませんでした。
本当に、私の事は単に身体目当てだったのです。
…でも私は結局、彼を許しました。
“私は年上で大人なんだから、そんな事で責めたりしない”という態度を彼に取りたかったんです。
許したお陰か、二ヵ月後くらいからまた親友の関係が安定しました。
しばらくして、Nタツが今カノと別れた事が判明したのですが、だからと言って自分が新しい彼女になりたいという気持ちにはなれませんでした。
彼の浮気癖、好みの身体の女の子に安々と触れるタッチ癖に、私はすっかり呆れ果てていたからです。
そして別々の団体になってから一年後、飲みに誘われて二人でNタツの家で飲んだ次の朝、ついにキスを受け入れてしまいました。
はじめからディープで、気付けばブラを外されて胸を鷲掴みされ、彼は「ヤバイ…」と呻いてました。
私はこの時、以前の時のような幸福感が湧きませんでした。
“またどうせ、本命の彼女がいるに違いない。私は身体だけ貪られてそれでお終いなんだ”という思いがよぎり、私は喘ぐのをやめました。
私の喘ぎが聞こえなくなり、Nタツは行為を止めました。
“感じてくれてない”という彼の心の言葉が伝わってきました。
「こんな事…しなきゃ良かった」と、私は後悔の言葉を初めて彼に投げました。
その後、仕事の忙しさで私は長い間ダンスから離れ、Nタツともそれ以来会っていません。
彼は相変わらず、色んな女の子と付き合っては別れ、を繰り返して過ごしてるのだろうと思います。
最初で最後だったキス、あの日から一年と八ヶ月経ちましたが、いまだにセックスの経験が無い私は、あの時の続きがしたいと思ってしまう事が増えました。
彼も、私が処女だという事をなんとなく察していて、ボディタッチ中にも“処女であって欲しい”と呟いていました。
そんな彼になら(女に対してだらしない彼ですが)、彼にとっては今更なのかもしれませんが、奪われてもいい、と思ってしまいます。
そして私は先日、一年と八ヶ月ぶりに彼にメールを送りました。
今の私は、割り切ってでも彼との肉体関係を欲しています。
行為を望んでる事は直接は打ってませんが、向こうも「早く会いたいv」と以前と変わらない反応だったので、何かを起こせそうな気がしています。
結局、私も身体だけが目当てなのかもしれません。これが恋だとは思えません。
学生時代、一緒に青春の思い出を作っていた人(しかもイケメン)に処女を奪われる事は、自分にとって悦びなのだと信じたいです。
彼との再会の日まで一日一日と迫り、カウントダウンされてるように感じてドキドキします。
彼とセックスできることになったら、私は溜め込んでいた想いや欲望を爆発させてしまう予感がします。
彼を気持ち良くしてあげたい…そして彼にとっても、自分にとっても一生忘れられないセックスにしたいです。
彼が、私との行為をどう思ってくれるのか、とても不安でもあります。
突然、長い長い身の上話を送ってしまって、本当に申し訳ありません。
リアルでは誰にも言えない話な気がして、でも誰かに聞いて欲しくて、メンメン様ならきっと聞いてくださる、と勝手ながら思ってしまいました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
一度、別のページにて間違えて載せてしまいました。大変すみません。
失礼いたします。
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コメントありがとうございます。
今回はメリハリというか、ワンクッション置く意味でも祐二視点の回を入れてみました。
僕も寝取り・寝取られ系の小説は大好きです。
水野果歩も吉井香苗も女性視点中心なので寝取られとは呼びにくい感じもありますが、いつか男性視点の寝取られものも書いてみたいと思っています。
心がえぐられるような苦しみの中に生まれる凄まじい興奮を描きたいですね。
土日は通常更新休みですので、また明日から頑張りたいと思います。
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一度返答しましたが、消してまた書き直しました。
nonaさん、お話全て読みました。
僕はnonaさんのお話から1つ感じた事があります。
それはnonaさんは本当に心の澄んだ綺麗な方だなぁという事です。
相手の気持ちへの不安や、自分自身の心についての悩み。
でもそうやって悩んでいる事自体が、人間的に素敵だと思います。特にnonaさんは自分自身とちゃんと向き合ってますし。
性に関する悩みも、それは決して悪い事でも不純な事でもないと思います。寧ろそうやって相手の方を欲する気持ちは凄く純粋な感じがします。
僕も状況は違いますがそういった事で悩む事は多いです。性欲も強いし、人肌恋しくなって寂しくなる事もよくあります。
でもそれってきっと世の中の人は皆そうなんだと思います。
人間誰もが欲を持っていて、弱くて寂しがりで、安心できる人の温もりをいつも欲しているのだと。
その中でnonaさんのように悩む心ってやっぱり凄く綺麗なものだなぁと思います。
僕も25歳でまだ人生経験未熟なので分かりませんが、きっとnonaさんのその真っ直ぐな心で人を見ていけば、いつか心を満たす事ができる幸せを得る事ができるのではないでしょうか。
もちろん、悩みというのはいつも付きまとってくるものだと思いますが、その悩みからnonaさんが幸せを見つける事ができるよう、遠くから願ってます。
心の中の大切なお話、聞かせて頂きありがとうございました。嬉しかったです。
追記…その、SEXに関しては難しいのですが、そういった場合、相手の気持ちも大切ですが、やはりその前に自分の心とどう向き合うかが重要だと思います。
素敵なSEXになるかどうかは、自分自身の心次第なのかもしれません。
nonaさんの不安に対する答えにはなっていないかもしれませんね、ごめんなさい。
また何か不安な事とかあったら気軽にお話聞かせてください。
答えを出す事はできないかもしれませんし、話を聞く事くらいしか僕にはできないかもしれませんが。