人妻 吉井香苗(73)

裕二 
「あー疲れたぁ!」

スーツを脱いで着替えを終えた裕二が、そう声を出してソファに寝転がる。

数日前、そのソファの上で香苗と中嶋は始めてSEXをした。

そんな事を少しも知らない、夢にも思っていない裕二。

久しぶりに我が家に帰ってきた安心感、温かさを感じながら、裕二はそのソファの上で寛いでいる。

香苗はそんな裕二を、なんとも言えない表情で見つめていた。

香苗 
「……。」

裕二 
「ん?どうした?」

香苗 
「ううん……お茶でも入れようか?」

裕二 
「あぁ、うん。」

寝室にも、このリビングにも、証拠は一切残っていないはず。

使ったコンドームも、汚れたティッシュも、全てビニール袋に入れて捨てた。

ベッドのシーツや枕カバー布団カバーも別の物に変えて、消臭スプレーも散々撒いたから、中嶋の臭いは完全と言っていい程無くなっている。

だが、それでも香苗は怖かった。

裕二が何か気付いてしまうのではないかと、何度も裕二の顔色を窺ってしまう。

裕二 
「中嶋さんってさ、結構良い人そうだな。」

香苗 
「ぇ?……う、うん……。」

裕二 
「最初専業トレーダーをやってるって聞いた時はどんな人だろうと思ったけど、礼儀正しいし、爽やかだし、恭子さんともお似合いだな。」

香苗 
「……。」

しかし結局この日、裕二がその何かに気付くことはなかった。

ソファでも浴室でも、そして夜ベッドの中に入った時にも、何一つ疑いはしなかった。

愛する妻はこの部屋で1人、ずっと自分の事を待っていてくれたのだと、当然のように思っている。

出張中は慣れないホテルのベッドで1人で寝ていた裕二。

こうやって香苗と一緒に寝るのとでは全く違う。

香苗の体温や匂いを感じながらでないと、裕二は熟睡できない。それは今回の出張で裕二が気付いた事の1つだ。

結婚してから数年、もう慣れてしまってそれが当たり前のようになっていたけれど、今こうやって香苗が横にいてくれる、それがどんなにありがたい事なのか、裕二は沁々と感じていた。

裕二 
「……香苗……」

そう小さな声で呟くと、裕二は布団の中で香苗の手をそっと握った。

その頃、隣の部屋では……。

恭子 
「ねぇ英治、もしかしてあなた……香苗さんを……」

中嶋 
「ん?……ハハッ、まぁあれだ、あの奥さんも真面目そうに見えて、あっちの方は相当溜まってたみたいだな。俺がちょっと刺激しただけで簡単に崩れたぞ。」

恭子 
「はぁ……やっぱり、そうだったのね……。」

先程の香苗と裕二の前での言動、そして中嶋の態度や表情、香苗を見る目、それらを見ていて、恭子にはこの1週間の内に中嶋と香苗の間に何があったのか、大体の予想が付いていたようだ。

中嶋 
「なーに浮かない顔してるんだよ。」

そう言って、着替えていた恭子の背中に歩み寄り、肩を抱く中嶋。

恭子 
「……香苗さんは私の友達なのよ。それに裕二さんがいるのに。」

中嶋 
「その旦那に不満があるから、あの奥さんも色々と溜め込んでたんだろ?俺が手を出さなくても、いつかちょっとした切っ掛けで浮気してたって。しかもあれはその自覚が全く無かったタイプだから余計にな。」

恭子 
「そんな……私が言いたいのは……」

中嶋 
「心配するなって、ただの遊びだよ。俺が一番大切に想っているのは恭子だけだっていつも言ってるだろ?」

恭子 
「……英治……」

中嶋 
「あっちに関しては開放的でも良いって、恭子言ってくれたよな?」

恭子 
「……でも……だからって香苗さんとまで……」

中嶋 
「遊びだって言ってるだろ?本気なんかじゃない。」

それを聞いて、恭子は少し考えたようにした後、小さくため息をついた。

恭子 
「香苗さんは……嫌がってないの?」

中嶋 
「お前や旦那にバレるのは嫌がっていたけどな。フッ、身体が言う事聞かないらしい。俺と恭子の関係を知っていて我慢できないんだからな、女の友情なんてそんなもんだろ。お前もあの人妻にあんまり幻想を抱かない方がいいぞ。」

恭子 
「……。」

中嶋の言葉を聞いて、悲しそうに俯く恭子。

中嶋 
「恭子が毎日俺の相手してくるなら、俺もそんな事しなくて済むんだけどな。恭子、仕事忙しくて無理だろ?」

恭子 
「英治は……最低よ。」

中嶋 
「……そうだよ、俺は最低の男だ。だけど、それでもお前にはそんな俺が必要なんだろ?」

恭子 
「……うん……私、英治がいないと死んじゃう。」

そう言って、恭子はゆっくりと中嶋の胸の中に顔を埋める。

そしてそんな恭子の身体を、中嶋は長い腕でそっと抱き締めた。

コメント

  1. かっちい より:

    SECRET: 1
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     ご返事ありがとうございました。ブラックリストは無かったということで安心しました(笑)。

     1つの小説を書きあげたとき、理想をいえば疑問点が最後まで残らないように書きあげてもらいたいということなんですが…。
     吉井香苗編を再度読み直してみて、疑問点を幾つか出してみたいと思います。

    ①恭子さんと中嶋が出会うことになったいきさつとは?

    ②中嶋の職業はおそらく嘘であろうと推測されるが、恭子さんが中嶋を自分の部屋に住まわせていることとどう関係するのか?もっと言うと、恭子さんは中嶋のことをどう思っているのか?それは高いマンションを選んだこととどう結びつくのか?

    ③今日のところで『遊び』という表現が出てきたが、過去にも中嶋の開放的な『遊び』に付き合ったことがあるのか?
     
    ④まったくもって登場人物の年齢に触れてないのは作戦なのか?(それはそれでありでしょうけど…)

     読み直してみると、恭子さんと中嶋との食事会のあとの香苗さんの自慰行為及び翌日の祐二さんとのSEXの後の自慰行為は、翌々日に別の女性を連れ込んだ際に初めて行った方がよりしっくりきたのではないかと思ったこと以外、実に順調に進んでいると思います。恭子さんと中嶋とのSEXの後の香苗さんは驚きと興奮を覚え、翌日の祐二さんとのSEXの後は物足りなさを感じ(焦燥感)、中嶋と他の女性との行為の時に一気に自慰行為に走る方が流れ的にすっきりしたような気がしてます。

     しかし、心理描写が【吉井香苗編】では巧みで、SEXシーンを引き立てるための味付けはいい感じです(携帯を使用していたならここにハートマークを入れるとこです(笑))。前作で苦しんでいた作者とは違う人が描いているに違いない(苦笑い)!
     それぞれの人物が思いをめぐらせながら物語が進行するのは本当にしっくりきますね。無理な展開はあまり望みません。心の動きを思いめぐらせていけば描くべきタイミングをはずすこと無く描けることが出来、無理とも感じずに作品が仕上がると思います。

     ま、無理せずゆったりまったり進めてくださいませ!

  2. かっちい より:

    SECRET: 1
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     【役不足】とは演じる役柄が合ってないこと、つまり渡哲也に浮浪者の役柄を演じさせるとか吉永小百合に動物を演じさせるとか、持っている実力に見合わない役柄のことを【役不足】というのであって、「実力がない」とか「力不足」という意味ではないのです。

     一応、念のため。
     読者に小学生や中学生がいて、勘違いが起こって受験に影響があってはは大変ですから(笑)。

  3. メンメン より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    これは恥ずかしい間違え(汗)

    訂正しました。ご指摘ありがとうございました。

  4. かっちい より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
     またまた失礼します。伝えたいことをまとめてコメントする方が良いのですが…。

     今回の【吉井香苗編】の最初の方で『ブログを開設していて人気がでている』という設定がありました。これを放置するのはもったいないと思うのですね。香苗さんの心情とリンクさせてうまく文章に盛り込むことができないものかと。

     例えば…
     
     更新の頻度が落ちて内容もイマイチ…。コメントの数が減るばかりか心配や内容への不満が多くなり、香苗さんは落ち込んでしまう。

     とか

     もし祐二さんと別れることになったとしたら、ブログの閉鎖を決意しそのことを読者に報告を終えるとともに夫婦生活の楽しかった頃を思い出して涙する。

     などという使い方をすると、人物設定が活かされるし状況や心情の変化の表現に一役買うと思うのです。今後の作品にも共通していえることなんですが、せっかく人物やとりまく環境の設定するのだから、描く作品の随所にそのことを活かした文章を盛り込んでいけば作品としての深みが増すのではないかと思のですね。そのためにもいちいち読み返すのは面倒なので、メモで設定を残しておくことが必要なんです(過去に設定や展開をメモしておくということに触れていると思います)。

     このことと絡んでいるのですが、もし温泉旅行のところで終了を目論んでいるようでしたら、それは出来るだけ避けていただきたいと思っています。理由は4つほど。

    ①香苗さんと中嶋が交わるまでに40数ページかけていること。
    ②祐二さんと中嶋が顔を合わせたばかりであること。祐二さんを不幸にさせるなら段階を踏んだ方がより感情移入をさせやすい。
    ③結論を導くまでにはその作品に合う過程があり、急激な展開によって終了を迎えることはかえって違和感を覚えることになる。
    ④今のところ解決されていない疑問点(僕が思っていることですが)とか、あえてメンメンさんが触れていない中身があって、それを余すことなく描くためにはこの作品に関していえばある程度の長さが必要であろうと思っている。

     ま、こんなところです。
     ライオンを想像してください。獲物を食べる際にはまずオスライオンが最初、次にメスライオン、子供ライオンと続き、ハイエナ、鳥類、昆虫類へとつながり、やがて骨だけとなります。獲物(香苗さん)が骨(ボロボロ)になるまでには過程があるのですね(何と酷い表現なんだ…)。ホップ(温泉旅行での『遊び』)、ステップ、ジャンプというのが理想といえば理想なんですけど…。

     不幸に陥った女性を関係する男性が救うという展開は【水野果歩編】で使用しているので、香苗さんと祐二さんが別れる展開を想像しています。(展開を予想しているブックメーカーによるとこの予想に対するオッズは1.2倍で、競馬でのディープインパクトに対するオッズと変わらない程の高確率であるらしい(笑))。

     前回の『急激な展開を望まない』という意味は今説明した通りです。あくまでも個人的希望ですので、返信は必要ないですよ。前回にあげた疑問点の解決を含めてメンメンさんの作品に採用されているようでしたら、一人でほくそ笑むことにしてますから(笑)。

     寒い日が続いてますのでお体には気をつけてくださいませ。

  5. かっちい より:

    SECRET: 1
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     今まで幾つものコメントを出しましたが、ここでまとめておきます。しばらくは静観ということで。やかまし過ぎるのも良くないですもんね。これも返事は必要ないですよ。

    ①テーマと設定をしっかりと練り上げること。練り上げた設定は小説の中の所々で活かすように工夫していくこと(個人の趣味とか仕事の進行具合であったりとか)。

    ②官能小説は架空の物語です。しかし、その中の登場人物は小説の中で同じ時間が流れていて、絡みのシーンに登場する人物は同じ時間を共有しているんだということを意識してほしい。感情の動きは絡みのシーンを盛り上げるための『味付け』である。ここに共感を呼ぶポイントがある。

    ③読み終わった時に疑問点が残らないように描ききることが大切である。そのためにも登場人物の関係(過去からの関係とか出会いとか)はキチンと描くこと(軽く触れるかしっかり描くかはメンメンさんのさじ加減ひとつですけど)。

    ④結論を急いで描き出そうとしないこと。感情の動きからその物語にふさわしい展開の仕方が必ずあるはず。

     おおよそこの4店に集約されていると思います。

     あと言ってないことといえば『小説に完全決着をつける必要はない』ということなんですけど…。これは他の官能小説にも見られることですが、凌辱や不倫がまだまだ続くとか、年月が経過して久々に再会し昔の関係に戻ろうと頭の中で計算を始めるのであった、みたいな終わり方をしているものとか…。人によれば『中途半端』という意見があるでしょうけど、官能小説には決まった型はないのでこういった終わり方はありかと思います。

     ま、メンメンさんなら苦しみながらでもクリアーできるでしょう。頑張ってください。

  6. かっちい より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
     『朝まで生テレビ』を見ながら…

     『返コメはいらないですよ。』というのはすごく失礼な態度ではないかと気になりまして、早々にコメント致しました。

     メンメンさんに様々な意見をぶつけておきながら、そのことに対してのコメントを許さないというのは良くなかったです。申し訳ありませんでした。受け入れられないことも多々あるでしょうし、どうかメンメンさんのご意見もお聞かせ下さい。メンメンさんのコメントが無いようでしたら、それはそれで安心なんですけど…(苦笑)

     どうもすいませんでした。

  7. カレン より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ご無沙汰してます。
    いつも見てますよ。
    この先が楽しみです。
    簡単にはバレないで話が進むといいな。

  8. おな より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    メンメンさんの真面目さと優しさを感じて。私は人妻です。高校時代恋人と別れ(その後相手は痛手から四年渡米)社会人になって同じ人と別れ(私が夜逃げ)さらに20年後に、お互いが別れられない事情(彼は政略結婚で社長、私は経済的非自立)の結婚をしながら一年前から遠距離不倫中デス…愛人のような立場ですが、将来お互いの子供達が成人したら海外ベースで仕事をして連れて行くと言っています。離婚は出来ないそうですが
    セックスの方でも離せないらしいです。離婚させたいので、もっと彼を虜にするべく努力中で、チャットでするセックス描写の勉強の為に読み始めました。長くてすみませんwwでも、話がマンネリですよね?
    特に人物像と性描写は同じパターン。現実の私のほうがもっと刺激のある生活です。(SMはまだですが)たまには悪女もどうですか?

  9. まさる より:

    SECRET: 0
    PASS: c00cba5aca8c3c4dd8827524232dcabf
    メンメンさんはけっこういろんな人のコメントに返信したりして、大変な思いをなされて辛くなったのでしょうか。メンメンさんにはメンメンさんの良さがあるのですから、あまりいろいろな意見に振り回されずに、マイペースでブログを更新していかれたらどうかと思います。
    ブログを読んでコメントを書くのは簡単なことだけど、いろいろな人のことを考えてブログを更新することは本当に大変なことだと思います。
    ご自愛ください。

  10. 鎌田 敦 より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    管理人様

    お忙しい所、失礼いたします。

    私、無料モバイルサイト「Movie Dash」
    h ttp://av-dash.com/?ad=test (※PC非表示)
    広告担当 鎌田 敦と申します。

    この度、管理人様のサイトを観覧させて頂き
    是非とも広告の掲載をして頂きたいと思い
    連絡をさせて頂きました。

    現在、広告の募集はされてますでしょうか?
    当サイトが、掲載可能で御座いましたら、
    掲載料金等、掲載についての詳細をお聞かせ願います。

  11. ぱな より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    いつも楽しんで読んでます。
    結構女性から厳しいコメントありますが、私からしたら失神するほど凄まじいHを知らないか、たまたま伴侶が素晴らしいテクニシャンだった幸せ者なだけと思いますよ。
    香苗が夫を愛しているのも本当。
    気を失うほどの快感を求めるのも本能だと思います。
    女性は一か0かで分けたがりますがただの綺麗事ですよ。
    私からすれば、女になりきれてないのかなって。
    私は香苗や果歩の気持ちがよくわかります。
    身体に刻まれた凄まじい快楽は脳に強烈にインプットされますもん。
    夢にまでみますよ。

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