人妻 吉井香苗(74)

翌日の温泉旅行は、近場の温泉街を選んだ。

まぁ近場と言っても県外なのだが、車で3時間程の所にある温泉街。

この距離なら出張の疲れが多少残っている裕二でも、途中サービスエリアで休憩しながら行けば、問題なかった。

そして前日に急に決まった旅行だが、運良くそれなりの宿も取れた。

料金は少し高いが、1つ1つの部屋が離れになっていて、温泉もそれぞれの部屋に独立して付いている。

ここなら充分にリラックスできるし、疲れもとれるだろう。

裕二 
「どう?気に入った?この宿。」

香苗 
「うん、でもちょっと高級な感じだね、ここ。」

裕二 
「たまには良いだろ?料理も美味しいし。」

香苗 
「うん本当に、美味しいね。」

部屋で仲居が持ってきた料理の数々は、どれも細かい仕事がなされていて、絶品だった。

料理が美味しいので、お酒も進む。

特に、久しぶりの休日と夫婦2人きりの旅行が嬉しかったのか、裕二はよく飲んでいた。

だからいつもは香苗の方がおしゃべりなのに、今日は裕二がよくしゃべる。

裕二 
「それでさ、その上司がさ、可笑しいんだよ。」

香苗 
「え~そうなんだ。」

酒を飲み始めてからある程度時間が経ち、裕二は酔っ払い始めていた。

楽しい昔話から最近の仕事で辛かった事まで、次から次へと裕二の口から出てくる。

普段は香苗の前で愚痴なんて一切言わない裕二が、この日は心に溜まっていたものを酒の力を借りて吐き出していく。

でも、それは夫婦の間では必要な事なのだ。

男は誰しも変なプライドを持っているものだが、時にはそのプライドのせいで溜め込んだ物を、心を許した人だけに見てもらいたいと思うもの。

裕二のような男でも、弱いところはある。

それを分かっているから、香苗も今日は聞き手になっている。

それが家庭のためにいつも頑張ってくれている裕二への、ささやかな恩返し。

裕二 
「そいつがホント腹立つんだよなぁ。まぁ俺も悪いんだけどさ。」

香苗 
「……。」

しかし今日は、聞き手の香苗の表情もどこか冴えなかった。裕二の話はいつも笑顔で聞いていられるのに、それができないでいた。

他人には決して見せない弱い部分を、夫が自分だけに曝け出してくれる事は妻としては嬉しい事でもあるのだが、今日は違っていたのだ。

目の前で愚痴を零す裕二の姿が、何だか凄く情けなく思えてしまう。

裕二が出張で居ない間に香苗が中嶋とした事を考えれば、そんな風に思う権利は、今の香苗には無いはずなのに。

自分が中嶋とあんな事をしてしまったのは100%自分が悪くて、裕二には全く非はない。

裕二はいつだって優しくしてくれるし、仕事も頑張ってくれている。そんな夫に、不満なんてあるはずないのだ。

なのに何だろう、この気持ちは。

裕二の事が、なぜか少しだけ嫌になっている自分がいる。

今まで感じた事のなかった裕二に対する不全感が、香苗の心の中で膨れ上がっていた。

そしてその不全感はこの後、さらに確かなものへとなっていく。

温泉にも入り、食事も終わり、あとは寝るだけ。

その夜、裕二は久しぶりに香苗の身体を求めてきた。

香苗 
「ん……大丈夫?あんなにお酒飲んだのに。」

布団に倒れ込むようにしてキスをしてきた裕二に、香苗がそう聞いた。

裕二 
「ハァ……大丈夫だよ……ハァ香苗……」

酒の影響なのかペニスの勃起率は低い。だが性欲だけは溢れているようだ。

裕二は出張の間1人で処理する事もなく、ずっと射精をしてなかった。

つまり溜まっているのだ。

顔を赤くして酔っ払っている裕二に裸にされた香苗。

身体へのキスや愛撫も無いまま、いきなり香苗の性器を刺激し始める裕二。

言ってみれば、裕二の前戯は雑だった。

裕二 
「ハァ……香苗ぇ……愛してるよ……」

香苗 
「ン……裕二……いっ……」

乾いたクリトリスを触れても、感じるのは痛みだけ。

そして充分には濡れていないヴァギナに、半勃起の柔らかいペニスを挿入。

しかしそれから裕二とのSEXはすぐに終ってしまった。

裕二は驚く程早く果ててしまったのだ。

早々に腰の動きを止めて、気持ち良さそうな表情をしていた裕二を見て、香苗は思わず
「えっ?」

と声を出してしまった。

……うそ……もう終わっちゃったの?……

思い返せば、今までだって裕二とのSEXはそんなに長いものではなかった。

しかし、中嶋との濃厚なSEXを体験してしまった今の香苗にとっては、それはあまりにも短く感じられる。

その後、裕二は2回戦目も欲してきたが、結果は同じだった。

香苗は裕二との2回のセックスで一度も喘ぐ事はなかった。

声を出したとしても、息を荒くして一生懸命腰を振ってる裕二に、何となく申し訳ないと思って出す、雰囲気に合わせた控えめな喘ぎ声だけ。

こんなのSEXじゃない。

酒が回っていたせいもあるのか、射精を終えると裕二はすぐに寝てしまった。

香苗は裕二とのセックスで微塵も満足感を得る事はできなかった。それどころか、セックス後に香苗の心に残ったのは不満だけ。

それも、とてもショックな程大きな不全感だった。

思わず〝どうしてなの!?〟と文句を言いたくなってしまう。

そしてこの裕二の雑で中途半端過ぎるセックスは、香苗の身体に別の欲求生まれさせる。

……あの人なら絶対にこんな事はないのに……

グッスリと眠る夫の横で、香苗の頭の中は〝あの人〟で埋まっていく。

香苗はこの夜、確信してしまったのだ。

この不全感は、夫である裕二では決して満たす事ができないのだという事実を。

コメント

  1. 愛音 より:

    SECRET: 0
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    お久しぶりです。
    体調は大丈夫でしょうか?

    んーと感想ですが、魅力的な女性がどんどんダメ女になっていくのは、やはりおもしろくないです。性に目覚めるということはそういうことではないと思うんですよね、私は。
    なんていうか、夫に満足できない人妻の話なら、なぜ「心から夫を愛している」という無理のある設定にするのか、いちいち純粋ぶる必要はあるのか、と思います。
    それだったら最初から欲求不満で不倫相手を探している話の方が納得できるし、純粋にエロの部分を楽しめるのでは?

    裏切ってる時点で裕二に対して愛情がないのは明白。それでも愛してるというならば自分をきれいに見せるための嘘にすぎない。
    それに加えて今回表れてきた香苗の心情。「愛してる」なんてどの口が言うのか、と思うくらいです。しかも香苗は自分が気持ちよくなることしか考えてませんしね。ほんと最低な女になっちゃったなぁと思います…。

    きっとメンメンさんはそういう「純粋な人が堕ちていく」ところが好きなんでしょうけど、やはりそこには無理があることが多いと思います。
    なぜならば「堕ちていく女」って最初からダメ女だからです。

  2. ゆり より:

    SECRET: 0
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    メンメンさん、しばらくおやすみされていたので心配していました(*^_^*)

    今回のストーリー、どうなるのかまだ見えないけれど…
    展開の途中で読者のみなさんの様々なご意見が書かれても、それはそれとして今回は思いっきりご自分の書きたいようにされてみてはいかがでしょう?
    やっぱり、色んなご意見を読むと心が揺れたり軸がぶれると思うし、そうなるとメンメンさんの個性も消えてしまうと思うんです。

    もちろん、みなさんのご意見や感想は大事だしありがたいので、それは次回作に活かすというスタイルでもいいんじゃないかな?と感じます。

    みなさんのご意見や感想に振り回されずにメンメンさんらしく作品を作り上げることも忘れないでくださいね(*^_^*)

    まだまだ寒いのでお身体ご自愛くださいね。

  3. 京香 より:

    SECRET: 0
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    お久しぶりです。

    スワップものか、今流行りの寝取られ?って思ってたんですが修正されたみたいですね。

    まー、こういう夫婦実際に多いんだろうなぁと冷静に読んじゃいましたw
    読む人が人妻や人妻萌えな人は好きなんじゃないでしょうか。

    賛否あると思いますが、メンメンさんが書きたいように書いてください。(女性向けの方でフォローできるわけだし)

    インフルエンザ流行ってますので体調に気をつけて頑張ってくださいね。

  4. サトシ より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    初めまして♪
    官能小説というものに何気に興味を持ち、本日初めて読ませてもらいました┏〇)) ペコ
    なるほど、かなり興奮しますね。
    だし実際ありがちで、でも非日常的でかなり興味深いものでした♪
    世間一般でゎ最低男ですが、中嶋の女性に対する征服感とか他人に対する優越感とか共感できます…
    ただ共感できるだけですけどね♪

    今後の展開が楽しみです。

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