午後、香苗は落ち着かない様子で、部屋と玄関の間の廊下を行ったり来たりしていた。
もう時計は4時を回っている。
中嶋は時間を指定してきた訳ではない。だが先週はいつももっと早い時間に来ていただけに、どうして今日に限って遅いの?と思ってしまう。
時計が一回りする度に、もうすぐ来るかもしれないと、身体を熱くしていた香苗。
しかしなかなか中嶋は訪れず、それが悉く(ことごとく)不発に終わっていく。
なんだか直接には何もされていないというのに、焦らされているような気分だった。
そして下腹部を中心に溜まっていく、あのムラムラ感。
……中嶋さん、まさかこのまま来ないつもりなのかしら……
そんな風に考えると、絶望にも近いような気分になってしまう。
携帯電話を取り出し、何度中嶋に電話しようとした事か。
しかし香苗にはそれはできなかった。
自分から『早くきて私を抱いてください』だなんて、絶対に言えない。
昨日中嶋から届いたメールの文章を再度眺めながら、下唇を噛む香苗。
……来るって言ったのに……今日来るって書いてあるのに……
切羽詰った表情。苛立ち(いらだち)にも似た感情さえ沸きあがってくる。
しかし無情にも中嶋が訪れないまま時間は刻々と過ぎていった。
そして陽は紅く染まりながら沈み、とうとう外は暗くなってしまった。
6時……7時……もうすぐ8時になってしまう。
もう祐二がいつ帰ってきてもおかしくない時間帯。
香苗は寝室のベッドに腰を下ろして、時計を見ながらため息を何度もついていた。
……もうダメ……こんな時間になっちゃったら……ハァ……
昼からの時間で香苗が得たものは、この身体の中に積もり溜まっていったものだけだった。
香苗は知っている。それが溜まれば溜まるほど、解放される時の快感は大きくなる事を。
だからずっと中嶋に抱かれる事だけを考えて待っていたのに。
……もうダメ……私……我慢できない……
祐二の帰宅は10分後か、1時間後か、2時間後なのかは分からない。
しかしこの身体の中に溜まったものを、祐二が帰ってくる前に少しでも自分で解消しておかないと、香苗は祐二の前で普通ではいられないと思った。
ベッドから立ち上がり、下着が入っている引き出しの奥から、以前買った大人のオモチャを取り出す香苗。
そして再びベッドに戻ってくると、すぐさま香苗はスカートを脱ぎ、さらにTバックの下着も下ろして脚から抜いた。
下半身だけ裸になり、ベッドの上でM字開脚をするようにして股を開く。
香苗
「ハァァ……ン……」
手を陰部に持っていくと、すでにそこは愛液が外に溢れるほどに濡れていた。
ずっと我慢していたから敏感になっているのか、少し触っただけで身体に小さな快感が電流のように流れる。
……これ……使ったら気持ち良さそう……
そう思い、さっそくピンクローターのスイッチを入れる香苗。
ヴィ……ヴィ…ヴィーーヴィーーー……
しかしここで香苗にさらに不幸が舞い降りる。
そのオモチャの震動は以前よりもかなり弱々しいものになっていたのだ。スイッチをMAXにしても、震動がかなり少ない。
香苗
「うそ……もしかして電池切れ……?」
このピンクローターは単四電池で動く。確か単三の電池なら部屋にあったかもしれないが、単四は買った覚えがない。
しかし今更買いに行く訳にもいかないので、仕方なく香苗はその弱々しいローターでオナニーを始めた。
香苗
「ん……ァ……ン……ン……」
ローターの先端を、すでに勃起しているクリトリスに当てる。
弱々しい震動だが、それでも最初は気持ちよかった。
しかし数分もするとすぐに物足りなくなってくる。
こんな刺激ではいつまで経っても絶頂に達する事はできない。
もっと強い刺激を求めて、香苗は震動するローターをクリトリスに強く押し付けるようにしながら、自分の手を左右に動かして擦り始めた。
そしてさらにもう一方の手を陰部に伸ばし、膣内に指を挿入する。
香苗
「ハァァ……」
ネットリと温かい自分の体内。
ずっと挿入を待ち望んでいたヴァギナ。
しかし、指1本を根元まで挿入してみても全く足りない。
……中嶋さんの指やアソコと比べたら……
クチュクチュと音を立てながら指の抜き差しをする香苗は、理想の快楽に少しでも近づこうと指の本数を増やしていく。
2本、そして3本と。
……もっと……奥まで……もっと……太いの……
両手を忙しく動かしながら、香苗のオナニーは30分以上続いていた。
ベッドのシーツに溢れた愛液が染みを作っていくのも気にする事もなく、夢中になって。
そして、香苗の身体の中心があの予感を感じ始める。
香苗
「ハァハァ……ン……ああ……イキそう……ン……」
中嶋とのSEXで感じる、あんな大きな波ではない。
しかし少しでもこの身体に溜まったものが解放されるなら、小さな波にでも呑み込まれたかった。
クチュクチュクチュクチュッ……!!
自ら迎える絶頂に向けて、手の動きをさらに激しくしていく香苗。
香苗
「ハァハァ……キモチイイ……ああ……」
ベッドの上で大股を開き、火照った顔で口を半開きにして、自分で陰部に手を突っ込み動かす人妻の姿は、実に下品で淫らであった。
香苗
「ハァハァ!中嶋さん……イクッ……イキそう……ハァアアッ!」
もうあと5秒、いや、あと3秒あったら香苗は絶頂するというところ。
しかしその寸前で幸か不幸か、今日一日中香苗が待ち望んでいた音が部屋に鳴り響いた。
♪~~!♪~~!
香苗
「ハァ……ハァ……えっ!?」
思わず手の動きを止める香苗。
玄関からの呼び出し音が鳴ったのだ。
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