その日の夜、祐二はベッドの中で香苗を待っていた。
香苗は今、風呂に入っている。
いつもなら仕事の疲れで先に寝てしまう祐二だが、今日は違う。
妙に目が冴えている。
それはきっと、先日夫婦で行った旅行先での記憶がまだ鮮明に残っているからだろう。
あの夜、旅先の旅館で祐二は久しぶりに香苗と身体を重ねた。
その時、祐二は妻である香苗の魅力に、新鮮な興奮を覚えたのだ。いや、衝撃と言ってもいいかもしれない。
浴衣を脱がせ、香苗の裸を見た瞬間、脳みそがグラグラと揺れる程の興奮が、祐二の全身を貫いた。
自分が結婚した、自分と一生を共にすると誓ってくれた妻は、こんなにも美しかったのかと。
妻の裸から放たれる女の魅力、女のオーラ。
それに反応して血液が下半身に集まっていき、息は荒くなっていく。
久しぶりに発情してオスになってしまった。
そこからはもう、無我夢中で香苗の身体を貪った。
そして異常な興奮であっという間に射精を我慢できなくなってしまった祐二。
しかしそれでも勃起は治まらず、2回目に突入した。
一晩で2回も射精してしまうなんて、何年ぶりだろうか。
まだ女の身体を知らなかった高校時代の、女に対するあのドロドロとした性欲が蘇ってくるようだった。
結婚して数年、初々しさというものが段々と夫婦から無くなってきて、正直セックスに関してもマンネリ化している感じもあった。
しかしそれは仕方のない事だと祐二は思っていたし、元々2人はセックスにそれ程執着するタイプではなかったから、特に問題はないと考えていた。
セックスの回数が減ったからと言って、香苗への愛情が減った訳ではない。
俺達夫婦は、言わばそういう領域に達したのだ。
つまり、お互いを想う愛情はあって当たり前。今更それを確認する作業は、あまり必要が無いのだと。
しかしどうだろう、旅先で久しぶりに感じたあの興奮。
改めて見た妻の身体は、明らかに結婚当初とは違っていた。
なんというか、成熟した女性の身体、そんな印象だった。
思えばセックスと言ってもいつも暗くした寝室でベッドの中でしていたから、じっくりと香苗の身体を観賞する事なんて殆どなかったのだが、それにしてもいつの間にこんなに色っぽくなったのだろう。
男心をガッツリ掴まれた。惚れ直したと言うべきだろうか。
夢中になっていたのはあの晩だけではない。今日も仕事中は、家に帰って香苗とする事ばかりを考えてしまっていた。
香苗は元々美人だ。友人や同僚にもいつも羨ましがられる。
そして今は少し歳を重ねた事によってさらにその美しさに磨きが掛かっている。
祐二は妻が香苗であるという優越感を、改めて感じざるを得なかった。
こんなにも俺に一途に尽くしてくれて、こんなにも美しい女性が妻なのだから。
最高だ。
今日は一日中機嫌が良かった祐二。
同僚にも
「何か良い事でもあったんですか?」
と聞かれてしまった。
今日は帰ったら香苗を沢山抱こう。
香苗は俺を愛してくれている。香苗は俺の妻だ。
香苗の、あの綺麗で魅力的な裸を見れるのは世界で俺だけだ。
香苗は俺の全てを受け止めてくれるだろう。
いや、きっと喜んでくれる。
綺麗になったねと言ってあげよう。
恥ずかしがりながらも嬉しそうにする香苗の顔が思い浮かぶ。
男としてなんて幸せなんだ俺は。
ベッドの中で思わずニヤニヤと笑ってしまう祐二。
祐二
「ダメだ、これじゃただのエロいオッサンじゃないか。」
でも抑えきれない。香苗への愛情と、欲情した気持ちを。
そして、香苗の夫である祐二はそれを我慢する必要はないのだ。
祐二にはその権利がある。
それが嬉しくてたまらない。
そして祐二がそんな浮かれ気分に浸っていると、寝室のドアがゆっくりと開いた。
風呂から上がって髪を乾かし終えた香苗が、心地良いシャンプーの香りを漂わせながら、寝衣姿で入ってきたのだ。
コメント