なぜか祐二は香苗が寝室に入ってきた瞬間から目を閉じて、寝たふりをしていた。
だから香苗は祐二がすでに眠りに入っていると思ったのだろう。起こさないようにとゆっくりと布団を捲り、入ってくる。
すると布団の中にフワッと香苗の甘い匂いが舞い込んできた。
もうその匂いだけで今の祐二を男からオスに変貌させるには充分だった。
祐二が閉じていた目を開き、顔を香苗の方に向ける。
香苗は祐二に背中を向ける格好で横になっていた。
枕に流れる艶々とした黒髪。髪が綺麗なところも香苗の魅力の1つだ。
後ろからギュッと抱き締めたい衝動に駆られる祐二。
すでにこの時点で祐二は興奮状態であり、アソコは硬く勃起していた。
もう我慢できない。
そしてそっと香苗の肩に手を伸ばす。
祐二
「なぁ、香苗。」
祐二がそう声を掛けて肩に触れた瞬間、香苗は少し驚いてしまったのか身体をビクンと震わせた。
香苗
「えっ?……はぁ、ビックリした、祐二まだ起きてたの?」
祐二
「うん、なんか眠れなくてね。」
香苗
「早く寝ないと明日朝辛いよ。」
祐二
「寝坊しなければ大丈夫だよ。いつものように香苗が起こしてくれるんだろ?」
香苗
「そうだけど。」
祐二
「なぁ、香苗ってさぁ、なんでこんなに良い匂いがするんだ?香水付けてないんだろ?」
そう言って祐二が香苗の髪を手で撫でながら鼻を近づける。
香苗
「香水なんて嫌いだから殆ど付けないわよ、シャンプーの匂いじゃないかな。」
祐二
「髪だけじゃないよ、身体からも良い匂いするし。」
鼻から大きく息を吸いながら、祐二はその香りと共に香苗の身体を両腕で抱き締めた。
香苗
「ぇ……ん、どうしたの?急に。」
急に抱きついてきた祐二に、少し動揺した様子で祐二の顔を見つめる香苗。
祐二
「ハァ……香苗……好きだよ……」
香苗
「祐二……ン……」
祐二はさっそく香苗の胸を触り、揉み始める。
寝衣の上からでも分かる香苗の乳房の柔らかさ。
これで香苗も、祐二がどうしてこの時間まで起きていたのかを理解しただろう。
その流れのまま、祐二は香苗にキスを迫ろうとする。
しかしそこで香苗はとっさに祐二の動きを止めようとした。
香苗
「ちょ……ちょっと待って祐二……」
祐二
「ハァ……いいだろう?香苗……」
祐二はそう言って自分の股間を香苗の太腿に押し付けるようにして自分の興奮を伝える。
香苗も硬くなった祐二のペニスには気付いているようだった。
香苗
「この前したばっかりじゃない……」
祐二
「あぁ、あの夜の香苗は凄く綺麗だったよ。気持ちよかった。だから今日もしたいんだよ。」
香苗
「祐二……」
祐二
「香苗さ、最近また綺麗になったよな。俺、惚れ直しちゃったよ。」
そんな普段では絶対に言わないような甘い言葉を口走って、祐二は再び香苗にキスを迫る。
香苗
「ン……ン……」
唇が触れるだけのキスから、徐々にディープなキスへと変えていこうとする祐二。
少しだけ開いた香苗の口内に舌を侵入させると、香苗の舌も小さく反応をみせる。
こういう香苗の控えめなところも祐二は好きだった。
香苗は口の中まで甘い味をしている。
キスをしているだけでも〝ああ、俺は香苗の全てが好きなんだな〟と、心の底から思えた。
祐二
「チュパ……ハァ……香苗、もう我慢できないよ……ハァ……」
今日は愛撫にもじっくり時間を掛けようと考えていた祐二だったが、異常な程に膨れ上がった興奮がその冷静さを失わせていた。
息を荒くしながら胸を触っていた祐二の手が、香苗の下半身へと移動する。
しかし次の瞬間、その手の動きを察した香苗の目がパッと見開く。
香苗
「い、嫌っ!!だめっ!!」
そして下半身を触ろうとしていた祐二の腕を、香苗の手が寸前の所でガッシリと掴んでそれを阻止した。
突然の香苗の拒否反応に、祐二は困惑の表情を見せる。
しかもその香苗の様子というのは、何か普通ではなかった。
祐二
「ど、どうしたんだ?香苗……」
香苗
「ダメッ……ダメなの……」
祐二の顔から視線を外し、そう弱々しく呟いた香苗は、祐二の腕を力強く掴んだまま放そうとしない。
なんとしても触られたくない!といった感じだ。
祐二
「何がダメなんだ?この前旅行でしたばかりだからか?」
確かにこんなに短い間隔でセックスをするのは、今までの祐二と香苗のペースではない。
だが、普通の夫婦なら1日空けてするくらいは普通だ。寧ろ中には毎日のようにしている夫婦だって多くいる。
やっぱり香苗はこういう事に関して淡白なのだろうかと、祐二は思ってしまう。
だがそれを今更言うわけにはいかない。
今までは祐二だってそれ程積極的ではなかったのだから。
香苗
「違うの……今日は、ダメなの……」
今日はダメ。その言葉で祐二は香苗が何が言いたいのか勝手に理解した。
……そうか、香苗は今日はできない日なのか……
そう、女性であったら必ず来る〝あの日〟だ。
それなら、男は諦める他ない。
祐二
「そうだったのか……ごめん。」
香苗
「ううん……ごめんね、なんか。」
お互いに謝った所で、香苗はやっと祐二の腕を放した。
しかし太腿に当たっている祐二のペニスは硬いままだ。
香苗はそれを理解しているからなのか、申し訳なさそうな顔をしている。
祐二自身も、中途半端な所で行為が止まってしまい、正直ガッカリしていた。
この興奮は自然にはなかなか醒めてくれそうにない。
溜まったものを吐き出さないと、きっと寝ることすら困難だろう。
少し気まずくなったのか、少しの間沈黙するふたり。
祐二
「……。」
香苗
「……。」
すると、香苗がじっと祐二を見つめてきた。
それは香苗からのサインだった。
何をしてほしいのか、香苗は目を見ただけですぐに察してくれた。そう感じて祐二は嬉しい気持ちになった。
祐二
「香苗……」
そして香苗は何も言わずに、布団の中に潜り込み、ゆっくりと祐二の寝間着とパンツを降ろし始めた。
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