祐二
「じゃあ行ってくるよ。」
香苗
「うん、いってらっしゃい。」
仕事に向かう夫を玄関で見送る香苗。
しかし玄関のドアが閉まり、祐二の姿が見えなくなると香苗はその場で
「はぁ……」
とため息をついた。
祐二は今朝も機嫌が良かった。旅行に行ってからずっとそうだ。
夫が幸せそうにしているのを見るのは、妻である香苗にとっても喜びである……はず。
だけど今はとてもそんな気分にはなれない。
香苗の頭の中は、その殆どが別の事で埋まっていたのだから。
祐二が仕事に出たら、しようと思っていた事がある。
香苗はその為に祐二を見送った後、すぐにエプロンを外して寝室に入った。
そして少し慌てるようにしてスカートに手を掛けて脱ぎ始めた。
一秒でも早く脱ぎたい、そんな様子だ。
スルスルとその薄い布を外すと、決して夫には見せられない自分の下半身が露わになる。
貞操帯を取り付けられた自分の姿を鏡で確認する香苗。
香苗
「……」
改めて見ても、やっぱり目を疑ってしまう。
自分がこんな卑猥な物を穿いているなんて。
中嶋と出会う前の自分が見たら、きっと幻滅するに違いない。最低だと。
でも今は違う。
夫以外の男に貞操帯を取り付けられた下半身は、情けなく悲しいものでありながら、それ以上にイヤらしい。
鏡の中の自分がこっちに向かって言っている。
あなたは変態なのよ……と。
香苗
「ハァ……」
熱の篭った吐息を出しながら、香苗は手を自分の陰部へ持っていく。
しかし、やはり敏感な部分はしっかりとガードされてしまっていて全く触ることはできない。
〝ダメですよ、ちゃんと我慢しないと〟と、頭の中にいる中嶋が言ってくる。
……アア……そんな……無理です……
祐二といる間はなんとか抑える事ができていた欲求が、1人になって中嶋の事を考え始めた瞬間に、止め処なく溢れてくる。
祐二といる間は、中嶋の事を考えるのさえ我慢していたのだから。
祐二が仕事に出て行くのをずっと心待ちにしていた。
早く中嶋さんの事を考えたい。
早く中嶋さんに抱かれる妄想で頭を一杯にしたい。
香苗
「ハァ……中嶋さん……」
こうやって〝中嶋〟という名前を声に出してみたかった。
中嶋という単語だけで感じてしまう。中嶋という音が喉から出るだけで、喉が感じてしまう。
香苗
「中嶋さん……ァァ……中嶋さん……」
そう呟きながら、香苗は上に着ていた服や下着も脱いでいく。
裸に貞操帯だけを身に付けた姿になった香苗は、ベッドの上に腰を下ろす。
そして両手で自分の乳房を激しく揉み始めた。
もう快感を感じれるのはここしかないと、本能的に思ったのだろう。
頭で考えなくとも身体が勝手にそうしていた。
本能で行動しているからこそ、この誰もいない寝室ではどんな変態行為もできる。
香苗
「ハァ……ン……ハァ…ァ……ン……」
香苗は自分の股に枕を挟み込むようにして座って、その上で背筋を伸ばし、腰を前後にクネクネと動かし始めた。
そう、香苗は今、中嶋の上に跨って騎乗位で繋がっているところを想像しているのだ。
枕に陰部を擦り付けても、貞操帯のせいで何も感じない。
だが、想像する事はできる。
中嶋の太く逞しいあのペニスが、自分の膣内をグチュグチュと掻き回してくる感覚を。
裂けそうなくらい目一杯に拡げられた割れ目、そしてそれによって皮が捲れ、完全に敏感な部分を露出した状態になったクリトリス。
そのクリトリスに、中嶋の陰毛がジョリジョリと腰を振るたびに刺激を与えてくるのだ。
……ああ……たまらない……
貞操帯の隙間から垂れるネバネバとした愛液が枕を濡らしていく。
脳みその中で絶頂をイメージする。
しかしそれが身体の方に伝わっていかなくて、もどかしい。
香苗は自分の乳首を痛いくらい強く抓った。
少しでも快感を感じたい。だから香苗の乳房への刺激は段々と強いものになっていく。
痛さの向こうに気持ち良さがあるような気がして、痛くても止められない。
しかし性感帯とは言っても、そこは陰部を刺激するのとは比べ物にならない程弱い快感しか得られなかった。
それどころか、発散する快感の量に対して溜まっていくムラムラ感の方が数倍多い。
こうして香苗は胸を揉むだけのオナニーで、ある種のスパイラルに嵌っていく。
我慢できずに溜まったものを発散しようとしても、逆に溜まっていくだけなのである。これがこの貞操帯の効果。
香苗
「ハァァ……ハァァ……中嶋さん……もうダメ……我慢できない……」
溜まったものが発散されずに、ずっと香苗の中に蓄積されていくとどうなるのか。
ピンク色の性的欲望。それはやがて体内でどす黒く変色し、香苗の心を蝕んでいくのだ。
コメント
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久しぶりに見させていただきました!
相変わらず上手いですねぇ。
本屋とかに置いてありそうなぐらい上手いですね[e:734](笑)
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コメントありがとうございます。
いやぁ自分ではまだまだ文章下手だと思っているのですが、そう言ってもらえると素直に嬉しいです。
これからもっと良い物を書けるように精進いたします。