祐二
「おい香苗、もう朝だぞ、どうしてこんな所で寝てるんだよ。」
聞きなれた声が耳に届き、ゆっくりと目を覚ます香苗。
香苗
「……祐二……?」
祐二
「ソファで寝るなんて、また風邪引くぞ。」
……ソファで……?私どうして……あっ!……
香苗は数時間前まで自分が何をしていたのかを思い出しハッとして起き上がる。
香苗
「私……」
自分の身体を確認すると、幸いにも服は着ていた。
だからなのか、起こしてきた祐二も何かを疑っているような顔はしていないかった。
祐二
「夜更かしでもしてたのか?寝間着にも着替えてないじゃないか。」
香苗
「え?……う、うん……ごめん……」
目覚めから意識がハッキリしてくると、段々と数時間前の記憶が鮮明に蘇ってくる。
中嶋が最後に香苗に掛けた言葉。
中嶋
「続きは明日しましょうね。」
顔に付着した精液をティッシュで拭き取りながらそう言ってきた中嶋。
香苗はそれに小さく頷いた事を覚えている。
続き……そう、本当はもっと抱いてほしかった。
意識が遠のくほど感じたSEXの後でも、もっと欲しいと思った。
できればずっと、時間がある限り中嶋に抱かれていたかった。
中嶋
「じゃあ俺は帰りますね。裸のまま寝てはいけませんよ、朝旦那さんに裸姿で寝ているところを見られたら説明が難しいと思いますし。」
そう言ってきた中嶋を、香苗は寂しそうな目で見つめる。
行かないで。
そう訴える目だ。
中嶋
「明日の昼過ぎには来ますから。このまま続けたらさすがにバレてしまうでしょ?」
中嶋は笑い顔でそう言ってから、部屋を出ていった。
香苗は快感の余韻でその後30分程はテーブルの上から動けなかったが、中嶋の言葉を思い出し起き上がると、服を着てソファに横になった。
そしてそのまま眠りに入ってしまったという訳だ。
香苗
「ごめん……朝ご飯用意できなくて……」
玄関で、香苗は申し訳無さそうな顔で祐二に謝った。
祐二
「ハハッ、気にしなくていいって、コンビニで適当買って食べるからさ。」
いつもは香苗が先に起きて朝食や祐二が着るスーツなどを用意してから祐二を起こしていたのだが、今日は祐二が香苗を起こした。
つまり完全に寝坊だ。
香苗が起きた頃には、すでに祐二が出勤しないといけない時間だった。
慌ててスーツだけ用意して出勤してもらう。
祐二
「じゃあ行ってくるよ!」
香苗
「……い、いってらっしゃい。」
ぐっすり眠ってアルコールが抜けたのか、祐二は昨日の酔い潰れた顔ではなく、いつも通りの元気な祐二に戻っていた。
祐二は笑顔で香苗に声を掛けると、電車の時間がギリギリだった事もあって、慌しくドアを閉めて出て行った。
香苗
「……。」
そしてその後、静まり返った玄関に香苗は暫く立ちつくしていた。
閉まった玄関のドアをボーっと見つめたまま。
何を考える訳でもない。
それからどれくらい時間が経った頃だろう、香苗はその場で急に泣き崩れてしまった。
自分がどうして泣いているのかは分からない。
でも、ポロポロと溢れる涙が止まらない。
昨日もあれだけ泣いて、泣き癖のようなものがついてしまったのか。
いや違う。
この涙は、昨日の涙とは違う。
それはきっと、祐二の笑顔を見たからだ。
だがそこでいくら涙を流そうと、もう遅い。
今日、また中嶋が来れば香苗は必ず受け入れてしまうだろう。
そしてまた祐二が帰って来れば、香苗は〝祐二の妻〟を取り繕いながら、見えないところで涙するだろう。
これはあの快楽の世界に堕ちた事の、副作用だ。
香苗はこれから、ずっとこの副作用に苦しんでいく。
そしてその副作用を抑える唯一の方法が中嶋とのSEXだ。
中嶋とのSEXは全てを打ち消してくれる程の快感を得る事ができる。
そしてそれに嵌れば嵌る程、さらに香苗の精神は傷つき、さらにSEXに依存していくのだ。
依存すればする程、傷つけば傷つく程、SEXは気持ちよくなっていく。
そう、まるで麻薬中毒のように。
ついに香苗は、その領域に達してしまったのだ。
コメント
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連休中に更新ありがとうございます
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はじめてコメントします。
メンメンさんの小説は1ヵ月 ほど前に出逢い、過去作品もすべて読ませていただきました。
今まで読んだどの官能小説よりも胸がドキドキし、すごくエッチな妄想に浸れます。
夜ベッドに入ってから眠るまでのひととき、日常を忘れさせてくれるメンメンさんの小説が大好きです。
本当に癒しです。いつもありがとうございます(*^^*)
お話の続きはいつも楽しみにしていますが、ご無理をなさらずに…応援しています!
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いえ……あのすみません、スローペースで……
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返事遅くなってすみません。コメントありがとうございます。
そう言ってもらえると嬉しいです。ありがとうございます。
官能小説はやっぱり夜ベッドの中でこっそりドキドキ読むのが良いですよねぇ。
自分が書いた物でドキドキしてもらっていると思うと、こっちもドキドキしてきます。
これからも、満足してもらえるような作品が書けるように頑張ります☆