翌朝、眠りから覚めた響子と長岡は、朝食を食べに行くために身支度をしていた。
ふァ……と、長岡があくびをする。響子もまだ少し眠そうで、2人共明らかに寝不足だ。
「おはよ~!」
元気な声を上げて、隣の部屋から沙弥と堂島がやってきた。
「あ、もう起きてたのね。2人共、昨日はよく眠れた?」
「……。」
意味深に笑みを浮かべながら昨夜の事を聞いてきた沙弥に対し、響子は気まずそうに黙り込んでいた。
すると沙弥は響子に近づいて耳元で
「どうだったの?長岡君と。」
と、再度聞いてきた。
「どうって言われても……」
響子が答えあぐねていると、沙弥は辺りを見渡して、テーブルの上にあったある物を見つけて嬉しそうに声を上げた。
「あー!なーんだ、しっかり楽しんだみたいね。しかも随分と盛り上がったのねぇ、3回もなんて……ウフフ。」
沙弥が見つけたのはテーブルの上に置いてあった封を切られて空になった3つのコンドームの袋。
そう、響子と長岡は結局昨晩は夜中の3時過ぎまでずっとセックスをしていた。しかも殆ど休憩なしで3回戦まで。
2回目のセックスからは言葉は少なく、ただただ夢中になって快楽だけを求めて互いに腰を振り合った。
性器と性器で深く繋がり合って、相手の熱い体温を感じながら、何度も何度もキスをして、何度も何度も絶頂して……
まさに燃え上がるような情熱的な夜だった。
「ウフフ、ねぇ響子、長岡君のエッチ気持ち良かった?」
ニヤニヤしながら聞いてくる沙弥。
響子は慌ててコンドームの袋をゴミ箱に捨てて、顔を赤くしていた。
「もぉ、響子ったらあんまり乗り気じゃない素振りしてたくせにぃ。」
「あ、あのね沙弥……これはその……。」
「ウフフ、大丈夫よ、響子の旦那さんには秘密にしておくから。」
「……。」
響子としては言い訳もできなかった。
沙弥の思惑通りになってしまったのは悔しいけれど、沙弥がいなければ長岡さんとの出会いはなかった。でも感謝するのも変な気がするし……。
とにかく、違う世界に足を踏み入れてしまったんだなと響子は感じていた。
〝旦那には秘密〟という言葉が胸にズシッときて、実感が沸いてくる。
――……私……本当に浮気しちゃったんだ……――
「ねぇ、長岡君はどうだったの?響子のか・ら・だ。」
「ハハッ、そりゃもう最高だったよ!」
「な、長岡さん……」
長岡の言葉にさらに顔を真っ赤にする響子。
でも〝最高だった〟という言葉を聞いて、響子も心の中で〝私もです〟と呟いた。
昨日のセックスは本当に気持ち良かった。
今までのセックスに対する価値観が180度変わるくらいに。
少し思い出すだけでも身体が熱くなってきてしまう。
単なる寂しさを埋めたいという感情だけではない。
刺激が欲しい、快楽が欲しい、という淫らな感情の方が強いかもしれない。
昨晩の行為を思い出すと、自分自身の淫らさにも驚いてしまう。
――私自身も今まで知らなかった、もう1人の私を、長岡さんが見つけてくれた……――
その後、朝食をとり終えた4人は、帰り支度をして旅館を出た。
しかし案の定、車の中では沙弥を中心に下の話で盛り上がる。
「それにしても今日が初めてなのに3回って凄いよね、私と武でも昨日は2回しかしてないのに。ねぇ長岡君、響子にどんな事させたの?」
「ちょ、ちょっと沙弥……長岡さんに変な事ばっかり聞かないでよ……」
「だって響子は全然教えてくれないんだもん。」
「当たり前でしょ……そ、そんな事……」
「ダメよ響子、もっとオープンにならないとこういう関係は楽しめないのよ。」
「……オープンにって言われても……」
「ねぇ長岡君、どうなの?聞かせてよ。」
「ハハッ、昨日はいたってシンプルなエッチだったよ。ですよね?響子さん。」
「長岡さん……」
「へぇ、3回とも?」
「普通のセックスが凄く良かったからさ、俺と響子さん相性が良いみたいで。そのまま盛り上がって3回戦までね。」
「わぁ、それってある意味凄いよね。じゃあ響子も相当気持ち良かったんだ?」
しつこく聞かれるから、響子も観念して恥ずかしそうにしながらも小さく頷いてみせた。
「ウフフ、良かったね響子。でもちょっと残念だなぁ、長岡君が響子にどんな変態プレイさせたか気になってたのに。」
「へ、変態プレイ……?」
「あ~、やっぱり響子はまだ知らないんだぁ。ウフフ、あのね響子、長岡君はね、す~っごい変態なんだよ。」
「おいおい沙弥ちゃん、あんまり大げさに言うと響子さんが引いちゃうだろ。」
「大げさなんかじゃないでしょ~、この中で一番変態なのって断トツで長岡君なんだもん。ウフフ、響子も長岡君に調教されちゃうわね、きっと。」
「ちょ、調教って……」
「響子はドMだから、男の人に身体を調教されるの、興味あるでしょ?」
〝長岡さんに調教される〟
なんだかよく分からないけど、とても淫猥な響きに聞こえて、下腹部がキュンと熱くなる。
――調教……されたいかも……でも調教ってどんな事するんだろう……――
「あ~やっぱり響子、興味ありそうな顔してる。」
「え?そ、そんな事……」
「そんな事あるくせにぃ。これはもう長岡君にみっちりやってもらいたいって顔よね。長岡君、響子が沢山調教してほしいって。」
「ハハッ、まぁそれはこれから徐々にだよ。楽しみは少しずつ味わっていかないと。ね、響子さん。」
「は、はぁ……」
恥ずかしいから控えめな返事しかできない響子だったが、本当は沙弥の言う通り、〝変態〟〝調教〟という言葉に興味津々だった。
これから長岡さんは私にどんな刺激を与えてくれるのだろうと、期待にも似た感情が沸き上がってくる。
胸がドキドキと高鳴る。こんなに好奇心を揺さぶられるのは初めて。
そしてこの日から、響子の新しいセックスライフは始まった。
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