人妻 響子 (8)

響子と長岡の唇が重なる。

男と女はキスをした瞬間にその相性の良し悪しが分かると言うが、響子は長岡と唇を重ねた瞬間に心地良いものを感じていた。

そして数秒で一旦顔を離し、見つめ合う2人。

ドキドキと、自分でも信じられないほど胸が高鳴っている。

この胸が熱くなる感じ、いつ以来だろう。

苦しい。苦しいけど、どこか心が満たされていくような感覚がある。


「ほら、少しは心の穴、埋まったでしょ?」


「……ハイ……」


「もっとしたいですか?」

響子が頷くと、2人は再び顔を近づけて唇を重ねた。

今度はさっきより長いキス。

すると自然と2人の口が半開きになっていき、2人は求め合うように舌を絡め始めた。

……ン……チュ……チュパ……ン……ン……

互いの舌の感触を確かめながら、唾液がネットリと混じり合う。

久しぶりキス。夫以外の男性とのキス。

凄く気持ちいい。

それから5分くらいディープキスを続けた後、長岡が口を離すと、
「はァ……」

と吐息を漏らした響子の顔は火照って、うっとりとした表情に変わっていた。


「響子さん、エッチな気分になってきましたか?」


「イヤ……長岡さん……」


「ハハッ、恥ずかしがってる響子さんは可愛いですね。」


「長岡さん……意地悪な事言わないでください……」


「そんな顔されるともっと意地悪したくなるなぁ。」

そう言って長岡は響子の太ももを浴衣の上からすーっと指で撫でた。

それだけで響子は思わず
「ああ……」

と声を漏らしそうになるほどゾクゾクと反応してしまう。


「響子さんはセックス好きなんですか?」


「ぇ……な、長岡さん……」


「教えてくださいよ。」


「も、もぉ……長岡さんってエッチなんですね。」


「エッチですよ、俺はセックスが大好きなので。響子さんはどうなんですか?」

響子は
「え~……」

と恥ずかしそうにしながらも顔は笑顔だった。


「ほら、自分を解放して、答えてくださいよ。」


「自分を解放……?」


「そうです。自分の思ってる事や感じてる事を口に出すことが大切なんです。解放すると気持ち良いですよ。」


「そういうものなんですか……」


「そう、セックスが好きなら、好きって男にちゃんと言わないと。」

――確かに長岡さんには不思議と何でも話したくなる……長岡さんの前では全てを打ち明けたくなる――


「……き、嫌いではないですよ。」

響子は顔を赤くしながらそう答えた。


「って事はセックスは好きって事?」


「……嫌いな人なんているんですか?」


「ハハッ確かにそうですね。じゃあもう1つ聞こうかな。響子さんは最近セックスしたのはいつなんですか?」


「え~……わ、分からないです、そんな事……」


「分からないって事は、ずっとしてないって事ですか?」


「……そうですね……」


「じゃあ今日は久しぶりのセックスですね?」

長岡の言葉に全身がカァっと熱くなる。

もう響子とセックスをするつもりだという事を包み隠そうとしない長岡に、響子はどういう反応をすればいいのか困っていた。


「あれ?俺とセックスしたくないんですか?」


「も、もぉ……長岡さんはストレート過ぎますよぉ……」


「ハハッ、言ったでしょ?全部口に出して伝える事が大切だって。自分の気持ちに正直になるだけで、劇的に人は変われるんです。」

〝自分の気持ちに正直になるだけで人は変われる〟

そういう言葉からも、響子とは真逆の長岡の生き方が伝わってくる。響子はずっと自分を気持ちを抑え込んで生きてきた。

でも長岡や沙弥は違う。本当はそれがずっと羨ましかった。

――私も、今日くらいは自分に正直になっても、いいよね……?――


「長岡さん、私も変われるかな?ずっとじゃなくてもいい、今日だけでも変われる?」


「変われますよ。一度変わり方を覚えれば、いつだって響子さんは変われるようになれます。」


「私……変わりたい……自分に正直になってみたいです。」


「そう、まずは自分に正直になるところからですね。じゃあ響子さん、今思ってる事を口に出してみましょうか。」


「ぇ……でも…分かんない……何て言ったらいいか……」


「じゃあ俺が何て言えばいいのか教えてあげましょうか?」

そう言って長岡は響子の太ももを摩っていた手を移動させて、浴衣の上から響子下腹部を摩り始めた。


「ぁ……」

まるで長岡の手に誘導されるようにして全身の熱が下腹部に集まっていく感覚に、響子は小さく声を漏らしてしまう。

女性器がジンジンと熱い。もう響子の身体が今何を欲しているのかは明白だった。


「響子さん、どうしますか?」


「はァ……長岡さん……教えて…ください……」


「いいですよ、じゃあ教えてあげます。」

そう言って長岡は響子の耳元に顔を近づけると、ゆっくりと口を開いた。


「〝セックスしたい〟って言えばいいんですよ。」


「……ぁぁ……」

心で思っていた事を長岡にズバリ言い当てられて、響子のアソコがさらに熱くなっていく。


「恥ずかしくても、言えば心も身体も気持ち良くなれますよ。」


「はァ……長岡さん……」


「さぁ、自分に正直に、口に出して、言ってみて。」

耳元で囁く長岡の声が身体中に響く。

そしてその声に反応するように、感情が、欲求が止め処なく溢れ出てきて、もう我慢できなくなる。

まるで催眠術に掛かったように心が蠢く。

言いたい、言いたい。

恥ずかしいけど、言いたい。もう言っちゃう。


「はァ……長岡さん……したいです……私…セックスしたいです……」



コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました