内心ショックを受けながらも、果歩は知子にそれを勘付かれないようにと、なるべく明るく振舞った。
果歩
「・・・そ、そっか・・・意外と知子ちゃん勉強できるもんね・・・努力が結ばれたんだね、よかったね。」
知子
「意外は余計ぃ~!・・・フフッ、それで今日も準備でいろいろ忙しくて休んだって訳なんだよぉ。でもごめんね果歩、突然で・・・寂しいでしょ?」
果歩
「・・・ううん、ちょっと寂しいけど・・・知子ちゃんの事日本から応援するよ・・・。」
明るい未来へ進もうとする知子が、果歩にはなんだか別世界の人に思えてきていた。
・・・それに比べて・・・私は・・・
知子
「ありがとう。あっ、そういえば・・・まぁそういえばって事もないけど果歩、友哉君とその後どうなの?相変わらず連絡ない?」
知子のその言葉を聞いて果歩の表情が一気に曇る。
果歩
「・・・ぇ・・・ううん・・・この前ね、連絡あったよ・・・。」
知子
「え~そうだったんだぁ、それでそれで?どうなったの?」
果歩
「・・・・・・。」
知子
「・・・果歩?」
もう親友の知子にさえ相談なんかできない。こんな自分の事で心配も掛けたくない。
果歩は精一杯声を絞り出して答える。
果歩
「・・・大丈夫だよ!仲直りできたよ、だから・・・知子ちゃんも私の事は心配無用だから、イギリスで頑張ってきてっ。」
果歩の苦手な嘘・・・いつもの知子なら、きっとそんな嘘はすぐに見破ってしまうのだろうが、今回は違っていた。
留学できるという嬉しい出来事に浮かれ気分の今の知子は、そういった勘が鈍っていたのかもしれない。
知子
「ホントォ!?よかったぁ、正直果歩と友哉君の事が唯一気がかりだったんだよねぇ。あっ、あの富田さんって人の事は秘密にするから大丈夫だからね。もう忘れて、果歩もあんまり過去の自分を責めないようにしなよっ。」
果歩
「・・・う・・うん・・・。」
知子
「うん、あれくらいの一度や二度の過ちの事なんて気にしなくていいんだよ、ね?」
果歩
「・・・うん・・・。」
知子
「・・・よしっ!それじゃ、私しばらく準備で大学行けないけどさ、出発前には2人でどこかにご飯食べに行こうよ。」
果歩
「うん、行こう行こうっ。」
知子
「最近また良い店見つけたからさ、そこ行こ?・・・あ、じゃあまた連絡するね果歩。」
果歩
「うん、連絡まってるね、じゃあまたね。」
知子
「はいよぉバイバイッ!」
ピッ・・・カチャ・・・
果歩
「・・・はぁ・・・。」
携帯を閉じ、ため息をつく果歩。
数分の会話なのに、なんだか凄く疲れた。
今日だけは大好きな知子の明るい声が、苦痛でしかなかった。
気持ちよく目標に向かっている知子が羨ましかった。いや、羨ましいというよりは嫉妬に近い感情かもしれない。
自分の今の現状はあまりにそれとはかけ離れている。
そんな自己嫌悪感を抱きながら、果歩は乱れていた身なりを整えた。
ガチャ・・・
トイレの個室を出て水道で手を洗い、ハンカチで手を拭き、目の前の鏡を見つめる果歩。
・・・胸が苦しい・・・泣きそう・・・
果歩
「・・・ハァ・・・。」
しかしそんな感情を抱きながらも、果歩は感じていた、まだ取りきれない下腹部のウズウズ感を。
知子との電話で冷めかけていた下腹部の熱はまだ残っている。
苦しい胸の奥と、疼く下腹部。
自己嫌悪と、こんな精神状態でも再び沸き上がってくる淫らな欲求。
もう果歩には気持ちの余裕がなかった。
そして今の果歩は、この両方を解放させる方法を1つしか知らない。いや、それしか考えられなかった。
果歩には1つの選択肢しかなかったのだ。
ガチャ・・・
それは・・・すべての事を忘れさせてくれる〝快楽〟だ。
果歩
「ァ・・・ハァ・・・ァ・・・」
再びトイレの個室に入った果歩は、すぐに下着を脱いで途中だった自慰行為を再開させた。
目に涙を溜めながら、手を激しく動かして自身の身体を弄る果歩。
数秒で身体は火照りだし、甘い快感が下腹部を中心に全身に広がっていく。
溜まった欲求はもちろん、苦しかった想いも、全てを快感が奪っていってくれる。
胸を締め付けていたモノが快感に溶け、流れ出ていく感覚が気持ちいい。
果歩 「ハァ・・ァ・・・ァ・・・」
そして果歩は気付いたのだ。
マイナス要素でしかなかった罪悪感や自己嫌悪さえ、もはやこの快感のスパイスになっている事に。
異常だと思うが自分の身体はもう、そうなってしまっている。
・・・クチュクチュ・・・
果歩
「ハァァ・・・ハァァ・・・・ァ・・・」
トロッとした果歩の蜜が内腿を伝って下へ落ちる。
自らの手で迎える緩やかな快感絶頂に浸りながら、果歩は思っていた。
・・・私・・・もう戻れないんだ・・・
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