「富田さん?あ~今日も来てないよ、あの人の出勤は気まぐれだからねぇ。」
果歩
「・・・そう・・・なんですか・・・。」
今日も富田は仕事先に来ていない。
もうあれから何度も富田のマンションまで行ってみたが結局会えなかった。
携帯に電話しても出てくれない。
秋絵先輩の所にいるのかもしれないという疑念を持ちながら秋絵のマンションの前まで行ってみたりしたが、中に入ってインターフォンを押す勇気はなかった。
果歩はそんな富田を探し続ける日々に精神的な疲れを感じていた。まるで自分がずっと迷子になっているような気持ち。
そして果歩の心の中に生まれた大きな不安感。
・・・私・・・捨てられたの・・・・?
それは今の果歩にとって最も絶望的な事であった。
目の前が真っ暗になるような感覚。
・・・嫌・・・そんなの・・・イヤ・・・もう富田さんに会えないなんて・・・私・・・生きていけない・・・
富田さんなしでは生きていけない・・・果歩は本気でそう思っているのだ。
不安で不安で仕方ない毎日。夜も眠れない日々が続く。
富田との関係にドップリ嵌まり込んでしまった今の果歩は、心の視野がとても狭くなっている。
富田との世界が、自分の唯一の居所なんだと・・・。
山井
「富田さん、今日も果歩ちゃん終電ギリギリの時間までマンションの外で待ってたみたいですよ。なんか健気過ぎて段々可哀想になってきたんですけど。」
富田のマンションのカーテンを少しだけ開けて外を覗いていた山井がそう呟く。
富田
「ま、果歩らしいって言えば果歩らしいか・・・電話も何度も掛けてきてるしな、もしかしたら今の果歩なら外で裸になって待っていたら会ってやるって言えば、その通りにやっちまうかもしれんなぁ。」
富田がそう冗談っぽく言うと、山井もそれいいっスねぇやりましょうやりましょうと言いながら笑っていた。
山井
「へへ・・・ところで富田さん、例のアイツはちゃんと言われた通り事を進めているんですかねぇ?」
富田
「ん?あ~たぶんな、期限も決めてるしそろそろ動き出すだろう・・・まぁあんなガキ相手に果歩がどうするか・・・楽しみじゃねぇか。」
山井
「ついに果歩ちゃんにも最後の審判が下るのかぁ・・・俺としては先輩と同じ道は歩んでほしくないですけどねぇ・・・」
富田
「まぁ全ては果歩次第だ。これからも俺のモノでいるのか・・・単なる肉便器になるか・・・」
不敵な笑みを浮かべならそう言う富田だったが、目は全く笑っていなかった。
その目はまるで不安と憎悪入り交ざっているようで・・・そしてどこか怯えているようでもあった。
果歩
「・・・え?食事会・・・?」
大学の食堂で1人で昼食をとっていた果歩に話しかけてきたのは、同じ学部で友人の裕子だった。
裕子
「うん、まぁ飲み会っていうか気軽なものなだけど、恭子ちゃんとか麻衣ちゃんとか皆来るけど果歩ちゃんもどう?」
果歩
「そうなんだぁ・・・皆来るんだぁ・・・どうしようかなぁ・・・」
正直果歩は裕子のこの誘いに乗り気ではなかった。富田の事もあってとてもそんな賑やかな所へ行く気になれない。
後藤
「水野はもちろん来るよなぁ?」
果歩
「ぇ・・・?」
立っていた裕子の後ろから話しかけてきたのは後藤だった。
後藤
「水野って日曜日はバイト休みなんだろ?じゃあ来れるだろ?」
果歩
「・・・う・・・うん・・・そうだけど・・・。」
強引に話を進めようとする後藤に果歩は戸惑いの表情を隠せない。
裕子
「ちょっとちょっと後藤君!強引過ぎだよ、果歩ちゃんが余計に神経使っちゃうでしょ?」
後藤
「え?でも水野が来ないと意味ないだろ・・・」
果歩
「・・・ぇ・・・?それどういう・・・」
裕子と後藤の会話に果歩が疑問を抱いた顔をしていると、裕子はそれに気付き、仕方ないといった表情で果歩に説明し始めた。
裕子
「果歩ちゃん、実はあのね・・・果歩ちゃん最近元気なかったから後藤君の提案で皆で果歩ちゃん誘ってご飯でも食べ行こうかって。」
裕子の口から出た意外な言葉。それを聞いて果歩は申し訳なさそうに口を開いた。
果歩
「そうだったんだ・・・なんか・・・ごめんね・・・気を付かわせちゃってたんだね・・・。」
後藤
「まぁ気にするなよ水野、俺達友達だろ?今度の日曜は皆でパァっとやろうぜ!皆で飲み会とか最近やってなかっただろ?」
裕子
「まぁ後藤君が幹事だから美味しいお店じゃないかもしれないけど、果歩ちゃんどうかな?」
後藤
「バーカ大丈夫だって、俺こう見えて結構美味しい店知ってるからよ、な?水野来るだろ?」
果歩
「・・・うん・・・ありがとう後藤君、裕子ちゃん・・・日曜日だよね、うん、分かった。」
果歩は笑顔を作ってそう答える。
心は疲れていた果歩だったが、後藤と裕子の計らいは素直に嬉しかった。
いつも知子か友哉といっしょにいた果歩にとって、後藤と裕子は今まで特別仲の良い友人という訳ではなかったが、こんな風に自分の事を心配していくれた事に果歩は内心感動していた。
富田に会えなくて真っ暗になっていた心に、ほんの少しだけ光を当ててもらったような、そんな気分であったのだ。
コメント
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お心遣いありがとうございます。
極端にSだったり極端にMだったりするのは、そういう過去の体験が影響しているっていうのはあるかもしれないですね。僕もそう思います。
このサイトは結構女性の読者も多いみたいですし、そういった所の心理描写もできる限り書いていきたいと思います。
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確かに性描写を期待してる男性には萎えちゃうかも(笑)
女性側からすると背景がある方が好きだと思います。
それはそうと…
SもMも、普通の人が信じられる愛を信じられないんですよねぇ。
(親からの愛情をもらえなかったり、恋愛で裏切られたり)
だから違う形で愛を探してるんでしょうね。
今後の展開楽しみにしてますね。
寒さも厳しくなってきてますから、風邪ひかないようにしてくださいね。
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コメントありがとうございます。
この話は純愛とドロドロした濃厚な官能が入り混じった物語ってイメージで書いてます。
最後はハッピーエンドを望まれている方が多いみたいですね。
まだ今後どうなるかは言えませんが、読者の方に楽しんで頂けるように頑張ります。
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まぁ予想しやすい展開にはなっていますよね(笑)
果歩は秋絵との関係も崩れてしまっていますからねぇ…これ以上はちょっと可哀想ですかね…
果歩の場合周りの人間関係が富田さんへの依存度に影響してますから、さて…今後どうなるでしょう…
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ドS男の弱い部分が垣間見え始めてきたという感じですかね。
人を信じる事が苦手というか不器用というか…でも男のこういう部分を書くのはちょっと官能小説っぽくないかもしれませんね…もしかして男性の読者の場合はこういうシーンに萎えてしまう人もいるかも…
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富田さんにとって果歩ちゃんは今までの人とは全くちがうんですね。
でも、自分の気持ちを押し付けるのではなく、果歩ちゃんもそうだと果歩ちゃんに気づいてほしい。
男心は複雑ですね。
単なる官能小説ではなく、ラストは純愛&ハッピーエンドを強く希望します。
Hは気持ちいいけど、大好きな人に抱かれるために女は生まれてきたんです。
果歩ちゃんは、絶対にそれがわかる子だと信じて楽しみにしています。
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マインドコントロールされてる果歩。
このままでは後藤に着いていき、玩具にされそう。
しかも、富田さんの指示みたいだし、寂しさのあまり身を任すと、肉便器決定ですね。(ToT)
せめて、優しい言葉をかける、裕子と後藤がグルじゃ無い事を願いたい。
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予想が正しければ、富田さんが企んでる事…
私もパートナーに試されましたよー。
どこか信じられず不安だから【こそ】
確めたくなるんでしょうねぇ。