「どうだった?果歩ちゃんが知ってるエッチとは随分違ったんじゃない?」
DVDの再生が終ってテレビの画面が暗くなる。
果歩はハッと我に帰り、ソファの背もたれにフゥっともたれ掛かった。
「ハイ・・・なんか・・・すごかったですね・・・」
彼氏との性交とはまったく違う刺激的で激しい性交を映像で目の当たりにした果歩。
男優の逞しい肉体、濃厚なキス、大きく力強く勃起した男根、豊富なテクニック、体位、激しいピストン運動・・・
そのすべてが果歩を淫らな気持ちにさせた。
特に驚いたのは最後、女性の顔に向けての大量射精だった。
勢いよく発射される濃厚な黄ばんだ精液を、上気した顔で受ける女性。
さらに果歩がビックリしたのは、女性が開けていた口に入った精液を、舌の上で遊ぶように転がした後、ゴクっと嚥下したことだった。
・・・顔射・・・精飲・・・
精液を顔に浴びたり、男の人の精子を飲むなんて果歩には到底理解できなかった。
でも、なんだろう・・・この気持ち・・・
気持ち悪い・・・違う・・・
不思議とそんな感情は沸いてこなかった。
いや、むしろ精液を気持ち良さそうに顔に受けたり、おいしそうに飲み干す女性の姿を見て、果歩の身体は熱くなったのだ。
「果歩ちゃん、顔赤いよ。フフ、もしかしてAV見て濡れちゃった?」
「ぇ……」
秋絵に指摘されたことで、ハッとした果歩。
自分の股間のグッショリ湿っている感覚に気づいたのだ。
グシュっと音がしそうなくらい濡れている。
その粘液はパンツを通り越して秋絵に借りたネグリジェまで濡らしているかもしれない、という予感が果歩の頭をよぎる。
しかし、今、秋絵の前でそれを確認するわけにはいかないので、ただただそうなっていない事を願う果歩。
「フフ、だってAV夢中で見てたんだもの。果歩ちゃん、オナニーしたくなっちゃったでしょ?」
「ぇ、それは・・・秋絵先輩……」
図星だった。
本当なら今すぐ下半身に着ている物を脱いで、グッチョリと濡れた自分の秘部に指を入れてかき混ぜたかった。
覚えたてのオナニーを・・・バイブオナニーをしたかった。
一日中身体の奥で燻っていたムラムラ感、今すぐそのムラムラ感を解き放ち、快感の絶頂を迎えたい・・・。
「フフ、冗談よ。あっ、ヤダもうこんな時間、さすがに夜更かしし過ぎるのもね。果歩ちゃんそろそろ寝ようか?」
ふと秋絵は部屋の時計を見ながら言った。
「え・・・あ、はい・・・。」
突然、話題をきって、寝ようと言ってきた秋絵に対し、果歩は拍子抜けのような気持ちになった。
しかし、そんな気持ちになった自分を果歩は頭の中で否定した。
ヤダ・・・私・・・何期待してたんだろ・・・
こんな事、女の子同士だとあることだよね・・・知子ちゃんも高校の時友達とエッチなビデオ見たことあるって言ってたし・・・
「ベッド一つしかないけど、結構大きいから、一緒でいいかな?」
寝室に入ったふたり、秋絵はもう一つの枕をベッドに置きながら果歩に聞いた。
「あ、はい。でも、こんな大きなベッド、羨ましいです。」
「フフ、寝相悪くても落ちないからね。」
そんな事を言いながら秋絵と果歩はベッドに入っていった。
「果歩ちゃん、もう寝ちゃった?」
暗くした寝室のベッドの上で横になっているふたり。秋絵が小さめの声で呟いた。
「起きてますよ。」
秋絵に背中を向けていた果歩はクルッと寝返りして秋絵の方を向いた。
「果歩ちゃんさ、さっき見たAVみたいなエッチ、してみたい?」
「え・・・?」
「あの女の子みたいに気持ちよくなってみたくない?フフ、きっとバイブのオナニーなんか比にならないくらい気持ちいいわよ。」
「・・・秋絵先輩・・・」
バイブのオナニーとは比較にならない快感・・・
「フフ、ねぇ果歩ちゃん、正直に言ってみて、果歩ちゃんだってあんな風に感じてみたいんじゃない?」
「・・・でも・・・そんな・・・」
そんな大それた事、果歩にとっては現実的には無理だ。
果歩には彼氏、友哉という彼氏がいるのだから。
「フフ、友哉君?でも話を聞く限り、友哉君とのエッチじゃあれだけの快感は与えてもらえないわよ。」
「・・・でも・・・」
友哉は大好きな彼氏だ、頼りになるしっかりとした彼氏だ、不満などなかったはずだった。不満など・・・
しかし、正直バイブオナニーにハマッてしまった果歩だ、アレ以上の快感を与えてくれるセックス、興味はないと言ったら嘘になる。
「果歩ちゃん、私ね、実は彼氏はいないけどセックスフレンドはいるのよ。」
「えっ!?セ・・・ってあの・・・」
「フフ、ビックリした?でもね、私もその人に教えてもらったのよ、本当のセックスを。」
頭が混乱すると同時に、またあのドキドキが始まり、果歩の下腹部が疼く。
セックスフレンド・・・秋絵のイメージとはかけ離れた言葉。
同時に誕生日会の時に見た大量のコンドームを思い出す。
あのコンドームはそのセックスフレンドと使ったものなのか・・・。
それに本当のセックスって・・・
「・・・本当の・・・ですか・・・?」
「うん、女の子だけが感じることのできる快感・・・でもね、そんな快感を一生のうちに体験できる女性はほんの一握りなのよ。とってもセックスが上手な男の人に出会えた人だけが体験できる快感・・・」
・・・秋絵先輩は私にどうしてほしいんだろう・・・?
エッチなオモチャをプレゼントを渡してきたり、エッチなDVD見せてきたり・・・
「果歩ちゃんも、そんなセックスしてみたいんじゃない?」
「秋絵先輩・・・それってどういう・・・」
普段とは違う非日常的な会話に、果歩は困惑した様子だった。
「フフ、ごめんね、エッチな事ばかり聞いて。果歩ちゃんにはちゃんとした真面目な彼氏がいるんだもんね、そんな事できないわね。」
「・・・・あの・・・ハイ・・・。」
「フフ、じゃもう寝ましょうか。」
「…ハイ。」
「うん、じゃあおやすみ・・・」
「おやすみなさい・・・」
その夜、果歩はなかなか寝付けなかった。いつもと違うベッドだったり、隣で秋絵が寝ているのもあるかもしれないが
(果歩ちゃんもあんなセックスしてみたいんじゃない?本当のセックスを・・・)
秋絵の言葉が、DVDの過激な映像が、頭から離れなかった。
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