富田はぐっすり眠っている。
昨晩いつも以上に燃えたSEXのせいもあるのか、深い眠りだった。
繋がっている時の果歩の身体の感触、果歩の声、果歩の表情・・・その全てが、経験豊富な富田に新鮮な興奮を与えたのだ。
果歩を何度イカせても、富田が何度射精しても、その興奮が治まることはなかった。
頭を空っぽにして本能のままに腰を振り合ったふたり。
SEXを通してシンクロし合った2人はお互いのどんな場所も、どんな体液も、汚いとは感じない。
脳髄まで溶けてしまいそうな快感。
五感を、いや、人間が持つ全ての感覚を刺激される極上のSEXだったと言ってもよかった。
多少身体は疲労していたが、それは嫌なものではなく、丁度良い、満足感に似たようなものだった。
清純な果歩の身体を味わい尽くした、自分の体液で汚しきったというサディスティックな男としての満足感。
果歩を自分のモノにしたという優越感。
いい気分だった。
ぼんやり目を開け、目覚める。
部屋のカーテンが風に揺れて、その隙間から時折外の光が差し込む。
富田
「ん・・・もう何時だ・・・?」
身体を起こし、ベッドの傍らにあった時計の針を確認する富田。
もうすでに昼前だった。
昨日は明け方近くまで果歩との性行為に没頭していたのだから当然か。
富田
「・・・・・・ん?」
ふと自分の横を見ると、果歩がいない。
寝てる間は、なんとなくだが隣に裸の果歩がいるのを感じていた。
・・・どこへ行ったんだ・・・
富田はベッドから降り、裸の姿にバスローブを羽織って寝室のドアへ向かう。
・・・シャワーでも浴びているのか・・・それとも・・・
彼氏以外との性行為、それに罪悪感を感じ帰ったか・・・
富田の脳裏にそんな事が浮かぶ。
真面目な果歩なら十分にありえる事だ。
・・・ガチャ・・・
ドアを開けた瞬間、目に眩しい昼間の明かりを感じると同時に、キッチンの方から漂ってくるなんだか懐かしいような香りを鼻で感じとった富田。
・・・なんだ?・・・この匂い・・・
その香りが漂ってくる方、キッチンを覗く富田。
そこにはここへ昨日着ていた服をきちんと着た果歩がキッチンのコンロの前に立って、何やら作業をしているようだった。
富田
「・・・・・何・・・やってるんだ?」
果歩
「ぇ・・・?あ・・・おはようございます・・・あの・・・」
声に気付き、富田の方へ振り返った果歩は、いつも通りの可愛らしい笑顔で富田にあいさつをした。
富田
「・・・・・。」
富田は目を細めて、火の付いたコンロに上に乗った鍋に視線を送る。
果歩
「・・・ごめんなさい・・・キッチン勝手に使っちゃって・・・」
富田
「・・・・何か・・・作ってるのか?」
果歩
「えっと・・・あの・・・味噌汁を・・・」
富田
「味噌・・・?冷蔵庫には飲み物くらいしか入ってなかったろ?買ってきたのか?」
果歩
「はい・・・すぐそこのスーパーで・・・ご飯はあの・・・炊飯器もなかったからおにぎり買ってきた
んですけど・・・お腹、空いてませんか?」
富田
「・・・・・・フッ・・・」
富田は微笑しながらキッチンに立つ果歩の後ろに近寄っていく。
男より先に起きて、食事を作る果歩の健気な行動が、なんだかとても可愛らしく感じた。
鍋の前に立つ果歩の後ろに立ち、果歩の肩を抱く富田。
果歩
「・・・ぇ・・・富田さん・・・?」
富田
「果歩・・・料理・・・できるのか・・・?」
富田はそう果歩の耳元で呟きながら、果歩の首に口付けをする。
果歩
「ァ・・・・あの・・・秋絵先輩みたいに・・・上手じゃないですけど・・・。」
富田
「・・・これ・・・昨日の服だろ?部屋着なら俺の貸してやるよ。」
果歩
「ぇ・・・ァ・・・はい・・ありがとうございます・・・ハァ・・・」
性感帯のひとつである首への刺激に、思わず目を閉じ吐息を漏らす果歩。
その微弱でありながら甘く痺れる様な快感は、果歩に昨夜の興奮を思い出させていた。
富田
「・・・チュパ・・・ハァ・・・今日は・・・何も予定ないんだろ?」
果歩
「・・・ハァ・・ァ・・・・ハイ・・・」
富田
「じゃあ、ここに居ろよ。」
果歩
「・・・・・ハイ・・・。」
富田の言葉が何を意味するのか、果歩にはもちろん理解できていた。
返事に迷う事はない、果歩もそれを望んでいたのだから・・・。
食卓に並ぶ、買ってきたおにぎりと漬物、それに果歩が作った味噌汁が並ぶ。
正直、質素なメニューだ。
富田は普段外食ばかりで、この部屋のキッチンや冷蔵庫の中はすっきりした物なので仕方ないかもしれない。
富田
「・・・食っていいか?」
果歩
「あ、はい!・・・あんまり自信ないですけど・・・。」
果歩は少し照れ笑いをしながら、味噌汁が入ったお椀を口に運ぶ富田の様子をじっと見つめる。
実はあまり自分の料理を人に食べさせた事がない果歩。
味噌汁くらい誰でも学校の家庭科の授業で習うくらいだから、果歩もそれなりの自信は持っていたが、富田がどんな顔をするかは少し心配でもあった。
・・・ズズ・・・ゴク・・・
果歩が富田のために一生懸命作った味噌汁を一口、じっくり味わう。
富田
「・・・・・・・。」
富田の様子を心配そうにじっと見つめる果歩。
果歩
「・・・・どう・・・ですか?」
富田
「・・・・これ・・・だし入れたか?」
果歩
「え・・・?だし・・・?・・・あっ!・・・そっか・・・だし・・・」
どうやら果歩は致命的なミスを犯していたらしい。
果歩
「・・・はぁ・・・。」
味噌汁さえ満足に作れなかった自分が情けなく、ため息をついて落ち込む果歩。
知子がいたらきっとまた馬鹿にされてるだろう。
果歩
「・・・・ごめんなさい・・・美味しく・・・ないですよね・・・。」
富田
「・・・ハハハッ!まぁ夜はどっか出前でも頼むかぁ。」
富田は豪快に笑いそう言った後、再び果歩が作った味噌汁に口をつけた。
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