官能小説 人妻 吉井香苗(12)

恭子さん……

この声質、それに明らかに隣の部屋から聞えてきているという事実に、この声の主が恭子のものである事は明確だった。

隣のベランダとの間にはしっかりとした壁があるので向こうの部屋からこちらの香苗の姿が見えることはないだろう。

しかし香苗はその声が隣の恭子のものだと分かると、反射的にその場に隠れるようにしゃがみ込んだ。

腕に洗濯物を抱えたまま、香苗は先程恭子の部屋で聞いた2人の会話を思い出していた。

……前までは毎日ヤリまくってたのによ、俺が一日3発は出さないと気が済まない事は知ってるだろ?……

……わかった、分かったから、後で、ね?……

中嶋と恭子は恋人同士だ。もちろん、大人の2人がこういった行為をする事は当たり前である。

それを盗み聞きするなんて常識的にやってはいけない事である事は香苗はよく分かっていた。それに恭子は香苗の大事な友達なのだから。

……ダメよ……こんなの聞いてちゃ……

そんな風に考えながらも、香苗はまるで固まってしまったかのようにベランダにしゃがみ込んだまま動けずにいた。

恭子 
「ァ……ハァ……アンッ…それダメだって…イヤ…ァ…アッアッ……」

中嶋 
「何がダメなんだよ……好きだろこれ?お前すっげぇ感じてんじゃん。」

いつもの落ち着いている恭子とはまるで違う切羽詰まった甘い喘ぎ声。

中嶋の恭子を責める言葉が、なんだかそれを聞いている香苗に妙に臨場感を伝えてくるようだった。

香苗 
「……。」

それにしても隣とはいえ、これ程までに声がハッキリ聞こえてきてしまうなんて。

聞えているのは窓越しや壁越しに聞こえるような篭った声じゃない。まるで2人がすぐ隣にいるかのように声がクリアに聞こえるのだ。

……もしかして、窓開けてしてたり…するのかな……

恭子 
「ハァ……ァ……チュパ…チュパ……」

粘着質な音と、微かに聞こえるギシギシというベッドの軋む生々しい音が聞こえてくる。

無意識の内にその音を聞く事だけに集中し始めてしまっている香苗。

集中すればする程、声や音は鮮明に聞えてくる。

グチャ…クチャ…ヌチャ…

ハァ……ハァ……

2人の息遣いまで聞えてきそう。

香苗の頭の中にはすでに裸で抱き合う中嶋と恭子の姿が思い浮かんでいた。

ドキドキドキドキドキ……

速まる鼓動。思わず飲み込んだ生唾。

初めて耳にした他人のSEX。

こんな事してたらダメ……そんな風に思いながらも香苗がそれを止める事ができないのには、明確な理由があった。

ただ今はまだ、香苗自身は自分のその気持ちに気付いていない。

無意識の内に香苗の心の奥に芽生えていた気持ち。

それは他人のSEXに対する強い好奇心だった。

香苗 
「……。」

ベランダでしゃがみ込み、壁の一点に視線を向け、黙って盗み聞きを続ける香苗。

頭の中は軽いパニックを起こしていて何も考えられない。ただジッと身動きをしないで聞いている。

中嶋 
「おら……早くケツこっちに向けろって。」

恭子 
「ン~……」

中嶋 
「早くしろよっ!」

バチーンッ!!!!!

恭子 
「アアッ!!」

香苗 
「えっ!?」

突然鳴り響いた何かが叩かれたような大きな音。

それにビックリした香苗は思わず小さく声を上げてしまい、慌てて両手で口を塞いだ。

中嶋 
「俺を待たせるなっていつも言ってるだろ?おら、もっとこっちに突き出せって。」

恭子 
「ハァハァ……はい……。」

中嶋の乱暴な物言いと、恭子の弱々しい返事。

……暴力……?

……もしかして恭子さん、中嶋さんに暴力を振るわれているの?……

なんとなく隣から伝わってくる様子で、そんな事を想像をしてしまう香苗。

そう考えた瞬間から、香苗は好奇心よりもむしろ恭子の事を心配し始めていた。

……恭子さん、大丈夫かしら……

しかしそんな香苗の恭子を心配する気持ちはすぐに打ち消される事になる。

恭子 
「アッ……ハァアアア……」

中嶋 
「好きなんだろ?これが。」

恭子 
「アアア……ハァァ……ンァ…スゴイ……奥まで…アア……」

……恭子…さん……?

そして香苗は気付く。
恭子が上げていた声は、痛さや辛さから出ている声などではなく、悦びから出ている声だという事に。

ギシッギシッギシッギシッ……!!!

中嶋 
「お前も溜まってたんだろ!?オラァ!好きなだけイケよ!」

恭子 
「ハァアアア!!!アッアッアッアッンァ……!!!」

2人の行為が盛り上がり始めると、香苗は再び胸の鼓動が速くなるのを感じ、さらに自身の身体の中心がカァっと熱くなっていくのを感じた。

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