香苗
「……はぁ……」
香苗はため息混じりに頭を抱えていた。
昨日の出来事がどうしても頭から離れない。それに昨夜ベッドの中で1人でした事も。
愛する夫以外の男性を想像しながらしてしまった事への罪悪感も香苗を悩ませていた。
非日常的な体験・記憶から早く脱したいと思っていても、ふと気付いた時には昨日中嶋に言われた事やベランダで盗み聞きした時の事を考えてしまっている。
それ程に昨日の体験は香苗にとって衝撃的で刺激的な出来事として記憶に刻み込まれてしまっていたのだ。
……時間が経てばきっと忘れる事ができる……でも、なるべく早く忘れたい…いいえ、早くこんな事忘れないといけないわ……
そんな事を考えながら香苗は日常通りの家事を続けていた。
しかし家事をする事で気を紛らわそうとしても、やはりあの記憶は頭から簡単には離れてくれない。
夜、祐二と2人で使っているベッドに入った香苗は、何かを求めるようにして横にいる祐二に身体を寄り添わせた。
祐二の仕事が特に忙しくなってからはめっきり少なくなっていた夫婦の夜の営み。
祐二が疲れているのは分かっていたが、今の香苗にはどうしても肌で感じる祐二の愛情が必要だったのだ。
香苗
「ねぇ祐二……」
横で寝ている祐二の肩を指先でツンツンと突く香苗。
祐二
「……ん?何?」
祐二がそれに反応して香苗の方に顔を向けると、香苗は少し甘えるようにして布団の中で祐二に抱きついた。
祐二
「珍しいな、香苗の方からなんて。」
香苗
「もぅ……恥ずかしいからそんな事言わないでよ。」
祐二
「そういえば最近してなかったもんな。」
香苗
「……ウン…。」
香苗のささやかな求めに応じるようにして祐二は香苗にキスをした。
香苗
「ン……ハァ……」
久しぶりに感じる夫・祐二の味。
キスをされた瞬間から、香苗は身体の奥から熱い興奮が込み上げてくるのを感じた。
ハァ……ハァ……ハァ……
自然と荒くなる呼吸。
香苗
「ン……ァ……祐二…ハァ……」
祐二の手が身体に優しく触れてくる。そして香苗の方からも手を祐二の肌着の中に入れてみる。
素肌から感じる祐二の温かい体温。心臓の鼓動。祐二の身体を弄るように手を動かす果苗。
祐二
「ハァ……今日はいつになく積極的だな?何かあったのか?」
香苗
「ン…ハァ……ううん…別に…ン……」
祐二の愛で忘れさせて欲しかった。
香苗の中にある、祐二以外の男を想像してしまったという記憶を。
香苗の中に入り込んできたあの男。
好きでも何でも無いはずの、いや、寧ろ警戒感さえ抱いている男に抱かれるところを想像してしまった事。
そう……まだ一度しか会っていないあの中嶋に抱かれるところを想像してしまった記憶を、香苗は祐二の愛で打ち消してもらいたかったのである。
香苗
「ァァ……祐二…ハァ…好き……愛してる…ハァ……」
布団の中で生まれたままの姿になった2人は、お互いの愛を確かめるように肌と肌を合わせた。
そして祐二の手はゆっくりと香苗の大事な部分へと流れていく。
香苗
「……ァン……」
祐二
「ハァ……香苗…凄い濡れてる……」
香苗
「イヤ……言わないで……」
祐二の言うとおり、今日の香苗の興奮はいつもより数倍大きなものであった。
こんなにも男の人を、祐二を欲しいと思ったのは初めてかもしれない。
恋人、夫婦として今まで何度も身体を重ねてきた事のある祐二、そして香苗自身でさえも、香苗はこういった性的な事には淡白な方だと思っていた。
もちろん男女の関係において大事な事だという認識はあったが、正直自分から求める程好きではなかったというか、生活の中で優先順位がそれ程高いものではなかったというのが、香苗の本心だった。
しかし今の香苗は違う。
こんなにも身体が疼くのはどうしてだろう……。
香苗
「ハァ……祐二……早く…ハァ……」
殆ど愛撫の必要がない程に濡れていた香苗の秘部は、すでに祐二のモノを欲していた。
祐二もいつもとは違う、香苗の火照った表情に興奮を掻き立てられる。
香苗の潤んだ目が自分を欲してくれている。
こんなに欲情している香苗を見るのは初めてかもしれない。
祐二
「香苗…ハァ……入れるぞ?」
香苗
「……ウン…」
ストレスの多い最近の生活の中ではなかったくらいに固く勃起した祐二のペニス、その先端が香苗の濡れた秘裂に当てられる。
そして祐二はゆっくりと腰を前に進めた。
香苗
「……ン……ァァ……」
自分の身体の中に祐二が入ってくるのを感じると同時に、香苗は祐二の愛に身体が満たされていくような幸せを感じたのであった。
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