中嶋
「へぇ~やっぱ綺麗にしているんですねぇ部屋。恭子の部屋も綺麗だったけど俺が住み始めてからは結構散らかってましてねぇハハッ。」
ついにリビングまで入ってきてしまった中嶋は、そう言いながらテーブルにビールの入った袋を置く。
そして香苗に何の断りもなくソファに腰を下ろした。
中嶋
「いいソファですねこれ、なんだか高級そうだ。」
香苗
「あ、あの……困ります中嶋さん……ホントに。」
立ったままの香苗は困惑しきった表情で中嶋に対しそう言った。
〝警察を呼びますよ〟そんな言葉が、もう喉まで出掛かっている。
しかし香苗はそんな大それた事をそう簡単にはできない。
隣人とのトラブルで警察を呼ぶなんて、やはりマンションの他の住人の目も気になる。
それにこの中嶋は大切な友人である恭子の恋人。その関係を変に拗らせてしまう事にも抵抗を感じる。
香苗
「……。」
中嶋
「ほら、奥さんも座ってくださいよ。まずは乾杯しましょう。」
ビールの缶を袋から2本取り出し、香苗の前に笑顔で差し出す中嶋。
ただただ困惑する香苗の気持ちなど気にも止めない様子で、中嶋は余裕の表情で愉快そうにしている。
香苗
「な、中嶋さんっ!いい加減にしてください!」
あまりに身勝手な中嶋の態度についに香苗はそう声を張り上げた。
しかしそんな香苗の声を聞いても、中嶋の態度は変わらない。
中嶋
「ハハッ!いい加減にしてくださいかぁ……ふーん……」
中嶋はニヤニヤと笑みを浮かべながらそう呟くと、缶ビールをプシュッと音を立てて開け、それをグビグビと流し込むように飲む。
そしてビールを半分程一気に飲んだ中嶋は、テーブルに缶を置いた後、ゆっくりとその口を開いた。
中嶋
「いやぁ奥さん……いい加減してほしいってのはこっちのセリフですよ。」
香苗
「……ぇ……」
中嶋
「困るんですよねぇ、毎日毎日、僕のプライバシーを侵害するような事をしてもらっちゃ。」
香苗
「……ぇ……ぁ……」
突然言われた中嶋からのその言葉に、香苗は言葉を失った。
まるで心臓を鷲掴みされてしまったかのように、香苗はその場で固まっている。
中嶋
「ねぇ?そうでしょう?奥さん。」
香苗
「……な……何を……」
まるで容疑者にでもなってしまった自分が中嶋に尋問されているような気分。
中嶋
「ハハッ!何をって事ないでしょ奥さん。知ってるんですよ、俺は……へへ……まぁとりあえずここに座ってくださいよ。」
香苗
「……。」
自信満々、余裕たっぷりの中嶋が言っている事が何を指しているのか、香苗には容易に想像できた。
もちろん、昼間のあの事を言っているのだろう。
やはり知られてしまっていたのだ。
昼からずっと、そうでない事を願っていた。しかし現実はやはり違っていた。
香苗は信じたくなかった。今のこの厳しい現状を。
夢なら覚めて!と、香苗は心の中で何度も叫んだ。
中嶋
「大丈夫ですよ奥さん、ほら、まずは一杯飲んで、心を落ち着かせましょう。」
不安げな表情で、言われるがままに中嶋から差し出された缶ビールを受け取り、ソファにゆっくりと腰を下ろす香苗。
香苗 「……。」
中嶋
「ほら、飲んでください。話はそれからです。」
香苗 「……。」
香苗は無言のまま、中嶋に言われた通りにビールに口を付けた。
ほろ苦い味とさわやかな炭酸が喉を通る。そしてアルコールにそれ程強くない香苗の身体は、ビールが通った部分がアルコールに反応して熱くなっていくのを感じた。
中嶋
「遠慮せずにどんどん飲んでくださいね。」
中嶋はそう言いながら近づいてきて、香苗が座っているすぐ横に再び腰を下ろす。
中嶋
「でもよかったですねぇ奥さん、ちょうど旦那さんが出張で。俺もあの事を旦那さんに言うのはちょっと気が引けますから。」
香苗
「……。」
依然、無言のままの香苗の頭の中には、祐二の姿が思い浮かんでいた。
……祐二……助けて……
そんな思いを抱く一方、中嶋が言っているのがあの事であるならば、祐二には絶対に知られたくないという気持ちも当然香苗にはあった。
中嶋
「奥さんも知られたくないでしょう?旦那さんには。」
香苗
「……中嶋さん……」
中嶋
「あの事は、今夜俺達だけで解決しましょう。それでいいですよね?」
そして中嶋はそう言いながらゆっくりと手を伸ばし、その大きな手で香苗の太腿辺りをそっと触った。
コメント
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返信ありがとうございます。
覚えて下さっていてうれしかったです。
でも…名前…美じゃなくて実なんです。よく間違えられるんですが、ユーミンと同じなのでよろしくです♪
今夜もメンメンさんに焦らされました。
明日は絶対すごいの期待してます♪
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由実さん返事遅くなってごめんなさい。しかもお名前まで間違えてたなんて……申し訳ないです。
しかも今44話を更新したんですけど、また由実さんを焦らしてしまうような感じです(苦笑)
香苗はじっくり責めていきます……でもあんまり焦らし過ぎも良くないですよね。
なるべくテンポ良くいきたいと思います。