失神に近い状態だった。
目を閉じた暗闇の中でも、アクメを迎えて頭の中が真っ白になった時の残像がチカチカと光っている。
身体も絶頂からの長引く余韻に、痙攣がなかなか治まらない。
そんな状態から香苗が薄っすらと目を開き、意識を取り戻したのは性交が終わってから5分後の事だった。
香苗
「……ん……」
中嶋
「……お、やっと起きましたか?」
ベッドに横たわったままその声が聞こえた方に目を向けると、そこには裸のまま同じベッドの上に座る中嶋の姿があった。
一瞬だけなぜ中嶋が、しかも裸でこのベッドに座っているのか理解できなかった香苗だったが、すぐに自分がこの中嶋と何をしてしまったのかを思い出す。
しかしまだそのしてしまった事への後悔や罪悪感を感じれる程、香苗の頭の中は思考力を取り戻していない。
そして少し身体を起こそうとした時、香苗はお腹の辺りの肌に違和感を感じた。
見るとそこにはドロリとした白濁液大量に付着していた。
香苗
「……イヤ……これ……」
鼻をつくような濃厚な臭い。男の臭いだ。
すぐにこれが男性の精液であると認識した香苗だったが、その量の多さには驚いていた。
夫・祐二とした時に、コンドームの中に入った精液は何度も見た事があるが、こんなにも多くなかった事は確か。それどころか、自分の肌に付着しているソレはその何倍もあるのではないかと思うくらいに多い。
中嶋
「あぁすみません、俺が拭きますよ。」
そう言って中嶋はウェットティッシュを手に取り、香苗のお腹に付着した精液を拭き取っていく。
中嶋
「どうですか?気分は。」
中嶋の問いに黙ったまま何も答えない香苗は、目線だけをチラチラと中嶋の股間へと向けていた。
そこには先程まで自分を何度も絶頂に導き、狂わせた男性器がある。
射精後の今はあの硬さを失っているようだったが、それでもやはり大きい。
見た目は恐ろしいほど凶悪でグロテスクな形をしているのに、なぜかそれに惹きつけられてしまう香苗の目線。
中嶋
「……ん?ハハッ、まだ奥さんもそっちの余力は残ってるみたいですね。」
香苗
「……ぇ?」
中嶋
「俺も1日3回か4回は出さないと満足できないんですよ。」
精液を拭き取ったティッシュを近くにあったゴミ箱へ投げ捨てると、中嶋はベッドの上を移動して、香苗顔に自分の腰を近づけた。
中嶋
「今度は奥さんの方からしてみてくれませんか。」
香苗
「してみてって言われても……」
中嶋
「奥さんも男のここを喜ばせる方法くらい知ってるでしょ?」
目の前にある半立ちになった中嶋のペニスを見つめる香苗。
香苗
「……。」
中嶋
「分かりますよ。奥さんの目がこれを舐めたいって言ってるのが。」
香苗
「……そ、そんな事……。」
顔を赤くして動揺する香苗の反応は、中嶋の指摘が当たっている事を示していた。
フェラチオはした事はあるが、正直祐二との時は自分から積極的にする程、口でするのは好きではなかったし、祐二もそんなに口でされるのは好きではないようだったので、滅多にする事はなかった。
しかしなぜだろう、今目の前にある中島の男性器を見ていると、それを口に含んでみたいという気持ちが胸の奥から込み上げてくる。
こんな気持ちは初めてだった。
女性としての本能……なのだろうか。
無意識の内に生唾をゴクッと喉を動かして飲んでしまう。
中嶋
「ほら……舌を出して。」
香苗
「……。」
中嶋にそう言われて、香苗は自分からペニスに口を近づけていく。
特に何も考える事はなく、身体は勝手に動いた。
ただ目の前にあるモノを口で味わいたい。それだけだった。
そこに顔を近づけると、先程匂った精液と同じ臭いを感じた。それに中嶋の体臭のようのものも。
呼吸をすると、その2つが混じった臭いが肺の中にまでスーッと入っていくる。
頭がクラクラする程濃い臭い。だけど不思議と不快な感じがしない。寧ろもっとその臭いを嗅いでみたいとさえ思えてしまう。
刺激的な臭いで脳が麻痺する感覚が、なんだか心地良いような気がしてきた。
匂いは人の記憶に残りやすい。夫・祐二とは違う男の匂いが、香苗の頭の中に刻み込まれていく。
香苗
「……ん……」
中嶋に言われたとおり、ゆっくりと舌を出してペニスの先端、亀頭部分を舐め始める香苗。
舌から感じる少し塩分のある味。その味を感じた瞬間に香苗の口の中からはジワァっと唾液が分泌される。
そして同時に香苗の身体は新たな熱を帯び始めていた。
あれだけ沢山感じた後だというのに、また……。
快感の余韻でまだ身体に力は戻ってきていない。だが疲労感もあまり無い。
再び熱くなる身体は、まだまだ快感を感じたいのだと言っているようだった。
こんなにも身体の奥から性欲が溢れてくるなんて、香苗は自分でも少し驚いていた。
それもやはり、この中嶋という男の存在の所為なのだろうか。
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