官能小説 人妻 吉井香苗(8)

皿に盛られた香苗の手料理が、中嶋の口の中に勢い良く豪快に運ばれていく。
見ていて気持ち良いくらいの食べっぷりだ。

中嶋 
「ん~美味い美味い、いやぁ美人で料理もできる奥さんって最高ですね、完璧じゃないですか。」

香苗 
「フフッそんな事ないですけど、でも作った甲斐があります。これだけ美味しそうに食べてもらえると。」

中嶋 
「恭子には絶対こんなの作れないよなぁ。」

恭子 
「もぅ……どうせ私は料理が下手ですよ。」

普段は真面目でスキの無さそうな恭子が中嶋にからかわれ嬉しそうにしている。
恭子は恋人の前では意外と甘えたがり屋さんなのかもしれないと香苗は思った。

その日、中嶋が話し上手だった事もあり、3人の食事会は大いに盛り上がった。
恭子が用意した美味しいお酒もよく進んだ。
夫の祐二がアルコールが苦手だった事もあって、普段はあまり飲むことのなかった香苗も、今日は頬をピンク色の染めながらお酒を楽しんでいる。

食事を終えた後も話題は途切れる事がなく、3人はダイニングからリビングへと移動し、ソファでお酒を口にしながら色々な話をしていた。

中嶋 
「あの時は若かったからなぁ、今はあんな事はできねぇわ。」

香苗 
「へぇ~随分無茶してたんですねぇ。」

恭子 
「フフッどこまで本当の事やら、私はこの話もう何回も英治から聞かされてるんですよ。」

中嶋の学生時代の武勇伝的な話や、趣味の話。
調子よく中嶋が話して女性2人はそれを聞く。

おしゃべりな中嶋相手にしばらくそんな一方的な状態が続いていたが、香苗がふと思った事を何気なしに中嶋に質問した。

香苗 
「フフフッ、中島さんって面白いですね。……あ、そういえば中嶋さんってお仕事は何されているんですか?」

こんな質問、大人同士が知り合ったなら当然のように聞かれる事だ。
だから香苗は何に気を使う事もなく、ごく当たり前のように、自然にそれを中嶋に聞いた。

しかし香苗のその言葉を聞いた瞬間、今まで快調に動いていた中嶋の口は急にその動きを鈍くさせる。

中嶋 
「え……?あぁ仕事?仕事ねぇ……」

香苗 
「……?」

中島の何か言い渋っているような様子に、香苗はもしかして聞いてはいけない事を聞いてしまったのかと思った。
もしかして世間では言いにくいような仕事をしているのかと。

中嶋 
「仕事はねぇ……一応トレーダーやってますよ。」

香苗 
「……トレーダー?」

中嶋 
「えぇ、株の。」

香苗 
「あ、え~っと……どこかの企業の資金運用とか……。」

中嶋 
「いえ違います、個人でやっているんですよ。」

香苗 
「個人……へぇ、そうなんですか……。」

それ以上香苗が質問を繰り返す事はなかった。

何かこれ以上聞いてはいけないように香苗には感じたからだ。

……個人で株のトレーダー……株で生活してるって事なのかしら……

恭子 
「フフッあんまりいないですよね、こんな人。……私、ちょっとお手洗い行ってきますね。」

香苗 
「え?あ、うん。」

恭子が席を外し、今日初対面の2人だけになったリビングに、ほんの数秒間沈黙の時間が流れる。

少し空気が重い。

先程まで楽しく話していたのに、仕事の事を聞いたために若干気まずくなってしまったかと思った香苗は何を話したら良いのか分からなく、頭の中で懸命に別の話題を考えていた。

しかし先に沈黙を破ったのはやはり中嶋だった。

中嶋 
「そういえば旦那さん、今日は土曜日なのに仕事って、いつもそんなに忙しいですか?」

香苗 
「えぇ、最近は忙しくしてますねぇ、でも恭子さん程じゃないと思うけど。」

中嶋 
「帰りも遅い?」

香苗 
「ぇ……?えぇ、割かしそういう日が多いですね。」

何か探るような中嶋の聞き方に少し違和感を感じながらも、香苗はお酒の入ったグラスを片手に質問に答えた。

中嶋 
「じゃあ寂しいんじゃないですかぁ?いつも1人で旦那さんを待っているのは。」

香苗 
「ん~そういう時もあるけど、もう馴れましたね。」

中嶋 
「へぇ~そうですかぁ……でも、旦那さんが忙しいとまだまだお若い奥さんは色々と大変でしょう?」

香苗 
「……え?大変?それってどういう……」

ニヤニヤと笑みを浮かべながらそう聞いてきた中嶋だったが、香苗はその質問の意味も意図よく分からないでいた。
ただ、急に変った顔、中嶋のそのネットリとした笑みが、今日これまで中嶋が香苗に見せていなかった表情である事だけは分かった。恭子が居た時とはまるで別人のような表情だ。

中嶋 
「ほら、色々と溜まるものもあるでしょう?奥さんくらいの女性なら特に。」

香苗 
「え?」

中嶋 
「忙しくても、そっちの方はちゃんと旦那さんに解消してもらっているんですか?」

香苗 
「ぇ……え?……あの……」

そう言われてやっと中嶋が聞いてきている事の意味が大体分かった香苗。
いや、しかしそんな事は常識的にとても今日初対面の相手に、それも異性に聞くことではない。

なんにしろ、そんな事を他人から言われた事のなかった香苗は、中嶋からの急な質問に動揺していた。

コメント

  1. MA より:

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    すごくワクワクしてます^^
    まだ始まったばかりですけど、このタイプのストーリー好きです、
    ゆっくりでもいいのでがんばってください★

  2. メンメン より:

    SECRET: 0
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    コメント・応援ありがとうございます。

    今回は官能小説の王道みたいなのを書きたいなぁと思って書いてます。
    ご期待に添えるように頑張ります!

    更新ペースはなんとか取り戻せそうな感じはしますから、この調子いけたらいいなぁと思います。

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