早朝、菜穂は家族のために1人早起きして朝食を作り、夫のネクタイやカッターシャツを用意する。
そして夫と子供達を起こし、家族皆で一緒に朝食を食べる。
「ほら、お腹空いてなくても朝ごはんはしっかり食べなきゃ駄目よ。一日のエネルギーになるんだから。」
食卓の席に座ってもまだ眠そうな子供達。
でも夜は、まだ夫の帰りが遅い日が多い事もあって、一緒に食べられないから、一日の内で一家団欒を楽しめるのは、この朝食の時だけなのだ。
そして時間になれば、まずは最初に仕事に向かう夫の智明を見送る。
「今日もちょっと遅くなるかも。」
「うん、ご飯用意して待ってるから。」
「あぁ、じゃあ菜穂、行ってくるよ。」
「いってらっしゃい、気を付けてね。」
夫を送った次は、小学校に上がったばかりの長男だ。
「忘れも物ない?昨日やった宿題ちゃんとカバンに入れた?」
「うん。」
下に弟ができて、最近は兄としての自覚も芽生えてきたのか、長男は随分としっかりしてきた。
「じゃあ車に気を付けてね。」
「うん、行ってきまーす。」
「いってらっしゃい。」
そして最後は幼稚園に通っている次男。
送迎バスが来るまで2人で家の前で待つ。
次男はまだ甘えん坊さんだから、家から出る時よく母親の菜穂から離れたくないと言って泣いてしまうのだが、今日はそんな事はなかった。なんでも最近幼稚園でとても仲の良い友達ができたのだとか。
「お母さん行ってきまーす!」
「フフッ、いってらしゃーい!」
バスに乗った次男に笑顔で手を振る菜穂。
少しずつだが、子供達の成長を感じて菜穂は微笑ましかった。
こういう毎日の小さな発見、子供達の成長、元気に仕事に向かう夫の姿を見る事が、菜穂にとっての幸せ。
その幸せさえあれば、他には何もいらないはず。
そう、そのはずなのに……。
家族を見送った後は、洗濯と掃除に、夜ご飯のための買い出し。
それが終われば、幼稚園から次男が帰ってくるまでは1人の時間ができる。
パートタイムの仕事は智明に
「もう今の給料なら菜穂が働く必要はないよ、2年間頑張ってくれたし、今は少しでもゆっくりする時間作ったら?」
と言われ、その言葉に甘えて先日辞めてきた。
優しい夫に感謝しながら、午後の静かな時間を過ごす菜穂。
リビングのソファに座って、テレビをつける。
「……。」
しかし番組の内容が全く頭に入ってこなくて、すぐにテレビは消してしまった。
落ち着かない。
どこか心が休まらない。
なんだかモヤモヤする。
社員旅行から一週間以上が経っていたが、菜穂の頭からあの忌まわしき記憶は消えてはいなかった。
そして一人の時間になるといつも思い出してしまう、あの男の声。
〝今日は奥さんのオマンコに私のチンポの形をしっかり覚えてもらいますから、覚悟しておいてくださいよ〟
〝自分に正直に生きないと辛いだけですよ。毎日でも欲しがりそうなこんなイヤらしい身体を持っているのに、セックス無しの生活なんてありえないでしょう〟
〝あっああっ!ハァンッ!それ…んぁ!ダメェッ!あっあっあんっあんっ!ハァッ!〟
〝このくらい激しい方が好きでしょう奥さん!〟
――……ダメッ!――
菜穂はハッとして我に返った。
あんな事、早く忘れたいのに、忘れなきゃいけないのに。どうして忘れられないの。
嫌な思い出のはずなのに、どうしてまた、身体が……。
〝奥さん、これを挿れてほしいですか?セックスしたいですか?〟
〝どうですか奥さん、久しぶりのチンポは、気持ち良いでしょう?〟
――ああ、また……どうして頭の中に勝手にあの人の声が……――
「ハァ……もうダメ……!」
我慢できない。
菜穂はソファから立ち上がり、リビングのカーテンを全て閉めた。
そして菜穂はスカートの中に手を入れると、下着のパンツを下げた。
「ああ、こんなに……」
愛液が糸を引くほど下着のクロッチ部分がグッチョリと濡れている。
身体が疼いて疼いて仕方なかった。
ソファに座り直し、脚をM字に開いて、すぐに自らの手でアソコを弄りだす菜穂。
「ン……はァ……」
まだクリトリスがヒリヒリする。
バスで3時間もの間天野に責められ続けた場所。
でも今でもここが赤く腫れてしまっているのは、それだけのせいではない。
あれから毎日のように、菜穂が自分でここを刺激していたからだ。
痛いのに、その痛さが気持ち良くて、止められない。
そして膣の方にも菜穂は指を挿入する。
指はなんと3本も。根本まで全て入れる。
クチュクチュ……
しかし菜穂の指は天野の指のように長くはないから、あの奥の快感スポットには全く届かない。
だから菜穂は同時にクリトリスを強めに刺激して快感を得ることしかできなかった。
そして頭の中で想像するのは、やはり天野とのセックスと、そしてバスの中でのあの運転手の視線や社員達からの視線だった。
「ああ、ンッ……はァ、見られてる……見られてるのに……私……ハァ……」
ソファの上で大胆に股を開き、激しいオナニーをする菜穂。
普段の菜穂からは想像できない程卑猥な姿だ。
駄目だと思っていても止められない。毎日してしまう。
しかし、勝手に身体から溢れ出てきてしまう性欲を処理をするためには、この昼間の1人だけの時間が、今の菜穂にはどうしても必要だった。
今はこうやってガス抜きをして、いつか性欲が治まってくれるのを待つしかない。
夫とするのとは違う、全く別次元のセックスで知ってしまったあの快楽を忘れるために。
こんな事は誰にも相談できない。だから自分でなんとか処理するしかなかったのだ。
だがその日、菜穂が1人の時間を過ごしている家に一歩ずつ近づいてくる男がいた。
「ここだな……。」
そしてその男は家の門の前で立ち止まると、インターホンの呼び出しボタンを押した。
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