官能小説 喰われる人妻 菜穂(32)

突然インターホンの音が鳴り、菜穂は自慰行為をしていた手を止めた。


「ハァ……ぇ、誰かしら……。」

ソファから立ち上がり、下着のパンツを慌てて穿き直す。

そして菜穂は、インターホンのモニターを確認した。


「はい、どちら様でしょうか……あっ」

『菜穂ちゃん?近藤です。』


「こ、近藤さん!?ちょっと待っててください、今行きます。」

こんな平日の昼間に突然訪ねてきた近藤に少し驚きながら、洗面台の鏡で身なりをチェックする菜穂。

――やだ……顔が赤くなっちゃってる――

先程までオナニーをしていたせで、顔が火照ってしまっていた。

菜穂は手で顔を扇いだり、少し乱れていた髪を整えたりした後、玄関へ向かった。


「やぁ、突然ごめんよ菜穂ちゃん。」


「いえそんな、近藤さん、先日は主人の事で色々と助けて頂いて、本当にありがとうございました。今週末にでも智明と2人でお礼のご挨拶に伺おうと思っていたのですが……」

菜穂は近藤の顔を見るなり、すぐに頭を深く下げた。

菜穂や智明にとって、今や近藤は大切な恩人なのだ。近藤がいなければ、智明の正社員採用はなかった。


「ああいや、ハハッ、そんな気なんて使わなくていいよ。それより今日は実はまた菜穂ちゃんにお願いしたい事があって来たんだよ。その事でちょっと話がしたいんだけど今いいかな?」


「お願いしたい事……?あ、どうぞ、上がってください。」


「悪いね。」

菜穂は閉めきっていたカーテンを開けて、近藤をリビングへ案内した。


「それにしても良い家だなぁ、ローン組んだんだよね?」


「はい、そうです。」


「凄いよなぁ小溝は、しっかり家庭を持って、今やこの立派な家の大黒柱って訳か。そりゃあれだけ必死にもなるわな。」

近藤はリビングから2階へ吹き抜けになっている高い天井を見上げながら、感慨深げにそう言った。


「近藤さん、お飲物どうされます?お茶かコーヒーか、紅茶もありますけど。」


「あぁ、じゃあコーヒーで。ごめんよ、気を使わせちゃって。」


「いえいえ。」


「あれ?子供さんは?確か2人いたよね。今何歳だっけ?」


「上の子は7歳で小学1年生、下の子は4歳で今幼稚園に通ってます。」


「へぇ、もう小学生なのか、早いもんだね。少し前に小溝と菜穂ちゃんの結婚式があったばかりだと思っていたのに。」


「フフッ、本当ですよね、時が経つのってあっという間で。」

菜穂は近藤にコーヒーを出すと、ソファに腰掛けた。


「あの、近藤さん、それで私にお願いしたい事って……。」


「あ~そうそう、小溝から聞いたんだけど菜穂ちゃんパートの仕事辞めたって本当?」


「はい。」


「じゃあ今は専業主婦なんだ?」


「そうですね、先週から。」


「じゃあ丁度良かった。実はある事を天野部長に頼まれてさ。」


「天野部長に、ですか……?」

天野の名前を聞いた瞬間に、菜穂は不安そうな表情になる。

そして近藤はそんな菜穂を見ると、ニヤっと笑みを浮かべてこう話し始めた。


「そう。天野部長がさ、菜穂ちゃんに部長専属の秘書になってほしいって言ってるんだよ。」


「えっ、秘書ですか……?」


「もちろん秘書と言っても正社員のようにバリバリ仕事をする訳じゃないよ、時間的にはパートタイムの仕事と同じで遅くても夕方くらいまで。出勤はそうだなぁ、たぶん週に2日か3日くらいでいいと思うんだけど。どう?」


「どうって言われても……」

天野部長の専属秘書なんて、菜穂は嫌な予感しかしなかった。


「これは凄く良い話だと思うよ、給料もその辺でパートで働くのとは比べ物にならないし、たぶん3倍か4倍は出るんじゃないかなぁ。いや、菜穂ちゃんの頑張り次第ではきっともっと貰えると思うよ。」


「3倍か4倍……そんなに……」


「そっ、良い話だろ?よし!じゃあ決まりだな!」


「えっ!?」


「実は今日はもう契約書も持ってきたんだ、それにささっとサインしてくれればいいからさ。印鑑持ってきてくれる?」


「印鑑って……ちょ、ちょっと待ってください、あの……私はまだ……」


「大丈夫だよ、怪しい契約書なんかじゃないから。」


「そ、そうじゃなくて……」


「いいから早く持ってきな。」

突然近藤に契約書を出され、印鑑まで要求された菜穂は当然慌てた。


「こ、近藤さん、そんな急に言われても……私……」

当たり前だ。こんな急な話で契約書にサインなんてできる訳がない。しかもあの天野の秘書なんて。

しかしそんな菜穂に対して、近藤は表情を一変させてこう言い放った。


「菜穂ちゃん、君と小溝のために言うが、断らない方がいいぞ。」

先程まで笑顔を見せながら穏やかに会話をしていた近藤の目つきが、人が変わったように鋭くなった。

背筋にゾクゾクと寒気が走る。

――何……?さっきまでの近藤さんとはまるで別人……――

態度を急変させてきたそんな近藤に、菜穂は恐ろしささえ感じた。


「天野部長の言う事には逆らわない方がいいって、この前言っただろ?」


「近藤さん……」


「正社員として採用されたと言っても、天野部長の気が変わってしまえば、小溝の首なんてすぐに切られる事だってありえるんだよ。あの人はそういう力を社内で持ってる。言ってる事分かるだろ?」


「そ、そんな……」


「だから君に選択の余地なんて無いんだよ。その天野部長に秘書になって欲しいと言われたんだから、素直に秘書になればいいんだよ。さぁ、印鑑持ってきて。」

近藤が菜穂に対してしてきているのは、完全に脅迫だった。

しかし、だからと言って簡単にそれを受け入れる事なんてできない。


「ま、待ってください近藤さん、せめて夫に相談させてください。秘書と言われても、仕事の内容もまだよく分からないですし……。」


「小溝に相談?そんな事する必要ないよ。それに菜穂ちゃんさ、仕事の内容も本当はもう分かっているんだろう?」


「……もう、分かってる……?」


「この前の社員旅行でも、天野部長に随分と良い働きっぷりを見せたそうじゃないか。だから智明は本採用された。そうだろう?」


「ぇ……」

――うそ……近藤さん…もしかしてこの人……――


「まだ分からない?」

そう言って近藤は席を移動し、菜穂の横に座って身体を近づけてきた。


「だったら、今ここで俺がどんな仕事かを教えてやるよ。」



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