「わっ!斎藤君それ具を乗せ過ぎ!」
「いいじゃないですか、これめっちゃ美味しそうですよ。」
「欲張り過ぎだよぉ、そんなに乗せてちゃんと焼けるかなぁ。」
「大丈夫ですよ、これでやってみましょうよ。」
「失敗しても責任もって食べてよね。」
斎藤君が作った具沢山のピザをオーブンに入れて、2人でオーブンを覗き込みながらワーキャー言って、まるで恋人同士のようにはしゃいでいます。
私はそんな映像を瞬き一つせず、無表情で眺めていました。
ピザが出来上がり、食事の準備ができた頃、優子はなかなか帰って来ない私の事が気になるのか、頻りに時計を見ていました。
「今井さん遅いですね。」
「うん……せっかくフミ君の大好物のピザを作ったのに……」
優子はがっかりしたようにそう言いました。
「優子さん、ピザ冷めちゃいますよ。」
「……うん、そうだね……じゃあ先に食べちゃおうか。」
私は画面に映る優子を見て、先に夫婦の絆を裏切っているのは私の方なのだと、改めて自覚しました。
確かに優子は斎藤君に対して友人以上の感情を抱いていたのかもしれない。
それでも優子はこの日、私とピザを食べるつもりでいた。浮気なんてするつもりはなかったと思います。
しかし私はそんな優子を裏切り、騙して、斎藤君と2人きりにした。
悪いのは私なんです。どう考えても。
これからこの映像の中で始まる事は、言わば私への罰です。私はその罰を受け入れなければいけない。
「うわっ!ウマッ!優子さんこれ本当に美味しいですよ!」
「斎藤君が作ったピザも上手に焼けたね。」
「やっぱ生地が美味しいですねこれは、さすが優子さん。」
「ウフフ、ありがと。」
「これいくらでも食えちゃうわ、こっちのも食べていいですか?」
「相変わらず斎藤君は食べっぷりいいね。そっちのも食べていいけど、フミ君の分だけは残しておいてね。」
「今井さんも早く帰って来ないですかねぇ、こんなに美味しいのに。」
「ね、今日はピザ作って待ってるって言ったのになぁ……」
「じゃあ電話してみましょうか。早く帰ってきてって言えばいいじゃないですか。」
「え、いいよ、まだお仕事中だろうし。」
「俺は職場の状況は大体分かってますから、電話くらい大丈夫ですよ。」
そう言って斎藤君は携帯を取り出し私に電話を掛けました。
「あ、もしもし今井さん?斎藤です、今優子さん隣にいるんですけど、何時ごろ帰って来れますかね?
今井さんが早く帰って来ないから優子さんが怒ってるんですよ、もう俺の手に負えなくて。ずっと機嫌悪いんですよ。」
私の嫉妬心が煽られた、あの時の電話です。
「えっ!?怒ってないよぉ!もぉ、怒ってないってば~」
優子がそう言って斎藤君から無理矢理携帯を取り上げます。その時に優子が斎藤君の身体に抱き付くような格好になっていたのが、私の胸にグッときました。
電話で音声だけを聞くのと、こうやって映像で見るのとでは全然違いました。映像の方がもっときついです。
「もしもしフミ君?私怒ってないからね。斎藤君が酔っ払って変な事ばかり言うの。」
優子は困ったような口調で電話越しに私に話していましたが、表情はずっと笑顔でした。
そして私がまだ帰れない事を伝え、斎藤君がその日も家に泊まっていくという事を確認すると、最後に優子が
『うん、お仕事頑張ってね、遅くなってもちゃんと待ってるからね。』
と言って電話を切りました。
「今井さんはまだ仕事終わらないって?」
「うん、まだ掛かりそうだって……仕方ないよね、お仕事なんだもん。」
斎藤君に聞かれ、優子はため息混じりで残念そうにしていました。
するとそんな優子を見て、急に思い出したかのように斎藤君は声を上げました。
「あ!そうだ!俺ワイン持ってきたんですよ。」
「ワイン?」
「そう、美味しいワインだから、今から一緒に飲みましょうよ。」
そう言って持ってきたバックからワインの瓶を取出す斎藤君。
「でも……」
しかし優子は酒を飲むことを少し躊躇しているようでした。おそらく前回斎藤君とキスをしてしまった時も酒が入って酔っていたから、それを気にしているのでしょう。
「飲みましょうよ、焼き立てのピザと一緒に飲む方が美味しいですよ、きっと。」
斎藤君にそう言われ優子は結局少し考えた後、
「う~ん……じゃあちょっとだけ飲んじゃおうかな」
と答えました。
「グラス持ってくるね。」
優子がグラスを持ってくると、2人は嬉しそうに乾杯して食事を再開させました。
そしてそこからはまた2人の世界に。
ピザを摘まみながらアルコール度数の高いワインを飲んで、会話は盛り上がっていました。
コメント
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ところどころ伏せ字になってるのは、FC2 のコンプライアンス的なやつなんですかね? 読み返しながら気づいたんですが、以前は伏せてなかったですよね
明らかに窃視にあたるようなものは仕方ないかもですが、オーブンの中を見るような場合まで伏せないといけないとなると表現の幅にも響いてきますし、厄介ですね 笑
あ、これは苦情ではないです。ただ、たいへんだなぁ、と 😅
優子の完結、楽しみにしてます!
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コメントありがとうございます。
そうですね、今はどうか分かりませんが、一時期新たな記事は伏せ字にしないとBANとかあったので、そうしています。