居候と人妻 真弓(25)

〝セックスしたいです〟

拓実の直球ストレートど真ん中の言葉に、真弓の胸がキュンと締め付けられる。

そしてそれと同時に、ドキドキが止まらなくなる。

その言葉をずっと期待していたのだと、身体の反応が証明している。

でも、すぐにOKしてしまうのは面白くない。

オドオドした拓実が見たくて〝セックスしたいです〟の言葉に黙り込んでみる真弓。


「……」


「……」

2人の間に数秒間沈黙が流れて、その沈黙に耐えられなくなったのか、拓実が堪らず謝った。


「……あ、す、すみません!さすがにそれはダメですよね……」


「……そうだよ…ダメに決まってるじゃん。」


「……で、ですよね……。」

真弓の返事に肩を落としてガッカリする拓実。

〝何でもしてあげる〟という真弓の言葉を信じて、恥ずかしくても思い切って自分の願望を口にしたのに、断られたらガッカリしてしまうのは当然だ。

〝ここに投げればストライクだよ〟と言われてその通りに投げたら〝ボール!〟と言われてしまったようなもの。

でも真弓は、しょんぼりしているその拓実の表情が面白くてクスクス笑ってしまう。

それを見て拓実は頭の上に?を作っていた。


「……真弓さん……?」


「うふふ。……ねぇ拓実君、そんなにエッチしたいの?」

そう言って隣に座っていた拓実の手を触る真弓。


「え……」


「そんなに私とエッチがしたいの?」


「……はい……それはもう……」


「正直だね。」


「だって真弓さんが言ってって言うから……」


「うふふ、ごめんごめん、冗談だよ。……うん、いいよ。」


「え……いいよって……それはどういう……」


「してもいいよ、エッチ。」


「……ほ、ホントですか!?」


「だって何でもしてあげるって約束したし、今日は拓実君の誕生日だし。拓実君、した事ないんでしょ?」


「はい……ないです。」


「でもさ、いいの?私が初めての相手になっちゃっても。」


「え……いや、俺は寧ろ真弓さんが……いいんです。真弓さんとしたいんです。」

拓実の真っ直ぐな言葉に、逆に顔を真っ赤にしてしまう真弓。


「も、もぉ……拓実君ってホントに年上が好きなんだね。」


「年上かどうかっていうより、俺は真弓さんの事が……」


「わ、わかった!それ以上言わないで!恥ずかしいから。」


「す、すみません……」

恥ずかしい。でも顔は感情を隠せなくてニコニコしてしまう。


「……でも、嬉しいかも。拓実君がそう想ってくれて。」


「真弓さん……」


「……じゃあさ、私も嬉しいし、さっそく今からしちゃう?」


「本当にいいんですか?」


「うん、エッチしよ。」

真弓の〝エッチしよ〟で、一気にテンションが上がる拓実。

言った真弓も恥ずかしさでさらに顔が赤くなる。

恥ずかしいのと嬉しいので、顔を見合わせて笑ってしまう2人。


「わぁでもどうしよう、ドキドキするね?」


「俺も凄く興奮してきました。まさか本当に真弓さんとセックスできるなんて。」


「うん、私も拓実君とエッチするなんてちょっと信じられない。ねぇ拓実君、エッチの仕方分かってる?」


「仕方ですか……まぁ大体は知ってるつもりなんですけど。」


「こういう場合って私がリードするんだよね?」


「そ、そうなんですかね……そうして貰えたら俺としてはありがたいかもしれません。」


「でもさ、拓実君も初めてだろうけど、私も男の人をリードしながらするのなんて初めてだからね。上手くできるか分からないけど、いい?」


「はい、俺はもう、真弓さんとできるだけで嬉しいので。」

こういう場合、恋人同士なら自然な流れでセックスを始める事ができるのだろうけど、真弓と拓実の場合は違う。

例えるなら〝拓実の脱童貞式〟とでも言うのか。

拓実にとって記念すべき日だから、ちゃんとしてあげないといけない、という妙な責任のようなものを感じてしまう真弓。

だからどうしても頭の中で段取りを考えてしまう。


「……ん~っと、どうしようか……じゃあいつも通り、拓実君がまず脱いじゃおうか。」


「あ、はい、全部ですか?」


「うん。」

まるで健康診断でも始まりそうなやり取りをして、拓実が衣服を脱いでいく。

最近は毎晩のように拓実が全裸になって手コキをしていたので、ここまでは気が楽。

でも拓実が衣服を全て脱いだところで、真弓は大事な事を思い出した。


「あ、どうしよう!私間違えたかも。」


「え、どうしたんですか?」


「普通さ、服脱ぐ前にキスするよね?」


「え、そ、そうなんですか。」


「え~だって、普通エッチする時ってキスするでしょ?キス大事じゃん。」


「……ていうか俺、キスしてもいいんですか?真弓さんと。」


「……いいよ……あ、そっか、拓実君はキスもした事ないんだよね?」


「はい。」


「じゃあ、する?」


「いいですか?」


「うん、キスしよ。あ、ねぇ、じゃあここに座って。」


「あ、はい。」

拓実を再び隣に座らせた真弓は、拓実と向かい合った。


「わぁ、緊張するね?ていうかファーストキス……だよね?私でいいの?」


「はい、それはもう。真弓さんがいいです。」


「じゃあ、どうしようかな。私からした方がいい?拓実君からしたい?普通は男の人からだよね。」


「そ、そうですよね……でも俺、上手くできるか分かりませんけど。」


「ん~じゃあ、やっぱり私からしてあげよっか?」


「いいですか?」


「うん、じゃあ……目を閉じて。」


「はい。」

と、自分から言ったものの、目を閉じた拓実の顔の前でソワソワする真弓。


「わぁどうしよう、やっぱり緊張するよぉ~。ちょっと待っててね、拓実君。」

そう言って、真弓は自分を落ち着かせるために1つ深呼吸をした。


「ふぅ……じゃあ、するね。」

そして覚悟を決めてそう言うと、真弓は拓実に唇を近づけていった。

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