真弓は今朝開けたばかりの寝室のカーテンを閉め、薄暗くなった寝室で身体に巻いていたバスタオルを取って裸になった。
そしてそのままベッドに上がり寝転がり、ゆっくりと目を閉じる。
「はァ……」
裸の素肌に空気が触れる感覚が、真弓に過去のセックスを思い起こさせる。
まだ正人が向こうに行ってからそんなに経っていないのに、もう人肌が恋しくなるなんて……こんなにムラムラしちゃうのって初めてかも……
「ん……」
男の人の大きな手を想像しながら、自分の手で素肌を撫でる。
そしてその手で、最近大きくなった豊かな乳房を触る。
柔かな感触。正人はいつも優しく愛撫してくれた。
「ン……ぁぁ……正人……」
指で軽く刺激しただけで、固く勃起する乳首。高まる興奮。
真弓はそのまま片方の手で乳房を触りつつ、もう片方の手を陰部へ持っていった。
クチュ…と熱い愛液が指に付着する。もうしっかり濡れている。
愛液で濡れた指先で、一番敏感な場所を刺激してみる。
「あ……」
やっぱりここは気持ちイイ。
指の腹でクリトリスを優しく撫でるように刺激しながら、その快感に夢中になっていく真弓。
「ン……ぁ……はァ……ぁ……」
しかし、ジーンと甘く熱い快感が全身に広がるのを味わいながらも、真弓はどこかそれに満足できずにいた。
気持ちは良いけど、ムラムラ感が全く消えない。スッキリしない。
なんだか、物足りない。
今まであまりオナニーをしてこなかったから上手くいかないのかもしれないけど、セックスと比べると、やっぱり物足りない。
真弓は自分1人で絶頂に達した事がなかった。
でも正人と週に一度くらいのペースでしていたセックスでは、過去に数回だけエクスタシーを経験した事がある。
あの時の気持ち良さと満たされる感覚。
真弓は以前まではそこまで性欲盛んという訳ではなかったし、セックスで絶頂に達する事ができなくても、正人に抱かれるだけで満足していた。
でも今はあの感覚を、エクスタシーを欲してしまう。そうすればきっとこのムラムラ感もスッキリさせる事ができると思うから。
自分1人では達する事ができないオナニーは、気持ち良いけど、もどかしい。でも止められない。
少し強めにクリトリスを刺激してみたり、細い指を膣の中に入れたりして試行錯誤してみたけれど、絶頂には程遠い感じ。
そんな風に快感を追い求めるようにして自慰行為を続けていたら、いつの間にか長い時間が過ぎてしまっていた。
「はぁ……」
不全感に思わずため息が漏れる。
結局絶頂に達する事ができずに、真弓はスッキリしないまま、しばらくの間ベッドの上でボーっとしていた。
今までこんなに欲求不満になった事なんてなかったから、ちょっと戸惑う。
しかも今は正人がいないから、どうしようもできないし。
「あ~もぉ……なんでこんな風になっちゃうんだろう……困ったなぁ。」
そしてふと時計に目をやると、もう昼食を用意しないといけない時間だった。
「……いけない、ご飯作らないと。」
モヤモヤとした気持ちを振り払うように頭を横に振った後、真弓はベッドから起き上がって服を着てから寝室を出た。
キッチンで火照った身体を冷ますためにミネラルウォーターを飲んで、気持ちを切り替える。
「よし、今日はチャーハンにしよう。」
エプロンを着けてやる気スイッチを入れて、手際よく材料を切っていく真弓。
身体の奥から沸き上がるこのムラムラ感を誤魔化す方法はこれしかない。他の事をして気を紛らわす。
やっぱり正人について行けば良かったかなぁと、少し思ったりもしたけれど、今更そんな事を考えても仕方ない。
真弓はささっとチャーハンと中華スープを作り上げて、拓実を呼んだ。
「拓実くーん!お昼ご飯出来たよぉ!」
拓実はいつも通り大盛りにしたけど、今日は真弓の分も大盛りだ。
なんだか三大欲求が盛んなのか、お腹もやたらと空く。
せめて食欲だけでも満たさなきゃ。
「やっぱ真弓さんが作るチャーハンは最高ですね。店より美味しいです。」
「うふふ、ありがと。」
「真弓さんも結構食べますね。」
「わるい?だってお腹空いちゃったんだもん。」
「いや、全然良いと思いますけど。」
「女の人がこんなに食べるの嫌?」
「そんな事ないですよ、俺はどっちかっていうと沢山食べる女性の方が……好きです。」
「じゃあ拓実君の前では遠慮しないで食べれるね。」
「もうすでに遠慮せずに食べてるじゃないですか。」
「あ、ホントだ、あはは。」
「早朝ランニングしてるからですかね?俺も最近食べても食べてもすぐお腹が空いちゃって。健康になり過ぎてるっていうか……」
「そうそう!やっぱり運動してるからだよね。私も最近健康過ぎて色々と大変で……」
「色々?大変って、何かあったんですか?」
「えっ?……ううん、なんでもない!えーっと……あ、拓実君、おかわりする?まだチャーハン沢山残ってるんだけど。」
「いいんですか?じゃあ、頂きます。」
危ない、拓実君に変な事言っちゃうとこだった。
ついさっきまでオナニーをしていた事を思い出して、なんだか急に拓実と話しているのが恥ずかしくなってしまった真弓。
やだ……こんなんじゃ駄目だ、私。
――はァ……欲求不満、早く治まってくれないかなぁ……――
そう願いながら拓実におかわりのチャーハンをよそう真弓であった。
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