「え~うそぉ……これじゃ私が真田さんに叱られてるみたい。フフッ、でも凄い偶然、スカートもストッキングを穿かなかったのも。愛美ちゃんと同じだなんて。」
志乃はその夜、更新されたページを読んで驚きつつも、偶然とはいえ自分と愛美の行動が一致してしまった事が可笑しくて笑ってしまった。
なんだか本当に自分が小説の世界に入ってしまったようで、さらにワクワクしてきてしまう。
――愛美ちゃん、次はちゃんと真田さんの命令通りにするんだよね……私はどうしようかな、でもそんなに短いスカートなんて持ってないし――
クローゼットを開けてしばらく考える志乃。
――あ、そういえばあのスカートがあったっけ――
志乃は最近はあまり選ばなくなっていたもう1つの色違いのプリーツスカートを引っ張り出した。
「これ、短くしちゃおうかな。」
そしてさらにクローゼットの奥に置いてあったミシンを取り出す。
母親が趣味で裁縫をやっていた影響で志乃も昔から裁縫が好きだった。
このミシンはまだ志乃が中学生だった頃に母親にプレゼントしてもらった物。
受験勉強や大学入学で忙しくて、もう1年以上裁縫はしていなかったのだが、もしかして使う事もあるかもしれないと引っ越してくる時に一応持ってきていたのだ。
「どのくらいの長さならミニって言えるのかなぁ、このくらいかな。」
志乃は裾から数センチ上の位置にマークをつけると、スカートをセットし、手際よくミシンを走らせ始めた。
―――
安本は翌朝も駅前に来ていた。
今日は手に仕事用のカメラも持ってきている。
タバコを吸いながら駅の南口周辺を見渡す安本。
――さて、わざわざ早起きして来てやったぞ……それにしても金を貰える訳でもないのにカメラなんて持って、俺ってつくづく馬鹿だよな――
妙な事にだけ行動力を発揮してしまう自分に呆れながらも、安本は昨日の女の子が現れるのを待っていた。
正直、期待はしていなかった。
まさか現実世界でそんな官能小説みたいな話がある訳がないと、この時点でも安本はそう思っていた。
半信半疑で、何もなければ今日もこの後パチンコに行くつもりだった。
しかしその場で待つこと20分、やはり昨日のは単なる偶然かと諦めかけたその時だった。
――……ん?おおっ!来た!来た来た!あれは昨日の女の子だよな!?――
昨日と同じように駅の南口に現れた女の子を見つけて一人興奮する安本。
しかもその女の子はなんと、昨日よりも丈の短いミニスカートに黒のパンストを穿いていたのだ。
まさに真田が愛美に出した命令通りの服装だ。
それに今日も晴天だというのに、また赤いハンカチを巻いた傘を持ってきている。
――おいおいマジかよ、偶然にしては出来過ぎだよな!?完全一致じゃないか!本当にあの子が愛美なのか?愛美は実在してて、それを貴子は小説にしてるって事なのか?――
安本は瞬時に女の子にカメラを向けて、こちらに気付かれないようにシャッターを切った。
――やっぱり可愛いよなぁあの子、真面目そうで優しそうな顔してるし。でももし昨日の命令通りにしてるなら、あの子のスカートとパンストの中はノーパンって事なんだよな?――
そんな事を想像すると、ついズボンの中の股間が反応してしまう。
あんな清純な顔をしておいて本性は露出狂の変態だなんて、にわかには信じ難い。ギャップがあり過ぎる。
――待てよ、もしあの子が愛美なら、どこかにそれを見に来てる真田もいるって事か?――
安本は周りを見渡してみる。
もちろん、真田の顔なんて知る訳もないのだから真田が近くに居たとしても分かるはずもないのだが。
そして女の子はこれも昨日と同じように10分程南口の前に立った後、駅の中へと入っていった。
――お、やっぱり今日も命令通り10分か……どうする……追いかけてみるか――
どうせ今日も他にやる事なんてないんだ。ここまで来たらあの子が何者なのか突きとめてやる。
そうして安本も女の子の後をつけて駅に入っていった。
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