「お、出て来たな。」
大学の外で待ち構えていた安本は、敷地から出て来た今朝の女の子を見つけると、尾行を再開した。
歩く女の子を後ろから見ていてすぐに女の子がパンストを穿いていない事に気付いた。
――たぶん大学で脱いで下着に履き替えたんだろうな。……それにしても美味そうな生脚だな――
ミニスカートから伸びた色白の細い素脚をイヤらしい目で見る安本。
――顔はまだ少し子供っぽい感じがするけど、結構エロい身体してるなぁ――
駅へと入ってまた電車に乗る女の子。
でもまだ帰る訳ではないようで、今朝の駅とは逆方向の電車だった。
そして二駅先で下車した女の子は、そこから数分歩いた所にあるカフェっぽい店の裏口へと入っていった。
――ここでバイトしてるのか……カフェ?だよなここは、って事はそれも愛美と共通しているな――
しばらく店の外から店内を眺めていると、店の制服に着替えた女の子がホールに出てきた。
おしゃれな店の雰囲気に合わせられた制服は、少しメイドっぽい可愛らしい服であの女の子によく似合っていた。
安本は数分道でタバコを吸った後、店に入ってみる事にした。
――洒落過ぎてて俺には場違いな気がするが、まぁいい、入っちまえ――
「いらっしゃいませ!」
店に入ると今朝の女の子が笑顔で声を掛けてきた。
「お一人様ですか?」
「あ、はい。」
「ではこちらへどうぞ。」
――やべぇ、近くで見るとさらに可愛いな――
女の子の笑顔に見惚れながら案内された席につく。
「こちらがメニューになります。」
メニューを受けとり、ふと女の子の胸元を見ると名札が付いていて、下の名前だけだが〝志乃〟と書いてあった。
――愛美じゃなくて志乃ちゃんか、この子らしい可愛い名前だな――
コーヒーを一杯だけ頼んだが、全席禁煙のこの店は安本にとってはあまり居心地の良い場所ではなかった。
働く志乃の姿を横目でチラチラと見ながら早々にコーヒーを飲み干すと、安本は席を立ってレジに向かった。
そしてそれに気付いた志乃がレジに入ってきた。
料金を告げられ千円札を出し釣銭を貰う、その時に志乃の手が安本に触れる。
ほんの少し触れただけなのに、とても柔らかな感触がした。
そして再び笑顔を向けてくる志乃。
志乃が醸し出す優しげで柔らかなオーラに、安本の心はドキドキと高鳴った。
――なんてこった、ときめいちまってるよ、俺――
店のドアを開けると
「またお越しください」
と志乃は頭を深々と下げた。
声も可愛い、と言うか優しい感じがする。
客として短い間のやり取りだったが、それだけでも志乃が良い娘なんだという事がよく伝わってきた。
店を出た後もフワフワとした気持ちがしばらく治まらなかった。
――なに考えてんだ俺は、あんなに緊張しちまうなんて、これじゃまるで思春期のガキみたいじゃないか――
一回り以上年下の小娘を前にしてドキドキしてしまった自分に、安本は思わず苦笑していた。
それにしても、ますます気になる。
あの志乃という女の子は本当にあの官能小説に関係しているのか?間近で見て感じた人柄は、とてもそんな事をするような娘には見えない。
昨日今日と、単に偶然が重なっただけなのか……だがカフェでバイトしているのも同じだし、愛美との共通点があり過ぎる。
今日はこれ以上確かめようがない。ないけれど、気になる。
じっと考えを深める安本。
また小説の更新と真田の命令を待つか……いやだけど、もっと手っ取り早い方法があるぞ。
――もうこうなったら直接聞くしかない……小説を書いている本人に――
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