知子
「そっかぁ・・・まだ友哉君から連絡ないんだぁ。」
果歩
「・・・うん・・・。」
大学の食堂、いつものように果歩と知子の2人は窓際の席で昼食を摂っていた。
知子
「まったく、友哉君も何やってんだか・・・モグモグ・・・」
難しい表情で豚カツを食べながら話す知子。
テンポよく口に食べ物を運ぶ知子、それとは対照的に果歩はまったく食事に手をつけていなかった。
果歩
「・・・・でもね知子ちゃん、私もういいかなぁって・・・。」
果歩は俯き加減で、小さな声でそう言った。
知子
「え?もういいって・・・?」
果歩の言葉に、思わず動かしていた箸を止める知子。
果歩
「もう友哉の事、考えるの止めようと思って・・・。きっと友哉、向こうで新しい彼女と楽しく過ごしてるんだよ・・・。」
知子
「え~ちょっとぉ!でもまだ友哉君が浮気したとは決まってないんでしょ!?」
果歩
「と・・・知子ちゃん声大きいよぉ・・・。」
思わず大声を出した知子に、果歩は困ったように言った。
慌てて周りを見渡し、ばつが悪そうに頭を低くして謝る知子。
知子
「あ・・・ごめん・・・でも、だってあの友哉君が浮気するなんて考えられないじゃない?」
果歩
「ん~でも・・・もうなんか辛いし・・・。」
知子
「あ~も~それ果歩の悪い癖だね、マイナス思考で全部考えちゃってるでしょ?」
果歩
「知子ちゃん・・・。」
知子は果歩の親友だけあって、果歩の性格をよく知っていた。
いつもは真面目で明るい果歩。
しかし、ひとたび落ち込むと、マイナス思考で自分を追い込んでしまう、そして果歩は割かし寂しがり屋さんだという事も知子はよく知っていた。
だから遠距離恋愛になると果歩に聞いた時には、知子は少し心配していたのだ。
知子
「だからさ、もうちょっと気長に友哉君からの連絡待ってみたら?大丈夫よ、友哉君は果歩にぞっこんだもの。」
笑顔をつくって果歩を励ます知子。
果歩
「そう・・・なのかな・・・。」
知子
「大丈夫!ね?だからご飯食べよ?食べないと体調まで崩しちゃうぞ?」
果歩
「・・・うん・・・。」
知子の言葉でやっと食事に手をつけ始めた果歩。しかしその表情は依然暗いものだった。
いつもなら知子の持ち前の元気な励ましを受ければ、元気を取り戻していたかもしれない。
しかし、今回は状況が違う。
果歩は言えなかった。
一晩とはいえ、友哉以外の男性と関係を持ってしまった事を。
そんな事、知子ちゃんには絶対言えない・・・
寂しさと辛さに流される自分を止める事ができなかった。
そんな自分の弱さと、友哉や真剣に相談にのってくれる知子への罪悪感が果歩を苦しめていた。
夜、雑貨屋さんのアルバイトを終え、アパートの部屋に帰宅した果歩はシャワーで汗を流した後、パソコンのスイッチを入れた。
いつもなら、帰ったらすぐチェックしていたメール。
毎日友哉からのメールを読むのが楽しかったあの日々・・・
しかし、今は結果が怖くてすぐには見る気分にならなかった。
・・・また何も届いてなかったらどうしよう・・・
カチ・・・カチ・・・
心細そうな表情でメールボックスをチェックする果歩。
果歩
「・・・・・・・」
じっとパソコンの画面を見つめる果歩。
そしてしばらく画面を眺めていた果歩は無言でパソコンを閉じた。
果歩
「・・・ハァ・・・・」
ベッドに倒れこみ枕に顔を埋めた果歩。
友哉からのメールは届いていなかった。
果歩
「・・・友哉・・・・・。」
寂しさと胸を締め付けられるような苦しさが果歩を襲う。
・・・もうヤダ・・・こんなのもう・・・忘れたいよ・・・
『嫌な事は全部忘れるくらい気持ちよくしてやるよ・・・』
『ァ・・・ハァァ・・・気持ちいいです・・・』
ふと昨日の冨田と過ごした時間を思い出す果歩。
あの時間、富田と繋がっている間はこの苦しみを全て忘れることができた。
甘く蕩けるような快楽の世界で、ただただ本能のままに、快感を感じるだけの世界。
その世界が今はとても愛おしく感じる。
またあの世界に行けば、この苦しみから逃れられるのだろうか・・・。
そんな事を思っていると、果歩の手は自然と自身の下半身へ伸びていった。
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