友哉
「果歩・・・どうしたんだろう・・・。」
留学のためオーストラリアに来てから数ヶ月、友哉はとても充実した日々を送っていた。
留学先の学校には地元の人達はもちろん、中国人や韓国人インド人と違う文化で育った学生が皆英語で会話している。
日本人の留学生は年々減少しているが、友哉にとってはそれが功を奏していた。
数年前なら周りは日本人ばかりで英語の上達なんてしやしなかったが、今は違う。
英語を話せれなければ生活困難という状況が友哉の英語上達の要因だった。
一ヶ月のホームステイを終えてからは、自分で探したアパートで1人暮らし。
家賃も自分で払いながらの生活のため、毎日レストランでのアルバイトも大忙しだ。
そんな忙しい中で充実感を日々感じつつ、友哉の中には1つの心配事があった。
日本にいる恋人、果歩の事だ。
先週、久しぶりの果歩との電話で、自分の不注意で勘違いを招き、果歩を泣かせてしまっていた事に気付いた友哉。
友哉はそれで大いに反省した。
実は正直な事を言えば友哉はこの数ヶ月間、アルバイトと学校の勉強で頭がいっぱいで果歩の事を考える事が少なくなっていた。
携帯電話とパソコンの故障も、やろうと思えばもっと早く修理できていただろう。
もちろん果歩を嫌いになった訳でもないし、恋愛感情が冷めた訳ではない。
だがしっかりしている様に見える友哉でも実際はまだ若い、この忙しさの中で果歩の事を考える余裕がなかったのだ。
それに忙しくても日本にいる時のように、少しでも会う時間があれば何か違ったのかもしれないが、ここはオーストラリアで果歩が居るのは日本、遠距離恋愛の難しさを痛感した。
しかし先週の電話で果歩の泣く声を聞いてから、友哉は改めて果歩を一生のパートナーにする事を心に決めた。
果歩は友哉が初めて本気で好きになった女性だ。
一途な性格の友哉は、付き合うならいつか結婚を・・・という少々堅い男。
毎日机の上に飾ってある果歩といっしょに撮った写真を見つめながら、今頑張っているのは果歩との将来のためだと言い聞かせる。そうすれば少々辛い事が起きても友哉はそれを乗り越えられると信じていた。
友哉
「・・・はぁ・・・。」
椅子に座ってパソコンの画面を見つめながら、ため息を付く友哉。
先週の果歩との電話で新たなスタートを切ったような気分になった矢先、あの日から果歩からメールが返ってこないのだ。
それでも友哉が電話をしなかったのは、果歩も自分のように忙しくてメールを返信する余裕がないのでないかと考えたからだ。
友哉
「果歩ってば、俺がしばらくメール返さなかった仕返しのつもりなのか?」
そう呟きながら友哉は部屋の壁に掛けられたカレンダーを見つめる。
友哉
「明日・・・電話してみるか・・・。」
明後日は久しぶりに学校もアルバイトも休みだ、明日の夜はゆっくり果歩との会話を楽しめるだろう。
友哉
「・・・よし、寝るか。」
明日になれば果歩の声が聞ける。そう頭の中をプラス思考に切り替えてから、友哉はベッドに入った。
富田
「遅くなって悪かったな果歩、さぁ乗れよ。」
果歩
「は・・・はい・・・。」
バタンッ・・・
富田の車に乗った今日の果歩の雰囲気はいつもと少し違っていた。
富田
「今日は一段と可愛いなぁ果歩、俺のためにオシャレしてきてくれたのか?」
果歩
「・・・ハ・・・ハイ・・・ちょっと・・・。」
果歩は自分の服を指で触りながら顔を赤くして少し照れた様子で返事をした。
スーッと走る乗り心地の良い富田の車が向かっていたのはとある高級ホテル。
そのホテルの中にある高級レストランが二人の目的地だ。
今日は富田の誕生日。
そしてその夜を共に過ごす相手として富田が選んだのが果歩だったのだ。
富田
「果歩・・・明日は大学休めるのか?」
果歩
「ぇ・・・・ハ・・・ハイ・・・その予定です・・・。」
富田
「フッ・・・そうか。」
夜の街を走る車の中で2人でいる富田と果歩はまるで恋人のようだった。
先日とは打って変わって富田は優しい表情で面白おかしい話を果歩にする。
果歩はそれを聞いてクスクスと笑っていた。
日々富田への依存度が大きくなっていっている果歩。
この日の夜、その果歩を取り巻く人間関係は大きな節目を迎える事になる・・・。
コメント
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コメントありがとうございます。
夜中から朝にかけてアクセスができない状況だったようですみませんでした。
僕も実は今朝は管理画面にもアクセスできませんでした。それも他のFC2ブログはアクセスできたのに僕のブログだけがアクセスできないという状況でした。
自分のパソコンが原因だと思っていたのですが、読者の皆さんもアクセスできなかったのですね。
僕のブログでしかも夜中と朝なので、アクセス集中が原因とは考えにくいのですが、FC2ブログ運営からは何かのエラーが発生しているとの事でした。
復旧して安心してます。
富田さんらの名前は実は決まっていません。
それは僕の文章は「」の前に名前を入れるので、登場人物が多くなってくると誰が誰だか分かりにくくなるかなぁと思っての事なんですが。でも設定として決めてもいいですよね。
ココだけの話、これは予定なんですが、富田さんの下の名前は別の物語で分かるかも?しれません。
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アクセスが、集中していたらしくなかなか繋がりませんでした。
ところで、今更ですが、友哉くんの苗字とか富田さん、山井さんの名前とかって決まっていたりするんですか?