果歩は富田の求めを全て受け止めていた。
毎日毎日富田のマンションに通う日々。
行けば求められるSEX。毎回そのSEXは果歩にこれ以上ない程の快感を与えていた。
果歩
「ハァ・・・アッアッアッアッ・・・ンッ・・・ああ・・・イクッ・・・アアッ!」
ベッドの上で富田に抱かれながら身体を大きく仰け反らせる果歩。
頭が真っ白になる。
スーっと力んでいた全身の力が抜けていく。
そして、もう何度も体験してきたあの絶頂後の甘い余韻が果歩の全身を包み込む。
果歩
「ハァ・・・ハァァ・・・ん・・・ハァ・・・」
富田
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
静かな部屋に、事を終えた男女の荒い息遣いだけが聞こえる。
ジットリと汗ばんだ身体を、果歩に密着させる富田。お互いの速くなった鼓動がドクドクと伝わってくる。
富田
「はぁぁ・・・果歩・・・」
少し間を開けて、富田が果歩の下唇にキスをした。
果歩 「ん・・・ァ・・・ん・・・」
富田が求め、果歩が応じるキス。
そう・・・富田が求め、果歩が応じる。これが今の2人の関係だ。
富田は果歩の全てを自分のモノにしたがっていた。
果歩は富田の要求を何も拒まない、果歩の何もかもが富田の思うがまま。
富田
「・・・はァ・・・はァ・・・。」
しかし富田は感じ取っていた、奪っても奪っても果歩は完全には自分のモノになっていないという事を。
果歩を帰し、1人この部屋に居ると不安になる事が多かった。果歩が突然、母と同じように何処かへ行ってしまうのではないかと。
その不安と恐怖で眠れない日もあった。
・・・果歩を放したくない・・・果歩を失いたくない・・・
だからこそ富田は、完全には自分のモノにならない果歩の心に、自分という存在を刻み込む行為を続けた。
そしてそれは心だけではなく、果歩の身体にも・・・。
富田から身体を解放されると、果歩は無言でゆっくりとベッドから降りてシャワーを浴びに行った。
ザーーーーー・・・・
熱いシャワーで全身の汗と、お腹辺りに付いた富田の白濁液を流す果歩。
果歩
「・・・・・」
〝果歩、話があるんだ。それに・・・聞きたい事も・・・俺、果歩の事が心配で・・・〟
〝待ってくれ果歩!!〟
シャワーを浴びながら、浴室の壁をボーっと見つめる果歩の頭の中では、昨日の友哉の声が何回も繰り返し再生されていた。
果歩
「・・・はぁ・・・」
目を閉じてした深いため息が、シャワーのお湯に流されていく。
・・・・どうして・・・
友哉に掴まれた手首に、その余韻がまだ残っている。友哉の手に掴まれた感覚が。
・・・もうこの暗闇の世界から私は出れるはずがないのに・・・
出口の無い真っ暗な世界で、富田の体温だけを感じて生きてきた果歩。
しかし、果歩にとって遠い存在となっていた友哉が突然目の前に現れた事で、果歩の頭は混乱していた。
友哉が帰ってきて嬉しい訳では決してない。果歩は突然現れた友哉の存在に苦しんでいたのだ。
果歩には想像できた。
本当の自分の姿。汚れた自分の本当の姿を見て、顔を引きつらせる友哉の顔が。
果歩
「・・・・・。」
そう思うと、また辛くなってくる。だから果歩は心を閉ざし、再び無表情になる。
心を閉ざせば、辛い思いをしなくて済む。
心の中の狭い部屋で、果歩は必死に両手で耳を塞いだ。
・・・もう誰の声も聞きたくない・・・友哉の声も・・・聞きたくない・・・
そんな果歩は、この暗闇の世界で唯一共存している富田という孤独な男に手を引かれ、より深い所へ、より暗い所へ連れて行かれるのであった。
富田は決して手を放してくれなかった。
果歩は知っている。富田は自分と同じ、悲しく孤独な人間なのだという事を。
だから果歩が富田に付いて行く理由は一つ。期待していたのだ。
富田は自分を、何の苦しみも感じない永遠の世界に連れて行ってくれるかもしれないと。
・・・・・・・・
暗闇の中を手を握って歩く2人。
その2人の手首には、幾つもの切り傷の痕が痛々しく残っていた。
コメント
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返信コメ遅れてすみません。
あ~なるほど…京香さんの言うとおり、無意識の内に母性愛を相手に求めてしまうって言う方が当たっていますね、きっと。
富田さんの場合ちょっと剥き出しにし過ぎている感じがしますもんね…あ~ちょっと文章修正したい(苦笑)
実は僕の知り合いで富田さんと同じような体験をした男性がいまして、その人もそう言ってましたね、そういえば…
無意識の内に相手に母親を求めてしまった事があるって…。その時は自分でも気付いていなかったと…。
京香さんはきっと相手の人の事をよく考える優しい方だからこそ、そこまで分かっていらっしゃるんですね。
面倒くさい人なんて事はないと思いますよ。
性癖とかはきっと生まれつき持っている物もあるでしょうけど、それまでに人生で体験してきた事が大きく影響してるんでしょうね。…で、官能小説でそこまで書こうとするとこれだけ長くなってしまうと…(苦笑)
SとMの関係性は初長編作品としてはなかなか難しかったです。でもこの連載を通じて京香さんのような読者の方から色々と教えてもらう事、気付かせてもらえる事が多かったので、チャレンジしてみて本当に良かったと感じてます。
さぁ明日からまた更新頑張ります!
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こちらこそ、読者の勝手な意見に丁寧にコメントくださって、感謝しています。
人によって受け取り方が違うので、勉強不足というのではないと思いますよ。
そうですねぇ…
SとMの特徴の1つに、母性(父性)を求めるのが根底にあって
(幼少期、親からの愛情不足が原因で)
それが歪んだ形で恋愛に反映されるんですね。
簡単に言えば、無意識に恋愛相手にそれを求めるんです…。
なので、【求めているのは母性愛であり、恋愛とは別】ってならないんです^^;
例外もありますが、S性M性の度合いが濃いほど、この特徴が見られます。
(自分で気付いてない場合もあります)
書いていて自分で思うのですが、物凄く面倒くさい人種です(私自身もですが、笑)
SとMの関係(背景)を書くのは、難しいのかもしれませんね…。
でも性描写という形なら、官能小説にはピッタリなんでしょうね♪
この物語は、登場人物の背景が見えるので、ガッツリMな私は反応してしまうのかもしれません^^;
毎度ながら、読者の勝手な意見ですみません。
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コメントありがとうございます。
読者さんにそう言って頂けるのが一番力になります。ありがとうございます。
更新頑張ります!
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いえいえ、参考になるコメントありがとうございます。勉強になるので嬉しいです!
うーん…そうですねぇ、今の富田さんと果歩の関係はSとMとは違いますね。
富田さん側からすると母と子みたいな関係で、果歩からすると…なんだろうなぁ…
富田さんが果歩に求めているのは完全に母性愛であり、恋愛とは別です…って事にしてます。僕の中では(苦笑)
果歩は富田さんが求めているものが母性などとは分かっていませんが、とにかく富田さんの欲求を解消する道具になりきっています。
自分を道具だと自覚しているのにそれでも富田さんの所へ行く理由は、麻薬のようにSEXに依存しているためです。SEXという麻薬を打ちに行くために富田さんのマンションに通っている感じでしょうか。
ちょっとだけ話すとこんな感じでしょうか…まぁ色んな受け止め方はあると思います。これだけ説明を付け加えないといけないのは、僕はやっぱりまだまだ勉強不足と言う事ですね。
あと、SとMの特徴を描くのにはまだまだ経験不足かなぁ(苦笑)
富田さんを弱くし過ぎてしまいましたね。果歩の気持ちに矛盾点を感じられるのも、このストーリーの流れだと頷けます。多くの反省点は次の作品に生かしたいです☆
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更新楽しみにしてます♪
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うーん…前にも書きましたが…富田さんの行動は【サディストあるまじき行為】なんですよね…(苦笑)
果歩ちゃんに母性を重ね、求め失う恐怖は、サディストの根底にありますが、
縋っちゃいけない…(というか縋らない)
縋るのはM側なので^^;
しかも、もう自分のモノじゃないって気付いてて尚やるなんて事は…Sの人はしないと思います…。
どちらかというと、S性を持っていない男性がする行為かと^^;
果歩ちゃんが期待するという話も、裏切って堕ちた現段階では、もう違う気がしますし、
孤独を分かっていたなら裏切らないですよ…。
こうなった経緯の種明かしな感じもするのですが…うーん…。
すみません、また好き勝手言ってますね^^;