友哉は果歩の裸姿を知っている男だ。恋人だったのだから。
初めて果歩と身体を交えた時、友哉は果歩の美しい身体に魅了され、興奮した。
肌理細やかで白い美肌に、ピンク色の乳首、柔らかな抱き心地。女性の身体はこんなにも素晴らしいものなのかと感動さえ覚えた程だったのだから。
しかし今目の前に居る果歩の身体は、その時とは大きく変わってしまっているという事が一目で分かった。
友哉
「・・・・・」
以前よりも明らかに大きくなっている乳房、腰の丸み、そしてウエストが締まって見事な括れ(くびれ)ができている。
その身体は、友哉が居ない間に果歩がある意味での大人の女になってしまった事を証明していた。
そして友哉は果歩の身体から別の男、あの富田という男の存在を感じざる負えなかった。
まるで〝この女はもうお前の女じゃないんだよ〟という男のメッセージが伝わってくるよう。
体中に残る赤い斑点のような痕。果歩の身体を好き放題貪る男の姿が目に浮かぶ。
そしてそれだけではない、果歩の身体には簡単には消えそうにない男の痕が深く刻み込まれていた。
それを見た瞬間、友哉は心臓を握り潰されるような感覚を覚える。
果歩の身体には・・・刺青が彫られていたのだ。
アンダーヘアーが無くなった部分に掘られた蝶の刺青。
視線を下ろし、女性の最も大事な部分に目をやると、何やら金属のような物も少し見える。
ピアスだ。
なんと果歩は性器にピアスをさせられていた。
そしてピアスは性器だけではなく、果歩のピンク色だった乳首にも。
以前よりも大きく、そして色の濃くなった乳首を痛々しく貫通しているピアス。
友哉
「・・・・・」
果歩の身体から伝わってくる使用済み感と、男の存在。
友哉は辛い感情が表れているだろう自分の目を果歩に見せないようにゆっくりと閉じ、冷静を保つように自分自身に言い聞かせた。そうしないと狂ってしまいそうだったのだ。
果歩
「・・・私・・・沢山したんだよ。」
果歩の声で友哉は再び目を開く。そして果歩の目をジッと見つめた。
友哉
「・・・・・」
果歩
「・・・セックス・・・・・毎日毎日、沢山の男の人達と・・・」
友哉
「・・・・・」
果歩
「私は・・・便器なんだって・・・ヒドイよね・・・」
友哉
「・・・果歩・・・」
果歩
「・・・でもね・・・凄く気持ちよかったの・・・フフッ・・・馬鹿だよね・・・最低だよね・・・」
果歩の口は笑っていた。
笑っていたと言っても笑顔ではない。
ただ口の端を少し上げて笑っていたのだ。
友哉 「・・・もういいよ果歩。」
しかし果歩はそのまま続ける。
果歩
「・・・色んな事したんだよ・・・それまでは想像もしてなかったようなエッチな事・・・。」
友哉
「・・・・・」
果歩
「友哉の知ってる男の子とも沢山したんだよ・・・後藤君も、林君も、上田君も、高本君も・・・」
友哉の手がグッと強く握り拳を作る。
その怒りはその男達に向けられたモノではない。友哉は自分自身に怒っていたのだ。
果歩
「最低でしょ?幻滅したでしょ?・・・でも全部本当の事なんだよ。・・・私・・・最低な女なの。」
友哉
「・・・・・」
果歩
「私・・・もう友哉とは居る世界が違うの・・・だから・・・」
果歩はそう言いながら少し俯き、片手で自分の頭を押さえた。
友哉はその時見つけてしまう、果歩の手首にある何本もの切り傷を。
果歩
「だから・・・こんな汚らわしい女、もう見たくもないでしょ?安心していいよ、もう友哉とは会わないから、私大学も辞めるし・・・もう友哉とは絶対に会う事の無い遠くに行くから・・・遠くに・・・ずっと遠くに・・・」
友哉
「何・・・言ってるんだよ果歩・・・」
果歩
「友哉・・・ごめんね・・・昔の彼女がこんな女だったなんて、嫌だよね。ごめんね、ホント・・・私なんて生きてる意味ないよね・・・こんな人間・・・死んだ方が周りの人達に迷惑・・・」
バサッ・・・・!
果歩が全てを言う前に、友哉は果歩を抱き締めた。
身体が勝手に動いた。自分を傷つけ続ける果歩を、愛おしい果歩を、友哉は抱き締めずにはいられなかったのだ。
果歩
「やめてっ!!!!」
部屋に果歩の大きな声が響いた。
そして果歩は必死に友哉から離れようとする。
友哉
「果歩、大丈夫、大丈夫だから。」
果歩
「やめて!!!離れて!!!!イヤっ!!!」
友哉の胸に手を当てて力いっぱい押し返そうとする果歩。
友哉 「果歩・・・果歩・・・大丈夫だから。」
それでも友哉は果歩を包み込む腕を放さずに、優しい言葉を囁き続けた。
果歩
「イヤッ!イヤァッ!友哉も汚れちゃう!離れてよぉ!離れてぇ!」
友哉
「果歩・・・大丈夫・・・俺がずっといっしょにいる、だから大丈夫、もう1人にしないから。」
果歩
「はぁ・・・はぁ・・・ぅぅ・・・嫌だよ友哉ぁ・・・私汚いんだから・・・」
友哉
「果歩は汚くなんかないよ、俺も知子ちゃんも・・・果歩の事が今でも好きだよ、だから大丈夫、な?・・・大丈夫・・・大丈夫・・・」
友哉は果歩を落ち着かせるように、果歩の背中をゆっくりと優しく撫で続ける。
果歩
「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・」
すると腕の中で果歩の身体がスーっと脱力していく。
果歩
「ぅぅ・・・友哉ぁ・・・ぅぅ・・・ああ・・・友哉ぁぁ・・・」
今までずっと人形の様な表情をしていた果歩の目から、大粒の涙が溢れる。
友哉
「ずっと辛かったんだよな・・・ごめんな果歩・・・」
そう言って自分の腕の中で涙を流す果歩の頭を、友哉はそっと撫でた。
コメント
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コメントありがとうございます。
裁判になったら、今までの倍は話を長くしないといけなくなっちゃいますよ(笑)
はい、もうあと少しです。頑張ります!
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ありがとうございます。
そうですねぇ、友哉がどんな男かっていうのは今までそんなに書いてこなかったですからね。
そんなに容姿が良い訳でもなく、女性の扱いもSEXも未熟。でも若く不器用なりにも、友哉は果歩を大切にしたいという想いだけで、なんとか果歩を受け止め、男らしく優しく包み込もうとしています。
富田さんは友哉に無いものを沢山持っていましたが、友哉も今の富田さんには無い大切な物を持っていた…って感じですかね。
もう本当に終盤です。
美桜さんのように、いつも楽しみにしてくださっている方がいたから続けられた気がします。
最後まで頑張ります!
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ここから怒濤の裁判モノに突入?笑
クライマックスまで、もうちょっとですね。頑張ってください♪
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驚きました。
友哉にこんなに男儀があった事。
どちらかと言うと、草食系男子に思えていたので、ここまで堕ちた果歩を受け止める度量に感謝です。
そして果歩。
独りぼっちの寂しさからセックスにのめり込み、人肌の温かさを愛情と勘違いして、富田さんに執着していたと思っていましたが、やはり傷ついていたのですね……。
リストカットまでし、死ぬ事も考えていたとは。(;_;)
最終的には、富田さんが「真の愛情」に目覚めてくれ、果歩と幸せになってくれれば良いなと思っていましたが。
こんな友哉をみたら、果歩を立ち直らせられるのは友哉しか居ないなんて、身勝手にも、そう思ってしまいました。(*_*)
3人の運命はどう転がって行くのか、楽しみで仕方ありません。
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初めましてこんにちは。
コメントありがとうございます。
そうですねぇ、富田さんと果歩は不器用ですからね、人間が。だからなかなかバランスを取る事が難しいのかなぁって思います。
富田さんを別の物語で登場させてほしいって読者の方からの要望は結構多いので、色々と検討しています。
水野果歩はもうすぐ完結を迎えますが、新しい物語もどんどん書いていく予定ですのでまた感想など頂けたら嬉しいです。
季節の変わり目、体調を崩しやすい時期ですのであんみつさんもお身体に気をつけてください☆
更新頑張ります!
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初めましていつも楽しく小説を読ませていただきます。
最初はかほと富田が結ばれるのを楽しみにしていましたが、この回の小説を読んで、しみじみと思ってしまいました。
あぁ…かほに富田はもったいないなぁと(笑)
でも、不思議と富田にかほももったいないなぁと思ってしまいました。
なぜでしょう?
そういう運命なのかなぁ…
富田には一途な本当に浮気しない子がお似合いなのかもしれません。かほもある意味一途な感じですが…
もしかほと富田がくっつかない場合、別な話で富田がヒーローになることを期待してます(笑)
勝手に言ってすみません[e:330]
これからも体調に気をつけてがんばって下さい