女子大生 水野果歩(92)

知子 
「はぁ・・・・」

『も~、ため息をつくと幸せが1つ減るよ!』

普段知子が果歩によく言う言葉だ。

大学の食堂、いつもなら果歩と2人で昼食を食べている席に知子は1人で座り、食後のデザートに買ってきたプリンをテーブルの上に出して眺めていた。

コンビニで見つけた、卵の入った黄色い部分とカラメルが別々にされたプリン。

他のプリンと比べれば多少値は張るが、これが最近の知子のお気に入りなのだ。

黒く粒粒したバニラビーンズが入ったカラメルの袋を破り、プルンとしたプリンにかける。

ビターな味わいのカラメルが甘くとろけるプリンの味を引き立てて、なんともこれが美味しい。

果歩がいたらきっと『え~おいしそう~ひと口ちょーだい』と言ってきていただろう。

そんな事を思うと知子のスプーンを持った手は止まっていた。

知子 
「・・・果歩ったら・・・何してるのよ・・・」

今日は水曜日、月曜日からの3日間、果歩は大学に来ていない。

知子のため息の原因はそれだけではない、あの土曜の夜に掛けた電話・・・。

秋絵 
「知子ちゃん。」

知子 
「・・・ぇ?・・・あ・・・秋絵先輩。」

背後から聞こえた声に振り返った知子。

そこには先輩であり、果歩と知子の憧れの存在でもある秋絵がいた。

秋絵の容姿、服装は相変わらず大学内でも一際特別なオーラを放っていた。

どこかのモデルかと思う程のすらっとしたスタイル、そして綺麗に整ったルックスはやはり他の大学生とは違う、外見だけではなく落ち着きを持った大人の女性。おそらく秋絵に対し憧れの気持ちをもっているのは果歩や知子だけではないだろう。

秋絵 
「ここ、いいかしら?」

知子 
「はい、どうぞどうぞ。」

テーブルを挟んで知子の正面の席、果歩がいつも座ってた席に着いた秋絵は、微笑みながら口を開いた。

秋絵 
「果歩ちゃん、今日もお休み?」

知子 
「・・・はい、そうなんですよ。」

秋絵 
「フフ・・・なんだか寂しそうね知子ちゃん。」

知子 
「ぇ?・・・えぇ・・まぁちょっと・・・。」

秋絵 
「・・・どうしたのかしらねぇ果歩ちゃん。」

知子 
「・・・ほんと・・・どうしたのかなぁ・・・。」

秋絵 
「果歩ちゃんに連絡、してみたの?」

知子 
「ぇ・・・・・連絡は・・・してないんです。」

秋絵 
「あら、どうして連絡しないの?果歩ちゃんの事、心配なんでしょ?」

知子 
「それは・・・・。」

『あーさっぱりしたぁ!果歩ちゃん風呂空いたから入っていいぞぉ!俺はベッドで準備運動して待ってるからよっ!』

あの夜、果歩としていた電話越しに聞こえた男性の声。

知子はその時酔っ払ってはいたが、果歩の後ろから聞こえたあの男性の声の事ははっきり覚えていた。

果歩は実家に帰っていると言っていたが、あの男性の声を聞いた瞬間、それが嘘である事は知子にはわかった。

果歩は嘘をつくのが苦手だ。果歩といつもいっしょにいた知子には果歩がつく嘘など簡単に見破れてしまう。

果歩は男の部屋にいる。

知子は直感でそう思った。

それが知子が果歩に連絡しずらい理由。

遠距離恋愛で現在は2人の間に問題が発生しているとはいえ、果歩には知子もよく知っている友哉という彼氏がいるのだ。

果歩が浮気してるなんて・・・

しかしその可能性は十分に考えられた。なぜなら知子は果歩がかなりの寂しがり屋さんである事をよく知っていたからだ。

・・・もう・・・果歩ったら・・・

知子 
「・・・・・。」

少し悩んだ様子で黙ってしまった知子。

秋絵 
「果歩ちゃん、友哉君の事で悩んでいたものね・・・」

知子 
「・・・・・はい・・。」

秋絵 
「・・・大丈夫よ知子ちゃん、きっと明日には果歩ちゃん笑顔で大学に来るわ。」

知子 
「そう・・・ですかね・・・そうだといいんですけど。」

秋絵 
「きっと今頃気晴らしでもして元気を充電してるのよ、恋で傷ついた時は今やっている事を全部休んで傷を癒す事も大切だわ。」

知子 
「・・・気晴らし・・・ですか・・・」

秋絵 
「果歩ちゃんも大人だもの、恋で傷ついた時の壁はきっと乗り越えられるわ。」

知子 
「・・・・・。」

秋絵の言葉にも、知子の表情は曇ったままだったが、秋絵はそんな知子の表情を眺めながらニヤっと不敵な笑みを浮かべていた。

秋絵 (フフ・・・大丈夫よ知子ちゃん、果歩ちゃんは今頃、富田さんの上で腰振りながらすばらしい気晴らしができていると思うわよ・・・)

コメント

  1. メンメン より:

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    コメントありがとうございます。

    ちょっと更新遅くなりそうですが…頑張ります!

  2. 匿名 より:

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    更新楽しみにしています。

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