上質で脂の少ない赤身肉と、それに合わせて出された赤ワイン。
真弓に連れて来られた高級焼肉店の個室で食した料理は、拓実が今までに経験した事がないほど美味なものだった。
程良く熟成した肉を噛みしめ、ワインを口に含むと、何とも言えない甘美で官能的な味と香りが広がる。
高校時代に友達と行っていた焼肉屋とはまったく違う雰囲気の中で味わう料理は、大人の味がした。
それは、人妻である真弓と初めてキスをした時に感じたものに似ていた。
「拓実君、美味しい?」
「はい、凄く美味しいです。肉と赤ワインってこんなに合うんですね、驚きました。」
「拓実君ももう大人になっていくんだから、こういう味も覚えていかないとね。ほら、遠慮しないで沢山食べてね。焼肉なんだから、上品に食べなくても良いんだよ。」
「はいっ。」
次々と出される料理を口に運び、その度に
「あ~美味しい……」
と感動する拓実。
そんな拓実を見て真弓は
「拓実君って本当に美味しそうに食べるよね」
と、嬉しそうに笑顔を見せていた。
洗練された料理は、沢山食べても胃もたれしない。
最後にデザートを貰いながら心地良い食後感を満喫し、食事を終えた2人は店を出た。
「どうだった?たまにはこういうお店も良いでしょ?」
「はい、もう信じられないくらい美味しかったです。今までこんな綺麗なお店で食事した事なんてなかったから、なんだか夢みたいでした。」
「うふふ、そっか。じゃあさ、こういうお店で食べるのと、私がいつも作る料理とどっちが好き?」
「え、それは……」
「あはは、ごめんごめん、答え難い事聞いちゃったね。」
「いえ……でも今日のお店も凄く美味しかったですけど、俺は……真弓さんの手料理の方が好きです。」
「ホントに?」
「はい、本当ですよ。俺、真弓さんの手料理を毎日食べれて、それが嬉しいというか……幸せというか……」
「うふふ、嬉しい事言ってくれるね。拓実君って優しいよね。」
「気を使って言ってるんじゃないですよ、本当に幸せなんです、真弓さんの料理を食べたり、真弓さんと一緒にいるのが……」
「拓実君、酔っ払ってる?」
「そうかもしれません。」
お店を出てからしばらくはそんな会話をしながら2人で夜の道を散歩した。
ワインのアルコールが程よく回って、ほろ酔い気分。
煌びやかに光る街と、心地良い夜風。
「こうやって夜の街を歩くのって久しぶり。」
「綺麗ですよね、昼間とは雰囲気も違うし。」
「こういう所って、カップルだと手を繋いで歩くんだよね。」
「そう……ですね。」
歩きながら周りに目をやると、いくつものカップルが手を繋ぎながら歩いていた。
「私達も繋いでみようか。」
「え、いいんですか?」
「うん、拓実君が私とでいいなら。」
「もちろんです。」
「じゃあ……こっちの手、はい。」
そう言葉を交わして2人は手を繋いだ。
もうすでに身体の関係まで持っている2人なのに、街で手を繋ぐのはなんだか少し気恥ずかしかった。
「私達、本当の恋人みたいだね。」
「真弓さんとこんな時間を過ごせるなんて、夢みたいです。」
拓実の手は、大きくて温かかった。
拓実は身長も高いから、こうしていると、なんだかとても安心感がある。
真弓は歩きながらそっと拓実に身を寄せた。
「真弓さん?」
「こうしたら嫌?」
「いえそんな事は……嬉しいですけど。」
もう、どこからどう見ても2人は恋人にしか見えない。
「ねぇ拓実君、もっと恋人っぽい事しようか。」
「もっと恋人っぽい事ですか……?」
道を歩いていると、石畳の階段に差し掛かった。
真弓はそこで拓実を立ち止まらせて自分だけ一段上がり、拓実と向き合う。
2人の身長差は、一段程度では埋まらない。でも背伸びをすれば届く。
真弓はつま先立ちをして、抱き付くように拓実の首に両腕を回し顔を近づけた。
「真弓さん……?」
「こういう所でするのって恥ずかしいけど、誰も見てないし、ね?」
「……はい。」
周りを見て誰もこちらを見ていない事を確認してから、2人は恥ずかしそうにして唇を近づけ、キスをし始めた。
初めて外でするキス。
2週間ぶりのキス。
心地良くて、気持ち良い。
拓実とのキスについついウットリしてしまう。
この互いに唇が馴染む感じ。やっぱり相性が良いのだと実感する。
2週間、ずっとキスもしたいと思っていたから、その分嬉しい。
でもこの場ではあまり長くはできないし、これ以上の事もできない。
ゆっくりと顔を離した真弓は、拓実の目を見つめた。
「ねぇ拓実君、これからどうしようか?」
「どう……しましょう。」
「ん~……じゃあ、こっちの方に行ってみる?」
真弓はそう言って駅裏へ続く道を指差した。
「こっちには何があるんですか?」
「さぁ、何があるんでしょうね~うふふ。」
真弓は意味深な笑みを見せながら
「とにかく行ってみようよ」
と拓実の手を引っ張る。
拓実も真弓の笑顔に何か勘付いたような顔をした後に
「はい」
と返事をして歩き始めた。
先程まで歩いていた道よりも少し暗い。
「真弓さん、この道よく使うんですか?」
「ううん、あんまり来ないよ。でもちょっとは知ってるかな。」
暗いと言っても怖い感じはしない場所。
他にも男女のカップルがちらほら歩いている。
やがてその道の通りに、いくつかの看板が見えてきた。
それぞれの看板がピンクや黄色の光を放っていて、明らかに他とは違う雰囲気を醸し出している。
そして道を歩いていたカップル達が、その建物の中に入っていく。
そう、ここは所謂ラブホテルが並ぶホテル街だった。
「真弓さん、ここって……」
「うん、拓実君はこういう所来た事ある?」
「ないですないです。」
「入ってみたい?」
「……いいんですか?」
「うふふ、だってご褒美欲しいでしょ?」
真弓の微笑みながらの〝ご褒美〟という言葉に、拓実は緩みきっただらしない笑顔で
「は、はい」
と答えた。
表情で分かる。もう拓実の頭の中はイヤらしい事でいっぱいになっている。
「もぉ拓実君ったら、どんな顔してるのよ。」
「え?顔ですか?」
「うん、すっごいエッチな顔してる。」
「ほ、ホントですか、すみません……」
「うふふ、別に良いけどね。」
真弓がそう言って笑うと、拓実も照れたように笑顔を見せていた。
「じゃあどうしようかな、私綺麗な所がいいなぁ。」
そう言いながらしばしホテル選び。
「拓実君、ここはどうかな?」
「あ、はい、俺はどこでも……」
そして結局2人は、その通りにあるラブホテルの中で一番料金が高いホテルに入る事にした。
「じゃあ、入っちゃおうか。」
「はい。」
コメント
SECRET: 0
PASS: 655f2890c2e1a3754d43f6bcf536a4de
無料で読ませていただいてるんですし、早く更新を、などとプレッシャーを与えてしまう発言は控えましょうよ。。
我慢できない気持ちはよくわかりますが(私もですし、笑)
メンメンさん、いつも楽しく読ませていただいてます。
寒い時期になってきましたので、お身体ご自愛下さい。
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
更新ありがとうございます。・・・・
やっと、と思っていたら、まだセックスが始まらないので、途中でやめられてしまいました。
濃厚な描写でイケるように早く次の更新をお願いします。
恥ずかしい...
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> この小説を読んで、同じように2週間セックスしないことにしました。次の話が進むまで夫からはオナニーも禁止にされました。 そろそろ限界です。続きをお願いします
コメントありがとうございます。
小説は明日くらいには更新できると思います。遅くなってすみません。
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
コメントありがとうございます。
私が住んでいる地域は雨による被害はないので大丈夫です。ありがとうございます。ご心配をお掛けして申し訳ありません。
小説は今日か明日くらいには更新できたらと思っています。(更新も遅くてすみません)
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
承認待ちのコメントは公開しないの?賛同を得られるのが怖いのかな。連載を滞らせてる罰を甘んじて受けなさい。どうして更新中に滞らせるのかは理解に苦しみます。もしかして、信じて待ってるに励まされてる?ランキングで勝ち抜いてるのに甘ったれてるんですね。天災を心配してくれてる人もいるのに。ブロマガ購入で金儲けしてるんだし、責任や自覚に礼儀は弁えたほうがいいよ。まさか、別の話を書くつもりかな?
煮詰まったのなら、もう最終回にすれば!天ぷらを揚げてるのに求められ火事になり二人は焼死。居候の男が交通事故で突然亡くなる。悲しむ真弓だけど、旦那も帰国し一件落着とか。
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
この小説を読んで、同じように2週間セックスしないことにしました。次の話が進むまで夫からはオナニーも禁止にされました。 そろそろ限界です。続きをお願いします
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
楽しみにしてます。 天災にあわれてないことを祈ります。
SECRET: 0
PASS: 3fcc5d4a074eb99a9080d148c51499f2
メンメンさんの作品は本当に引き込まれます♪
今まで、数えきれないくらいのエロジャンル
見てきましたが、本当に最高峰なくらい
上位に感じてます。登場人物に感情移入し過ぎて
ヤバいくらいです(笑)
いろいろお忙しそうで更新大変だと思いますが、
無理なさらず、メンメンさんのペースでも
信じて待ってますし、この作品本当に大好き
なので、長編化して欲しいです。
SECRET: 0
PASS: c2dd6689ba72765924232edf7efee0fb
いいですねぇー!
こーゆーのがあるから、あとのエッチが燃えるんです!
私も彼女と焼肉→ラブホを思い出しました。
こんな良いムードではなかったけどww
週刊誌などの連載じゃないんだし、私達はずっと待ってますから、これからもハートも股間もキュンとなる作品をよろしくおねがいします!