初めて夫を裏切った。他の男性と関係を持ってしまった。
旅行から帰って来て、夫の洋平と顔を合わせた時は少し怖かった。
旅先で何をしてきたか、洋平に勘付かれてしまったらどうしよう……と。
でもそんな心配は必要なかった。
「はい、これお土産ね。」
「お土産?何の?」
「何のって、旅行のお土産に決まってるでしょ。」
「あぁ、そういえばそうだったな。」
そうだ、夫は私なんかには興味がないのだったと、響子はすぐに思い出した。
1日や2日、私が家にいなくても気付かない。
「どこに行ってきたんだっけ?」
「○○温泉よ。」
「誰と?」
「沙弥とよ、この前言ったじゃない。」
「あ~そういえば女2人旅って言ってたな。で、どうだったんだ?」
「……凄く、楽しかったよ。」
「そうか。」
それだけで夫婦の会話は終わった。
そしてお土産の袋も開けないまま洋平は
「明日も朝早いから」
と言って自分の寝室へ行ってしまった。
寝室は数年前から夫婦別々。夜中に帰ってきた時に響子を起こしてしまうのは悪いからと、洋平からの提案でそうなったのだ。
きっと昨日も夜遅くに仕事から帰って来たから、私が居ない事にも、子供達を実家に預けている事にも気付かなかったんだ。
浮気をしてしまった事に対して罪悪感はある。でも……
――洋平はもし私が他の男性と関係を持った事を知ったらどんな反応をするんだろう……――
旅行から帰って来てから数日が経って、響子はすっかり元の主婦生活に戻っていた。
掃除洗濯食事の準備を、同じように繰り返す毎日。
夫の前では妻になれるし、子供の前では自然と母親になれる。
でも心の中は違った。
あの旅行で響子は女になる方法を知ってしまった。
一日たりともあの夜の事を思い出さない日はない。
「はァ……」
平日の昼間、家には他に誰もいないこの時間帯に、響子は1人でベッドの上にいた。
まだアソコに余韻が残ってる。
あの満たされる感覚が忘れられない。
太くて硬いペニスを挿入されながら互いに求め合った。
うっとりするような濃厚なキス、膣を擦られる快感。
思い出すだけで身体が熱くなって、自然と手を下着の中に入れてしまう。
「はァ……長岡さん……」
旅行から帰って来てから毎日、響子はこうやって長岡とのセックスを思い出し自慰行為を繰り返していた。
価値観が180度変わってしまうほど気持ち良いセックスを知ってしまった後だからなのか、欲求不満と身体の奥から溢れ出てくるムラムラ感が尋常ではなく、オナニーをして少しでも発散しないとどうしようもなかったのだ。
長岡も働いている社会人だ、またすぐに会える訳ではない事は分かっている。
でも次はいつ会えるんだろうと、響子はそればかりを考えていた。
長岡さんに会いたい。会ってまた……してもらいたい……
そして長岡から響子の携帯に電話が掛かってきたのは、丁度そんな想いがピークに達した頃だった。
『もしもし響子さん?長岡です。』
「は、はい、こんにちは。」
『この前の旅行、ありがとうございました、本当に楽しかったです。』
「いえ、こちらこそ。私も……とても楽しかったです。」
『今は家ですか?』
「はい。」
『ひとり?』
「はい。」
『響子さん、あの……旅行から帰ってからは問題なかったですか?その、家の人は。』
「……ハイ。」
『旦那さんは何も?』
「そうですね、いつも通りでした。仕事が忙しいみたいで、私が旅行に行ってた事自体忘れてたって、信じられないでしょ?」
『そうなんですか、それはまた……子供さん達は?』
「子供達ですか、あ、そうだ、長岡さんがおススメしてくれた子供達へのお土産のお菓子、大喜びしてました。2人共甘い物は大好きなので、もう取り合いで。」
『ハハッ、それは良かった。』
「……」
『……響子さん。』
「はい。」
『今度の水曜日、会いませんか?2人で。』
「……」
『……もしもし、響子さん?』
「あ、あの……水曜日ですか……えっと、ハイ……たぶん、大丈夫です。」
『じゃあ会ってくれるんですね?』
「……ハイ……」
『良かったぁ。じゃあ待ち合わせ場所は後でメールで送りますね。俺が車で迎えに行きますから。』
「ハイ、分かりました。」
電話が終わると、響子は携帯を握ったまま両手で胸を押さえてソファに倒れ込んだ。
やっと長岡さんに会える。
会って何をするのか、分かりきっている事だけど、想像するだけで下腹部がキュンと熱くなった。
コメント
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だいぶ時間が経っておりますが、この先の展開に期待していますので、更新をお願いします。
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こっちの方が俺的には続きがきになります
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私はどんな理由があるにせよ、妻が他人にまた開くのは絶対の否定派ですけど***響子さんのところの夫婦みたいな感じなら***なんか浮気もするわな~~~って考えたワァー!浮気しないと壊れそうって思っちゃたね!作者の先生早く続きお願いします。それとラストはスッキリさせて終わらせねぇ!
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コンパクトながらも、響子の日常生活や、それにまつわる不満が、現実感のあるかたちで丁寧に描かれているのは、やはり小説 (と、メンメンさんの力量) ならではだなと感じさせるものがあり、十分にその醍醐味を楽しめました。
「夫の代わりに義両親が同行してきて、楽しいはずの旅行が、余計にしんどかった」(的な) 描写などは、謎のリアリティがあって思わず笑ってしまいました 笑
物語としては未完のようですが、こういったジャンルで私が一番エロさを感じるのは、女性の、理性と欲望の狭間での葛藤と、そこからの快楽落ちなので、個人的にはここまででもひとまず満足できました。