いつもなら幼稚園のバスから降りると母・智恵が優しい笑顔で家の前で待ってくれているはずだったが、その日はなぜか家の前に智恵の姿はなかった。
保母さんが康介に
「お母さんいないね、康介君お家には入れる?」
と聞くと康介は
「うん」
と答えた。
康介
「ただいまぁ!お母さーん!」
家の玄関を開けて中に入ると、康介は少し不安そうな表情で母親の名前を呼んだ。
・・・・・・
返事が返って来ない。
康介の目に涙が溜まる。
小さかった不安が一気に大きなモノへと変わっていく。
エプロン姿で忙しく晩御飯の仕度をしている母・智恵の姿を想像して、早足でキッチンに向かう康介。
しかし、そこにも智恵は居なかった。キッチンには冷たい空気が流れ、静まり返っていた。
康介
「お母さーん!どこにいるのぉ!?お母さーん!」
どうしようもない不安に駆られ、震えた声を出しながら、康介は泣きだしてしまう。
と、その時だった。
・・・ガタガタ・・・ゴソゴソ・・・
静まり返っている家の中で、康介は微かな物音と人の気配を感じた。
康介
「・・・お母さん・・・?」
キッチンから出て、そっと廊下に顔を出す康介。
智恵がいるかもしれないという期待と、何か怖いものが出てくるのではないかという不安が康介の胸の中で入り交ざる。
・・・ドキドキドキドキ・・・
・・・ガタ・・・ゴソゴソ・・・
物音と人の気配は、廊下に面した寝室の部屋から感じる。
康介
「・・・お母さん・・・」
・・・ガチャ・・・
ゆっくりと開く寝室のドア。
・・・・・・
智恵
「・・・ぇ・・・康介?」
寝室から出てきたのが智恵だと分かった瞬間、康介は智恵の所へ駆け寄って勢いよく抱きついた。
涙を流しながら抱きついてきた康介を見て、智恵は申し訳なさそうに謝る。
智恵
「ごめん康介・・・もうこんな時間だったのね。」
康介
「ぅぅ・・・お母さん・・・居なくなっちゃ嫌だよ・・・ぅぅ・・・」
智恵
「ごめんね康介、お母さんが悪かったわ。」
康介
「・・・ぅぅ・・・」
智恵は何度も謝りながら、泣き続ける康介の頭を撫でていた。
少しして落ち着きを取り戻し始めた康介は、智恵の顔を見てある事に気が付いた。
康介
「・・・お母さん、身体の具合でも悪いの?」
智恵
「ぇ・・・どうして?」
康介は智恵が額に汗を掻いている事に気が付いたのだ。髪の生え際もその汗で濡れているように見える。
それに今日の母・智恵はなんだかいつもと違う香りがすると、康介は子供の敏感な嗅覚で感じ取っていた。
康介
「・・・・・・。」
康介が子供ながらにそんな疑問を抱いていると、寝室の中から今度は違う、父親のものでもない、聞いたこともない声が聞こえてくる。
高木
「どうしたんだ智恵?何かあったのか?」
薄暗い寝室から康介の知らない男性が、ズボンのベルトを締めながら出てきた。
智恵
「あ、あの・・・子供が・・・」
高木
「ん?へぇ・・・居たんだ、子供なんて。」
知らない大人を前にして、康介は隠れるようにして智恵により一層強く縋り付く。
智恵
「こ、康介・・・この人はね、お母さんのお友達の高木さんよ。」
康介
「・・・・。」
智恵がそう言っても康介は黙ったままだった。子供ながらに、この高木という男に対して何かを感じていたのかもしれない。
それに母・智恵の様子もどこかおかしいと康介は感じていた。
高木
「フッ、じゃあなんだ、これはあの富田社長のガキって訳か?」
智恵
「ぇ・・・えぇ・・・そうです・・・。」
高木
「へぇ、なるほどねぇ。」
高木は口の端を吊り上げながら、大きな手で母親に抱きついて離れない康介の頭を撫でた。
高木
「フッ、いいなぁ君は。将来トミタグループの社長を継げるんだもんなぁ、羨ましいよ。」
康介はそう言われてもなんの事だかさっぱり分からないといった様子で高木を見上げる。
康介
「・・・オジさん・・・誰?」
康介のその純粋な問いに、高木は少し考えてこう答えた。
高木
「ん?俺か?俺は君のお母さんとこういう事をする男さ。」
高木はそう言って、康介を腕に抱く智恵に顔を近づけて、その唇を奪った。
康介は突然目の前で起きた事に、唖然として目を丸くする。
智恵
「ン・・・ン・・・い・・イヤッ!高木さん・・・止めて下さい!子供の前でなんか・・・」
そんな高木を拒絶する智恵。しかし高木はそれでもニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべてこう言った。
高木
「康介君だっけ?君、向こうの部屋で遊んできなさい。お母さんはオジさんとまだこの寝室でやる事があるからさ。」
智恵
「な・・・何を言ってるんですか高木さん・・・」
康介は何も言う事ができず、ただ母・智恵の顔を見つめている。
高木
「フッ、またヤりたくなっちまったんだよ。いいだろ?」
智恵
「そんな・・・子供がいるんです・・・」
智恵は困惑している。智恵の困惑が子供の康介まで伝わってくる。
高木
「おいおい、お前は俺のなんだってさっき言ったんだ?〝姓奴隷〟だろ?お前に拒否する権利なんてないんだよ、わかったか?」
智恵
「・・・・・・」
高木
「従えないなら俺はお前を捨てるぞ、いいのか?子供には適当に言えばいいだろ?早くしろよ。」
高木はそう言うと、1人で寝室に戻って行った。
智恵
「・・・・・・」
康介
「・・・お母さん?」
智恵は心配そうに見つめる康介の前で考え込むような表情を見せた後、ゆっくりと口を開いた。
智恵
「康介・・・あのね、お願いがあるの。リビングで絵本読んで待ってる事できるかな?」
辛そうな表情でそう言う智恵に、康介は不思議そうに見る。
康介
「お母さん・・・どこかへ行っちゃうの?」
智恵
「ううん、すぐに帰ってくるわ。・・・だから・・・ね?」
康介
「うん、僕待ってるよ。」
智恵
「ありがとう・・・お利口さんだね・・・」
智恵が頭を撫でて手を離すと、康介は智恵の顔を無垢な表情でジッと見つめた後、1人リビングの方へとテクテクと歩いて行った。
智恵
「・・・ごめん・・・康介・・・お母さん・・・もう・・・」
康介の小さな背中を見送った智恵は、涙目でボソっとそう呟くと、薄暗い寝室の中へ入っていった。
それから少し時間が経った頃、リビングで絵本を読んでいた康介の耳に、聞いたことのないような、しかし確かに母・智恵のものである声が届く。
智恵
「アッアッアッ・・・あああ・・・ダメッ・・・激しい・・・ンッンッンッ!!!アンッアンッ・・・!!!」
康介は母・智恵の身に何か起きたのかと思い、座っていたソファから立ち上がる。
心配そうな表情で廊下に顔を出す康介。
高木
「おいおいそんなに良いのか?まったく・・・子供がすぐ近くにいるってのに感じまくりかよ。淫乱にも程があるだろお前は。」
智恵
「アアッ・・・ハァァ・・・ン・・・ん・・・あぁ・・・言わないで高木さん・・・アッアッアッ・・・!!!」
聞こえる。
高木という男の声とギシギシとベッドが軋むような音、そして母・智恵の切羽詰った声が。
康介
「・・・お母さん・・・」
智恵の事が心配になってきた康介。
・・・お母さん・・・あの高木っていうオジさんにイジメられてるのかな・・・
母が心配・・・康介はただその一心で、廊下を歩いて寝室のドアの前まで来た。
智恵
「アアンッ・・・ああ・・・もうダメ・・・ハァァン!・・・高木さん・・・私・・・ああ・・・」
確かに母はこの部屋の中に居る。
そう確信した康介は恐る恐るドアノブに手を掛けて、ゆっくりとそのドアを開けた。
康介
「・・・・・お母さん・・・?・・・大丈夫・・・?」
薄暗い部屋の中は廊下とは違う、生温かくて重いような独特な空気と臭いで満ちていた。
ドアを開けたことで、そこだけ明るくなった場所に康介が立っている。
高木
「・・・ん?ハハッ、おいおい智恵、ちゃんと子供に待ってるように言わないとダメだろ?」
智恵
「ハァハァ・・・・ン・・・・ぇ?・・・康介!?」
髪を乱した母が、驚いた表情でこちらを見つめている。
服も何も着ていない母が、裸でこちらを見つめている。
全身を汗でテカらせている母が、四つん這いになって後ろから腰を高木に掴まれている母が、こちらを見つめている。
康介
「・・・おかあ・・・さん・・・?」
智恵
「・・・ぁ・・・ぁ・・・ダメ・・・康介・・・来ちゃ・・・」
唖然とした目で見つめ合う親子。
高木
「フハハッ・・・こりゃいい・・・康介君!もうすぐ終るからそこで見てなさい。これが君のお母さんの本当の姿だよ。」
高木は狂ったように笑いそう言うと、智恵の腰を掴んだまま、自身の腰を激しく動かし始めた。
智恵
「アッアッアッ・・・・ああ・・・ダメェ!・・・康介ぇ!お願い見ちゃダメェ!!ああああ!!!」
康介
「・・・・・・」
ただ呆然としてドアの前に立ち竦んでいる康介は、乱れる母親の姿を瞬き一つせずに見つめていた。
高木
「ハハハッ!!自分の子供に見られながらイクのか?とんだ変態だなお前は!!」
智恵
「ンンハァァ!・・・もうダメもうダメ!!アッアッアッアッ・・・高木さん・・・あああ・・・」
高木
「智恵!・・・見ろ!子供の目を見ながらイケ!分かったな!?命令だぞ!」
智恵
「ああ・・・そんな・・・許してください・・・アッアッアンッ・・・」
高木
「見るんだ!オラ!見ろ!」
高木はそう言って乱暴に智恵の髪の毛を引っ張って、その顔を康介の方へ向かせる。
康介
「・・・・・・」
母・智恵の目がこちらを見ている。
身体を激しく揺らされながらこちらを見ている智恵の目には、涙が溢れていた。
高木
「はぁはァ・・・そろそろイクぞ!中に出してやる!いいな!?」
智恵は高木のその言葉に、泣きながら何度も頷く。
パンパンパンパンパン・・・・!!!
薄暗い部屋に生々しい肉と肉のぶつかる音が鳴り響く。
智恵
「アッアッアッ・・・ああああ!!!イッちゃう!イッちゃう!アアアアッ!・・・イクッ・・・・イクゥゥ・・・!!!」
高木
「・・・くっ!」
腰だけをピッタリと密着させたままベッドの上で動きを止めた2人は、全身汗だくで身体をビクビクと震わせている。
康介はその光景を黙って見つめ続けていた。
高木
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
智恵
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
裸の男女2人の荒い息遣いだけが聞こえる。
幼い康介には何一つ理解できない光景。
康介
「・・・・・・」
しばらくして母・智恵の身体を放した高木は、自分だけベッドから降りて服を着始めた。
そして身なりを整えた高木は、まだベッドの上で裸のままグッタリとしている智恵の耳元で何かを囁いた後、ゆっくりと康介の方へと近づいて来た。
そして今度は康介の耳元で高木は口を開く。
高木
「・・・君のお母さんはね、どうしようもない変態淫乱女なんだよ。」
高木は子供の康介に向かってそれだけ言うと、寝室を出ていった。
康介
「・・・・・」
高木が居なくなって静かになった部屋。
康介はゆっくりとした足どりで、ベッドの上に横たわる母・智恵の方へ近づいていく。
智恵
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
康介
「・・・・・・・・お母さん・・・大丈夫・・・?」
目を閉じて荒い呼吸をしていた智恵が、康介の声でハっと目を開く。
智恵
「・・・こ・・・康介・・・」
康介
「お母さん・・・」
心配そうに智恵の肌に触ろうとする小さな手。
しかしそんな康介に対して、智恵は反射的に大きな声を上げた。
智恵
「リビングで待ってなさいって言ったでしょ!!!!」
康介は智恵の大きな声に一瞬驚いた表情を見せた後、目に涙を溜めた。
康介
「ぅぅ・・・ごめんなさい・・・だって・・・お母さんが・・・ぅぅぅ・・・」
そう、康介はただ母の事が心配で来たのだ。
智恵に大声を出された事で康介は自分が悪い事をしてしまったんだと思い、涙を流し始める。
しかしそれよもも先に泣き崩れたのは、母・智恵の方だった。
智恵
「ああ・・・ごめん康介・・・許して・・・ぅぅ・・・許してぇ・・・ぅぅ・・・」
そう言って智恵は泣きながら康介を抱きしめた。
髪の毛をボサボサにしたまま、顔をクシャクシャにして、智恵はまるで子供のように大泣きした。
康介もどうしたら良いのか分からずに、ただ智恵といっしょに大泣きした。
智恵
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ぅぅ・・」
ひたすら耳元で聞えた智恵の謝る声が、呪文のように耳から離れない。
母・智恵が康介の前から突然姿を消したのは、それから数週間後の事だった。
コメント
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コメントありがとうございます。
ピピから来て頂けたという事で、ありがとうございます。
そんな風に褒めてもらえるなんて、凄く嬉しいです。
水野果歩の物語はかなり長編ですから、読者の方に付いて来てもらえてるか心配な時もあるんですが、そう言ってもらえると安心します。
もうこの物語もそろそろ終盤ですが、最後まで果歩と富田さんの事を見守って頂けるなら嬉しいです。
調教モノは僕も初めてだったので上手くできたか分かりませんが…これからも色々なジャンルを書いていきたいと思ってますので、また良かったらチェックしてみてください。
期待に応えられるように一生懸命頑張りたいと思います。
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正直僕にも想像つきませんが、富田さんが受けたショックは相当なものでしょうねぇ…トラウマになるのも仕方ないですね。
母親がどうして出て行ったのか、みたいな事は実は書く予定はないんですが、僕の中では高木の所へ行ってしまったという設定にしてます。
どうして康介を連れて行かなかったかという疑問も出てくると思うのですが、トミタグループの跡取りを連れて行く訳にはいかなかったとか…そういう感じで設定してますが、皆さん納得しないかな?
燃えた身体を発散するシーンが少なくてごめんなさい(笑)
エッチなシーンはあと少しだけかなぁ…水野果歩に関しては。
新作の方でエロいの頑張ります☆
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嬉しい言葉、ありがとうございます。
あーそうですねぇ…やっぱり親からの愛情の受け方次第って感じはありますもんね。
実は富田さんはこの【女子大生水野果歩】とは別の物語にも登場する予定はあります。それが過去の話か未来の話かはまだ言えませんが…まぁ別に言ってもいいんですけど、一応お楽しみにって事で(笑)
そろそろ本当に終盤ですね。今月中に終るかどうかって感じです。
はい、頑張ります。
季節の変わり目は体調崩しやすいですし、京香さんも気を付けてくださいね☆
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作者の僕自身富田さんみたいな体験はした事がないので、あのような感情はまったくの想像で書いている訳ですが、そういった感想を頂けてホッとしてます。
僕の文章でちゃんと伝えたい事が伝わってるかどうかは、読者の方から聞かないと分からないので。
ありがとうございます☆
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ピピで果歩ちゃんに出会ってからずーっと読み続けています。
調教物はちょっと苦手なジャンルだったんですが、この物語は最初から引き込まれてしまいました。
メンメンさんの文章力と、果歩ちゃんの汚れてしまわない可愛らしさが魅力なんだと思っています。
富田さんの過去が明かされ始めていますが、寂しがり屋の二人がよい方向に行ってもらいたいです。(個人的願望ですが…)
では、最後まで楽しみにしています。
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大好きなお母さんを知らない男の人が蹂躙している。
その時は訳がわからなくっても、年頃になれば十分に理解出来る。
何とも悲しいせつない話。
当時のトラウマが鬼畜(笑)な富田さんを生んだのですね。(*_*)
高木は何て囁いたのか?
富田母は何故、家を出たのか?
早く知りたい~。(≧∇≦)
もう、身体が疼いて来ました。
美桜、燃えた身体をどうして静めようかしら……。(゜∇゜)エッチ~(笑)
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やはり母性でしたね…逆にM女性は父親に何かトラウマがある人が多いですね。
底が母性を求めるならば、やはり果歩ちゃんでは、いろんな意味で無理でしょうね(苦笑)
別ストーリーで、果歩ちゃんと終わった後の、【富田さんのその後】が読みたくなってきました♪
読者、我儘言いたい放題です(*≧m≦*)
次回、その次かな?物語は一気に終盤へ!って感じでしょうか?
サラリと読める官能小説も好きですが、深い…この物語の良さが大好きです♪
体調崩さないように頑張ってくださいね♪
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頭に思い描くことができる。まるでそこにいるように。子どもの富田さんの描写が鮮やかで。思いが重なって。辛いけど。それでも、もっと富田さんを知りたい。って思って、むねがきゅってなる。