官能小説 人妻 吉井香苗(13)

頭の中をグラグラと揺らされているような気分だった。

パンッパンッパンッ……!と柔らかな肌がぶつかる音と、激しくベッドが軋む音。

恭子 
「アアアハァァン!アッアッアッンーーー……ァアッアッアッ……」

恭子の切羽詰りながらも、どこか悦楽に浸っているかのような喘ぎ声。

激しい性交音を聞く事だけに集中してしまっている香苗は、まるで自分が身体を激しく揺らされているような感覚を覚える程に、中嶋に責められる恭子にシンクロしていた。

香苗 
「ハア…………ゴク…………」

半開きになった口、いつの間にか乱れている呼吸。

そんな事にも自分で気付かない程に、香苗は他人のSEXを盗み聞きする事にのめり込んでいった。

恭子 
「ハァァ……アッアッアッ…ダメ…もうダメェ…ンッンッンッ!」

恭子が徐々に興奮を高めていっているのが分かる。

……こんなにも声をあげて……

香苗は結婚はしている訳だし、当然SEXは経験している。だから他の多くの人々が知っているSEXを、自身も知っていると思っていた。

新婚ではないが、まだ結婚して数年、夫婦の性生活も決してセックスレスなどではないし、夫・祐二との抱き締められながらの愛情あるSEXに、香苗は満足感を得ていたし、不満などなかった。

しかし、今耳に届いている恭子のあられもない喘ぎ声は、そんな香苗にカルチャーショックを与えていた。

なぜなら、香苗はSEXの時にそんな風に声を上げた事がなかったからだ。

我を忘れているかのような喘ぎ声。理性も何もかもを無くしているかのような喘ぎ声。

それに、このベッドの軋む音、息遣い、パンッパンッパンッ!と肌がぶつかる音。
その全てが激しいもので、今隣の部屋で行われている男女の性行為が、香苗が今まで経験してきたSEXと同じものだとはとても思えなかった。

……SEXってこんなに激しいものだったの……?

まるで未知の世界を覗き見、いや、盗み聞きしているかのようだった。

恭子 
「ハァァアッアッンッンッ……!」

ギシギシギシギシッ……!!!

恭子 
「アッアッ…ンーー……アッアッイクッ……イクッ……ンァアアッ!!」

……

香苗 
「……。」

ベッドの軋む音が止み、恭子の荒い息遣いだけが聞こえる。

恭子 
「ハァ……ハァ……ン……ハァ……」

恭子の口から漏れた〝イク〟という声。香苗にはその〝イク〟という意味に心当たりがあった。

絶頂……

女性の身体が性的快感の頂に達した時にそれを経験するという事は、香苗も知識としてはもちろん知っていた。
そう、知識としてだけは。

絶頂という感覚がどういったものなのか、まだハッキリとは知らない香苗は、自分がその絶頂を経験した事があるのかないのか、それさえもよく分からなかったのだ。

しかし恭子の反応を聞いていると、恐らく自分はそれを経験した事がないのだろうと、香苗は思った。

恭子 
「ハァ……もう……やっぱり英治凄いよぉ…ハァ…」

中嶋 
「へへッ、また派手にイッたなぁ恭子ぉ、隣まで聞えてたんじゃないか?お前声出し過ぎなんだよ。」

恭子 
「ハァ……だって……我慢できないんだもん……あっ!やだぁ窓開いてるじゃない!」

そんな恭子の慌てたような声の後に窓が閉まる音がして、恭子達の声は聞こえなくなってしまった。

香苗 
「……。」

香苗は集中して耳をすましてみたが、2人の声はやはり聞こえない。

代わりに静まり返った夜の街から救急車の走る音が聞こえる。

……や、やだ…私、何やってるのかしら……

2人の声が聞こえなくなった事でやっと我に返った香苗は、1つ深呼吸をしてから、しゃがんでいた体勢からゆっくりと立ち上がった。ずっとベランダでしゃがんでいたから、脚が少し痺れている。

まだドキドキと胸の鼓動が高鳴り続けていて、身体もまだ熱を帯びたままだ。もちろんそれは今日飲んだお酒の影響だけではない。

香苗は洗濯物を抱えて、そっと足音を立てないように意識してゆっくりと自室へと入っていき、そして窓も同様に音をたてないようにそっと閉めた。

香苗 
「はぁ……」

リビングのソファの上に洗濯物を置くと、香苗はため息と共にソファの空いている場所に腰を下ろした。

香苗 
「はぁ……なんか疲れたぁ……」

久しぶりのお酒、そして先程の非日常的な体験。気疲れなのか、香苗はグッタリとソファの背にもたれた。

……すごいの…聞いちゃったなぁ……

恭子の喘ぎ声はまだ鮮明に香苗の頭の中に残っている。

『ンーー……アッアッイクッ……イクッ……ンァアアッ!!』

香苗 
「あ~ダメダメ、忘れよっ。」

香苗は頭を横に振りながらそう呟くと、ソファから立ち上がり、汗を流すためにお風呂場へと向かった。

……他人の生活を盗み聞きするなんて…何やってるのよ私ったら…忘れないと……忘れないとダメだわ……

そうもう一度自分に言い聞かせる香苗。

しかし、人間は一度頭の中に入ってしまった刺激的な体験を、そう簡単には忘れる事はできない。

そして今日のこの体験が、香苗の中の何かを狂わせ始める事になるのであった。

コメント

  1. かおる より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    幻想文庫からおじゃましました。
    続き楽しみにしてます。

  2. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    今後の展開楽しみです(=^▽^=)

  3. メンメン より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    かおるさん初めましてこんにちは。

    コメントありがとうございます。

    おお!そうですかぁ幻想文庫さんから…ありがとうございます。

    期待に応えられるように頑張ります。

  4. メンメン より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 今後の展開楽しみです(=^▽^=)

    コメントありがとうございます。

    はい!できるだけご期待に応えられるように頑張ります!

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