官能小説 人妻 吉井香苗(22)

祐二 
「……香苗?お~い香苗!」

香苗 
「……えっ!?」

祐二 
「え?じゃないだろ、さっきからどうしたんだよ、ボーっとしちゃってよ。」

香苗 
「べ、別に、何でもないけど……。」

夜遅くに帰ってきた祐二、今日も遅い晩御飯だ。

こういう時は先に食べた香苗もテーブルに付いて、祐二と会話をしながら食事に付き合う。

しかしいつもなら楽しく色々な話を香苗からしてくるのだが、今日の香苗は何やら様子が違っていた。

どことなく上の空といった感じだ。

祐二 
「何か悩み事でもあるのか?」

香苗 
「ううん、そんなの無いけど……。」

本当は中嶋の事について祐二に相談したかった。

恭子の彼氏、中嶋が怖いと。

でも香苗にはなぜかそれを祐二に話す事ができなかった。

きっと言っても気のせいだとか言われるかもしれないし、祐二に話した事で何かトラブルになって恭子との友人関係が崩れてしまうかもしれない。

だから、香苗はまだ言えなかった。もう少し様子を見てみようと……。

祐二 
「さて……風呂入って寝るかぁ、明日も忙しいし。」

香苗 
「明日も遅いの?」

祐二 
「あぁたぶんな。この忙しさはしばらく続きそうだよ。」

香苗 
「そっかぁ……。」

今は祐二に余計な気を使わせたくない。こんなに仕事を頑張ってくているのだから。

次の日、いつも通り仕事へ行く祐二を見送った香苗は、洗濯や掃除などの家事を始めた。

しかし家事といっても今はまだ祐二と2人暮らしなので、それほど量が多い訳ではない。

もちろん忙しい日もあるのだが、今日に限っては昼前にやるべき事はやり終えてしまった。

主婦のやるべき仕事を終え、紅茶を飲みながら一息ついた香苗は、パソコンへと向かう。

実は香苗はネット上に個人ブログを開設していて、そこで毎日自分が作った手料理の写真と日記を掲載している。

なんとなく自分が作った料理を誰かに見てほしいなぁと思い気軽に始めたブログだったのだが、今では1日のアクセス数が百単位であり、結構な人気になってしまった。

そのためある種のやり甲斐も感じ始めていた香苗は、いつの間にかブログを更新する事が日課になっていたのだ。

香苗 
「さてと……。」

いつも通りパソコンを立ち上げ、ブログの記事を書き始める香苗。

と、その時だった。


「……だろ…………いいじゃねぇか……」


「……え~……でもさぁ……」

微かに聞こえる男女の話声。

香苗 
「……えっ?……これって……」

思わず驚いたようにそう呟いた香苗。

またも香苗の耳に届いてしまった隣の部屋からの声。

男の声は明らかにあの中嶋のものだった。

……今日も…なの……?

どうやら今日も中嶋は隣の部屋に居座っているようだ。

香苗 
「……でももう1人…この声って……」

香苗は女性の方の声を聞いてさらに驚いた。

今日の女性の声は、昨日の女性の声とは全く違ったのだ。

香苗 
「……どういう事なの……?」

しかしその答えは当然少し考えれば分かった。

中嶋は恭子でもない、昨日の女性でもない、3人目の女性を隣の部屋に今連れ込んでいるのだ。

……何なのあの人……

昨日は恭子という恋人をもちながら浮気している中嶋に腹が立ったが、まさかまだ別に違う浮気相手がいたとは…もはや香苗の常識では考えられない事であった。

中嶋という男の感覚が全く理解できない。


「ァ……ン……ァ……アン……」

程なくして隣から女性の喘ぎ声が聞こえてきた。

香苗 
「……やだ……」

恭子の喘ぎ声を聞いてから同じような事がこれで3度目だ。

まるでデジャヴを体験しているかのようだった。

そしてその声を聞いた香苗は、昨日と同じように胸の鼓動が速く、そして身体熱くなっていくを感じる。

香苗 
「……はァ……」

またも思わずその声に聞き入ってしまう香苗。

しかし香苗は少ししてから直ぐに我に返った。

……だめっ!もう聞きいちゃいけないんだから!……

ハッとして目を覚ましたように椅子から立ち上がると、香苗は喚起のため開けていた窓を閉めに向かった。

開いている窓に近づくと、やはり女性の喘ぎ声はよりハッキリと聞こえてくる。

女性のリアルな喘ぎ声を聞いてたり、隣で行われている事を想像すると身体熱くなる。しかし中嶋という男の事を考えると嫌悪感が沸いてくる。

そんな2つの気持ちが入り交ざった複雑な感情を抱きながら、香苗はゆっくりと窓を閉めた。

香苗 
「……。」

それでもやはり耳をすますと微かに声が聞こえてくる。

香苗はその微かな声も聞こえないようにと、部屋に音楽をかけた。これで声は聞こえない。

しかしそれでも動揺による胸の高鳴りはしばらく治まらなかった。

そんな自分自身の動揺を紛らわすかのように香苗は再びパソコンに向かい、ブログの記事を書き始めるのであった。

コメント

  1. nona より:

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    いつも楽しく読ませていただいてます。
    ところで質問があるんですけど、メンメン様は、小説内の主人公やお相手となる男性の名前はどのように決めているんですか?
    果歩、富田、香苗、中島は、それぞれモデルとなった名前の方がいらしたんでしょうか?

    実は私もネットで小説を書いているんですが、メンメン様の名付けセンスと自分の名付けセンスは全く違うなぁと感じて(自分だったら絶対に考え付かない名前です)、ちょっと気になりました。

    ちなみに私は、女子の名前は花の名前もしくは自然の物に関連のある漢字を入れる傾向があります。

    長文失礼いたしました。

  2. メンメン より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます。

    そうなんですかぁ、小説書いてる方に読んでもらえてるなんて嬉しいです。ネットで小説書くのって楽しいですよね。

    登場人物の名前の事なんですが、僕のイメージでなんとなくで決めてしまってます。
    果歩はなんとなく可愛らしいイメージで、富田さんはなんとなくスポーツマンタイプ?みたいな感じで。

    名前は違うけどモデルになった人はいます。
    モデルって言っても果歩の同じような体験をしている訳ではないのですけど、知り合いとか友達とか……勝手にその人を使って頭の中で想像を拡げて物語を考えたり、この人と同じイメージで別の名前はどんなものがあるだろうって考えたりしてます。

    花や自然のものからイメージして名前を考えるのって良いですね。季節の漢字でも人の性格とかイメージとかってありますもんね。

    僕のイメージだと、春は穏やかおっとり、夏は活発で元気、秋は真面目、冬は大人しい……とまぁ人それぞれ色々なイメージがあるとは思うんですけど、やっぱり自分の頭の中で物語を創作していく上で、登場人物の名前って凄く重要ですよね。

    ちなみに、僕自身の『メンメン』って名前は結構後悔してます。センス無いなぁって(笑)どこかのタイミングで改名したいです。

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