香苗
「……どうしよう。」
インターホンモニターのボタンを押すのが怖かった。
もし今感じている嫌な予感が当たってしまったら……。
そんな事を思いながら香苗がなかなか出る事ができないでいると、もう一度ピンポーンと呼び出し音が鳴る。
なんだか急かされているような気分で、香苗は恐る恐るインターホンモニターのボタンを押した。
そしてモニターにドアの外にいる人物が現れる。
香苗
「あっ……」
それを見た瞬間にそう声を上げた香苗、予感は的中してしまっていた。
モニターに映った人物はやはり中嶋だったのだ。
中嶋 『こんばんわぁ!中嶋ですけど。』
少し大きい中嶋の声がスピーカーから聞こえる。
しかしモニターのボタンは押したものの香苗はなかなか声を出してそれに応える事ができなかった。
昼間に盗み聞きをしていた時のように胸の鼓動が早くなり、緊張で声が胸の辺りで詰まってしまう。
それにもし昼間の事で変な事を聞かれたらどうしようという思いもあった。
中嶋 『あれ?奥さん?もしも~し!』
香苗
「……。」
中嶋
「昨日のタッパお返しに来たんですけどぉ。」
香苗
「えっ?」
中嶋のその言葉を聞いて香苗はハッとして思い出した。
そうだ。昨日カレーを中嶋の所へ持って行った時にタッパごと渡したのだった。
中嶋はそれを返しに今来た。それは普通に考えてみればごく当たり前の行為。
恭子だって前に隣に住んでいた人だって、料理を持って行った次の日にはタッパを返しに来てくれた。
未だに中嶋に対しての警戒感はあるが、それなら出ない訳にはいかない。
香苗
「ぁ……あの……ちょっと待っててください。」
香苗は緊張気味に震えた声でそうモニターに向かって応える。
中嶋
「なんだ、やっぱ居るんじゃん。」
中嶋のその声を聞いた後モニターの前から離れた香苗は、洗面台の鏡で自分の顔と格好をチェックしてから玄関に向かった。
しかし玄関まで来て、ドアノブに手を掛けた所で香苗の動きは止まってしまう。
香苗
「……。」
このドアを開ければ目の前にあの中嶋がいるのだ。
そう思うと、やはり緊張してしまう。
しかし逆に少し冷静に考えてみるとなんて事は無いかもしれない。
ただタッパを返してもらうだけ、それだけなのだから。
タッパ受け取り、そしてそれだけできっとすぐに帰ってくれる。
香苗
「……ふぅ……」
自分を落ち着かせるかのように1つ深呼吸をしてから、香苗はゆっくりとそのドアを開けた。
中嶋
「ん……おお、こんばんは。」
香苗
「こ、こんばんは……。」
予想通りというか当たり前なのだが、ドアの向こうには中嶋が居て、笑顔で挨拶をしてきた。そしてそれに香苗も応える。
一目見た中嶋の姿、身体はやはり大きく逞しい。
それに男らしい独特のオーラを感じる。
中嶋
「いやぁ、昨日はありがとうございました。カレー超美味かったですよ。」
香苗
「そ、そうですか……それならよかったです。」
中嶋
「やっぱり奥さん料理上手なんですねぇ。」
香苗
「そ……そんな事……」
早くタッパを渡してもらって帰ってほしかった。
香苗はずっと斜め下を向いて中嶋の顔を見ることができない。
顔が熱い。きっと今自分は顔が真っ赤になっている。
そんな顔、中嶋に見せたら簡単に心の中を見抜かれてしまいそう。
中嶋
「……ところで奥さん、今日はずっと部屋に居たんですか?」
香苗
「……ぇ……?」
何気なく出てきた中嶋からのその問いに香苗は戸惑った。
なぜ突然そんな事を聞いてくるのか。
中嶋
「いやまぁ、あれでしょ?旦那さん出張なんでしょ?」
香苗
「ぇ……えぇ……。」
中嶋
「ずっと1人で部屋にいるんじゃ、奥さんも退屈でしょう?」
香苗
「ぇ……あの……」
中嶋
「退屈だったんでしょう?奥さん。」
香苗
「……それは……」
そうニヤニヤと笑みを浮かべながら言ってくる中嶋。
そんな中嶋の言葉に対して香苗は目が泳ぎ、明らかに動揺を見せている。
どう考えても中嶋はある意図があってそう聞いてきているのだと、香苗にも分かったからだ。
中嶋
「いやねぇ、俺も恭子がいなくて退屈してるんですよぉ。」
香苗
「わ……私は別に……えっ!?」
香苗が思わずそう驚きの声を上げたのは、香苗が少しだけ開いていたドアを、中嶋が手で強引に開けてきたからだ。
そしてドアを開けたかと思うと次の瞬間、中嶋は身体をドアの間に割り込ませるようにして玄関の中にまで入ってきたのだ。
香苗
「え、あ、あの、中嶋さん?」
中嶋
「旦那さんが居ないと寂しいでしょう奥さん、ちょっと色々と話しませんか?ほら、この前の食事会以来ちゃんとした会話してなかったじゃないですか、俺達。」
香苗
「で、でもあの……そんな突然……。」
中嶋
「ハハッ、いいじゃないですか、そんな気を使う事ないですよ、仲の良いお隣同士。ほら、俺酒持ってきたんですよ。」
そう言って手に持っているコンビニの袋に入った缶ビールを香苗に見せると、中嶋は靴を脱いで勝手に香苗達の部屋の中へと上がり込んでいく。
香苗
「ちょ、ちょっと中嶋さん、困りますそんな勝手に。」
中嶋
「大丈夫ですよ、つまみもちゃんと買ってきましたから。」
香苗
「そ、そういう意味じゃなくて……ホントに困ります中嶋さん。」
そんな香苗の言葉を無視するかのように、中嶋はドカドカと廊下を進んで行ってしまう。
……うそ……イヤこの人……なんなのよ……
常識を超えた中嶋の行動。
その全く予想外の展開に香苗は困惑し、心は大きく動揺していた。
コメント
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メンメンさんお久しぶりです。
元富田ファンです。
いよいよですね♪
わくわくします♪
香苗さんを思いっきり気持ちよくさせてあげてください!!!
明日を楽しみにしています。
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展開していってますね♪
前回のコメントにありましたが、
羞恥系でも変態度高い場合もありますよ♪
もしかしたら、より官能小説を楽しめるのは羞恥系かもしれませんね^^
(AV的ではなくて、じわじわ盛り上がっていく感じ?)
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おおお!富田ファンさん!お久しぶりです!
コメントありがとうございます、これからは由美さんですね。
今回も予定外に焦らす部分が長くなってしまって……わくわくして頂いているなら良かったです。
これからが大事なシーンですね。期待に応えられるように頑張ります。
今回もできるかぎり濃厚にいきます!
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京香さんこんばんは☆
コメントありがとうございます。
羞恥系は特に女性の方は良いんじゃないかなぁと思って書いているのですが、やっぱり文章の表現が難しいですね。難易度が高いというか…。
女性にとっての本当に嫌な領域と、その中に微かに潜む悦びの部分。人それぞれ性癖とか個人差があると思うのですが、それを探りながら書いてる感じです。
そうですね、その興奮がジワジワと身体を支配していく感覚が伝われば成功だと思うのですが、勝負はこれからですね。
途中結構苦悩してましたが、新しい事にチャレンジしているようで、書いていて少しずつ楽しくなってきました。