正人がバンコクに発ってから1週間。
早朝、目が覚めた時に隣に正人が居ない事にまだ慣れない。
正人よりも早く起きて、正人の寝顔を見てから
「よし、朝ごはん作ろう!」
とやる気スイッチを入れるのが真弓の毎日の習慣だった。それがないのはやっぱり少し寂しい。
ベッドから降りて、寝室のカーテンを開け、朝日の光を浴びながら背伸びをする真弓。
「ん?」
ふと、庭に目をやると、家を出て行こうとする拓実の姿が見えた。
「こんな朝早くにどこに行くつもりかしら。」
真弓は2階から窓を開けて見下ろす格好で拓実に声を掛けた。
「拓実くーん!どこに行くのぉ?」
「あ、真弓さん、おはようございます!ジョギングですよ。最近運動不足だったから身体動かそうと思って。」
「へぇ~。」
「早朝ランニングは気持ち良いですよ、空気も澄んでますし。じゃあ行ってきます!」
「うーん……あっ拓実くーん!ちょっと待って!私も一緒に行くぅ!」
真弓は急いでスポーツウェアを取出し着替えると、上機嫌で庭で待っている拓実のもとへ駆け寄った。
「お待たせ~」
「やる気満々ですね真弓さん。」
「うん、なんか急に走りたくなったの。」
「ハハッ、なんか真弓さんらしいですね。じゃあ行きますか。」
「うん。」
既婚女性が外で夫以外の男性と2人でジョギングだなんて、普通なら近所の目が気になるところだが、真弓はそんな事は気にしてなかった。
どうせこの辺りは高齢者ばかりだし、あまり近所との交流もないから、真弓が男と2人で走っていても、隣にいる男性が夫ではない事には誰も気づかないだろうし、そもそも誰もそんな事気にしないだろう。
実際、真弓と拓実は家を出た所でご近所のお婆さんに
「あら、ご夫婦で?仲が良いのねぇ」
と言われてしまった。
このお婆さんは夫の正人の顔さえ覚えていないのだ。
「あはは、ご夫婦だって。」
「そう見えたんですかね。」
真弓と拓実はクスクスと笑いながら並んで走って住宅街を抜け、河川敷のランニングコースへ入っていった。
「真弓さん、結構走れるんですね。なんだかフォームも綺麗だし。」
「ウフフ、実は私、中学の時は陸上部だったんだよねぇ。だから元々走るのは好きなの。」
「へぇ、どうりで。」
「私、結構運動神経良いんだよ、体育の成績だけは5段階評価でずっと5だったから。」
「そうなんですか、意外ですね。料理上手で家庭的だから、インドア派かと思ってたんですけど。」
「市の駅伝大会にも出た事あるんだよ、しかもその時私達の中学が優勝したの。凄いでしょ?」
「優勝ですか、それは凄いですね。」
「拓実君もサッカー部だったんだから結構持久力あるんじゃない?」
「そうですね、毎日ボール追いかけて走りまくってましたから。」
「ポジションはどこだったの?」
「フォワードですよ。」
「フォワードって一番目立つポジションだよね?じゃあ女の子にモテたでしょ?」
「全然モテませんよ。ていうか俺、男子校だったんで。」
「えっ!?そうだったんだぁ、あっそう言えば女の子とデートもした事ないって言ってたもんね。」
「共学の所に行ってればなぁ、マジでそれだけは後悔してます。」
「大丈夫だよ、拓実君なら大学に行けば絶対彼女できるから。」
「そうだと良いんですけどね。俺、なんか女の子と話すの苦手で。」
「え~どうして?普通に私といつも話してるように話せばいいじゃない。」
「俺、なんか緊張しちゃうんですよ。真弓さんとだって最近やっと顔見て話せるようになったんですから。」
「あはは、確かに拓実君って私と話す時いつもオドオドしてたよね。でも拓実君のそういう所、可愛いと思うよ。」
「男が可愛いなんて言われるのは、男として見られてない証拠じゃないですか。」
「うーんそんな事ないと思うけどなぁ、可愛い男の子が好きって女の子もいるよ。あ~もし拓実君に彼女ができたらデートを覗きに行きたいなぁ、どれくらいオドオドしてるか見てみたい。」
「俺結構コンプレックスなんですよ、あがり症なの。真弓さん面白がってるでしょ?」
「あはは、うん、だって拓実君をからかうの楽しいんだもん。」
「意地悪だなぁ。」
「拓実君ってオドオドしてる時いつも顔真っ赤になるよね、あれもすっごい面白いよ。」
「……俺も真弓さんの弱点を早く見つけないとなぁ。このままじゃ真弓さんにずっとからかわれる事になるし。どこかで反撃しないと。」
「うふふ、じゃあ見つけたら教えてね。」
結構長い距離だったけれど、2人で話しながら走ってたらあっという間だった。
話しながらだと息が余計に上がってしまうのだけれど、それでも拓実との会話は楽しくて止められなかった。
「ハァハァ…なんか真弓さんと走ってると疲れが倍になりますね。」
「あはは、良い運動になったでしょ?」
そして家に着いた真弓は
「ふぅ~走った走った」
と言いながら空を見上げた。
――正人が居ないのは少し寂しいけど、こうやって拓実君と過ごす時間は楽しいし……うん、大丈夫。正人、私は元気でやれてるからね――
海外にいる夫に、真弓はそう心の中でメッセージを送った。
コメント
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いつも同じ展開は飽きました
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ここでタクミは真弓の巨乳に気付き、走って揺れる豊満な胸を横目で見ながら走ってたんですね。
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もっと真弓のオッパイ描写が見たい。