海水浴に誘うなんて、結にしてはかなり大胆な提案だったが、砂上は二つ返事で喜んでくれた。
そして後日、二人は海水浴に行くことに。
行き先は熱海。距離があるので温泉旅館にも一泊することになった。
温泉旅館に泊まるのは砂上からの提案だった。
旅館に一泊するということは、おそらくここで砂上と身体を重ねることになるんだろうなと、結は思った。
初めてできた恋人との旅行は、楽しみであるのと同時に、夜の事を考えると緊張で胸がドキドキしてしまう。
旅行当日は雲ひとつない快晴に恵まれ、まさに海水浴日和だった。
結はこの日のために、新しい水着(白のビキニ)を購入していた。
海で遊ぶこと自体が子供の頃以来で、人前で水着姿になるのはたまらなく恥ずかしかったが、〝砂上さんと一緒なら〟と思い切って選んだものだ。
「砂上さん、お待たせしました。」
水着に着替えて砂上の元に行くと、結の水着姿を見て砂上は目を丸くしていた。
「めちゃめちゃ似合ってますね。」
「ありがとうございます。」
砂上が水着姿を喜んでくれて、嬉しくなる結。
普段、会社では隙のない白衣姿で過ごしている理系女子のビキニ姿は、太陽の下で眩しいほどに輝いていた。
モデルのように細身でありながら、女性らしい柔らかな丸みを帯びた素肌は透き通るように白い。
小さな布地に包まれた豊満な胸と、ふっくらと張りのあるお尻。
その可愛らしくも色気のある姿は、無意識のうちに男性の目を釘付けにしてしまう魅力に溢れていた。
少し動くたびに豊かに揺れる胸元へ、砂上の視線がつい吸い寄せられてしまうのも無理はない。
それだけ結の身体に魅力があるということだ。
結は彼の熱っぽい視線に羞恥を覚えながらも、砂上が自分を見てくれることが嬉しかった。
その後、二人は童心に帰ったように海水浴を楽しみ、お昼には結が朝早く起きて用意した手作り弁当を並んで食べた。
そして午後もしっかりと海を満喫したあと、宿泊先の旅館へ移動した。
砂上が予約してくれていた旅館は趣のある素晴らしい宿で、結のテンションも自然と上がっていた。
「すご〜い!お部屋のお庭に露天風呂!」
「気に入りました?」
「はい!素敵な旅館ですね!」
「温泉、入りましょうか。」
「え?」
「あ、まずは大浴場の方に……です。」
「あっ、はい!」
部屋の設備にドギマギしながらも、まずは男女別の大浴場で海の汗を洗い流す。
湯上がりには浴衣に着替え、部屋で豪華な夕食をいただいた。
美味しい料理が、大好きな恋人と向かい合って食べることで何倍にも美味しく感じられる。
初めてできた恋人と過ごす、初めての旅行。
見るもの触れるものすべてが新鮮で、結は胸がいっぱいになるほどの幸せを噛み締めていた。
——そして今夜、私はもう一つの〝初めて〟を体験する事になる。——
そう決意をしていたはずだった。
しかし、食後。慣れないお酒を飲んで少し酔いが回ってしまった結は、敷かれた布団の上でついウトウトとうたた寝をしてしまったのである。
やがてハッと目を覚ました結は、猛烈な後悔に襲われた。
——せっかくの旅行で、砂上さんとの貴重な夜の時間だったのに……——
慌てて周囲を見渡すが、部屋の中に砂上の姿はない。
どこへ行ったのだろうと探していると、庭の方からかすかに水音が聞こえてきた。
どうやら、砂上は部屋付きの露天風呂に一人で入っているようだった。
「砂上さん……」
「あ、すみません!結さん寝ちゃってたので一人で入ってました。」
「そうですか……」
「あ、結さんも入りますか?僕はもう上がりますので。」
慌てたように過剰な気遣いを見せる砂上。
彼の優しさは痛いほどよくわかっているけれど、結が求めているのはそういう気遣いではなかった。
「大丈夫です、そのままで……私も入っていいですか?」
身体にほんのりと残るお酒のせいか、それとも夜の空気がそうさせたのか。結は自分でも驚くほど大胆になっていた。
——だって……砂上さんと一緒にお風呂入りたいから……——
「え!?……む、結さんが大丈夫なら……あの……はい!じゃあ待ってますね。」
砂上は結の思いがけない提案にひどく驚きながらも、声には明らかな喜びが滲んでいた。
結は部屋に戻ると、帯を解いて浴衣と下着を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿になった。
心臓が早鐘を打ち、口から飛び出してしまいそうなほどドキドキしている。
男性と一緒にお風呂に入るのも、男性の前で裸を晒すのも、結にとって正真正銘の初めてだ。
深呼吸を一つして、結は裸のまま、夜風の吹く庭へと足を踏み出した。
「砂上さん、こっち……向かないでくださいね。」
「は、はい……」
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