居候と人妻 真弓(16)

パジャマの上から夏用の薄いカーディガンを羽織って寝室を出る真弓。

ずっとドキドキしながらしてた拓実との電話。その昂揚感がまだ続いている。

真弓は母屋を出て、拓実がいる離れの家へと向かった。

深夜にこっそりと家を出る、まるで夜這いに行くかのような行為に、妙な胸の高鳴りを感じてしまう。

真弓達が住んでいるこの屋敷は、庭の周囲が高い塀で囲まれているから、敷地内のプライバシーは完全に守られている。母屋でも離れの家でも、広い庭でも、何をしようと誰かに文句を言われる事はない。

そういう特異な環境が、心を緩める原因になっていたのかもしれない。

離れの家のドアをノックすると、拓実がドアを開けてくれた。


「ホントに来ちゃったよ。」


「……はい。」


「いいの?」


「はい。ど、どうぞ入ってください。」


「……じゃあ、お邪魔しまーす。」

この部屋を拓実に貸し出してから、真弓がここへ入るのは初めての事だった。

部屋の中は汚いとまでは言わないが、お世辞にも綺麗とは言えない。飾り気は皆無で、それなりに物が散らかっている。


「すみません散らかってて、今急いで少しだけ片づけたんですけど。」


「ううん全然いいよ、男の子の部屋って感じだね。」


「適当に座ってください……って言っても座る所ないですね。」


「いいよ、私ここに座るから。」


「あ、じゃや布団退かしますね。」

椅子は勉強机の前に1つあるだけでソファもないから、真弓はベッドに座った。


「なんか不思議な感じ。離れの家に来ただけなのに、男の子のアパートに来てるみたい。」


「部屋の雰囲気変わりましたか?」


「うん、拓実君が来る前は空き家で半分物置みたいな部屋だったからね。」


「そうですか。あ、真弓さん何か飲みます?って言ってもお茶しかないんですけど、お茶でいいですか?」


「うん、ありがとう。」


「じゃあ持ってきますね。」


「そっか、この部屋には冷蔵庫もあるんだったね。」

拓実がお茶を持ってくるまでの間、何気なしにベッドの周りの見渡す真弓。

すると真弓が自分の足元にあったある物に気付く。


「……あれ?なんだろう?」

ベッドの下に何かある。きっと拓実が慌てて隠そうとして奥まで押し込めていなかったのだろう。

それはある雑誌本だった。

どんな本なのか気になって手に取る真弓。


「……えっ、これって……」

男がベッドの下に隠す雑誌と言えば、もう決まっている。

それはいわゆるエロ雑誌だった。

そしてお茶を持ってきた拓実がそれに気付く。


「うわっ!ちょ、真弓さんそれ、ダメです!」


「うふふ、いいじゃん私にもちょっと見せてよ。」


「やばいですってそれは。」

拓実が雑誌を取り返そうとしても、真弓は悪戯っぽく笑いながら手を離そうとしない。


「いいからいいから、私はもう拓実君がエッチなの知ってるから、ね?」


「……分かりましたよ。でも内容見て引かないでくださいよ。」


「大丈夫だよ。……へぇ~拓実君ってこういうの見てるんだぁ……わぁ、凄い……」


「はぁ……真弓さん、お茶ここに置ておきますよ。」

観念した拓実は小さなテーブルの上にペットボトルを置き、自分のエロ雑誌をペラペラとめくりながらチェックする真弓を恥ずかしそうに見ていた。

しかしエロ雑誌を見ていた真弓の方も、次第と顔が赤くなる。

そのエロ雑誌には丁度真弓と同じ歳くらいの女性達があられもない姿を晒していて、ヌードだけではなく、逞しい男達と激しくセックスをしている写真も沢山載っていた。

しかも野外露出や複数プレイ、アナルセックスなど、普通の夫婦の夜の営みとは違う、アブノーマルなものばかり。

そして表紙をもう一度よく確認すると〝人妻・若妻特集〟という文字が大きく書かれていた。

さらにページをめくる度に目に入る〝欲求不満の人妻〟〝淫乱妻〟などの卑猥な言葉。

雑誌に載っている女性達をつい自分と重ね合わせてしまい、急に恥ずかしくなってしまう真弓。


「も、もぉ……拓実君って、こういうのが好きなの?」


「好きって言うか……まぁ、はい……」


「どこでこんなの買ったの?」


「ちょっと前にコンビニで。目に入ったのでつい買っちゃったんです。」

雑誌の内容を見ただけでも拓実の性趣向がよく分かる。


「やっぱり拓実君って、ちょっと変態君?」

真弓が少し笑いながら聞いた。


「そう……かもしれません。気持ち悪いですか?」


「気持ち悪くはないけどぉ。凄いなぁと思って。なんか私の知らない世界って感じ。」


「真弓さんはこういうのした事ないんですか?」

そう言って拓実が人妻が野外露出や3Pをしているページを指差した。


「わ、私!?ある訳ないよぉ、こんなの。」

真弓は顔を真っ赤にして否定したが、改めてそれらの写真を見ると目が釘付けになってしまう。

逞しい男達にペニスを挿入され、乱れている女性達を見ていると、胸がさらにドキドキしてくる。

そして恥ずかしそうに顔を上げて拓実の方を見る真弓。


「……」


「……」

目が合うと、2人共また顔を赤くした。

それがなぜか可笑しく思えて、お互いにクスっと笑ってしまう。

そして真弓は、自分が今夜この部屋に来た理由を思い出す。


「……ねぇ拓実君……いつもこういうの見ながら〝アレ〟してるの?」


「そ、そうですね、あとはネットとかで見たり……」


「……あのさ……もう今からしたい感じ?」


「しても、いいんですか?」


「……うん、いいけど、ホントに私見てていいの?」


「……はい、真弓さんが嫌じゃなければ。」


「嫌じゃないよ。ていうか、ちょっと見てみたい……かな。」

真弓は恥ずかしそうに話しながらも、もう自分の好奇心を隠そうとはしなかった。


「真弓さん、今まで男のオナニー見た事なかったんですか?」


「ないよぉ、拓実君のを見たのが初めて。拓実君も人に見せるの初めて?」


「当たり前じゃないですか。」


「あはは、だよね。私達相当変な事しようとしてるよね。」


「ですね。」


「ねぇ拓実君、この事は他の人には秘密にしよ?なんか恥ずかしいし。」


「もちろんです。ていうか誰にも言えませんよ、こんな事。」


「だよね、あはは。」


「……」


「……」


「……じゃあ、もうしていいですか?」


「……うん。私、ここに座ってればいいのかな?」


「はい。じゃあ……」

そう言って拓実は椅子から立ち上がり、自分のズボンを下ろそうとする。


「えっ!?脱ぐの!?」


「えっ?だ、だって脱がないとできませんけど……」


「あ……そ、そうだよね、ごめん。」


「いいですか?脱いでも。」


「……うん。」



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