翌日、真弓が拓実の部屋のベッドで目を覚ましたのは昼頃だった。
隣でまだ眠っている拓実も、真弓自身も裸のまま。
真弓は拓実を起こさないようにゆっくりとベッドから降りた。
ゴミ箱には破られたコンドームの袋が3つ。
昨夜は明け方まで盛り上がった熱が冷めず、結局3回もセックスを(拓実の誕生日プレゼントと称して)してしまった。
そしてその中で真弓は5回もオーガズムに達した。最初のセックスで1回、そして後は2回ずつ。
「ハァハァ……真弓さん……!」
「あっあっイク……またイッちゃう……拓実君っ……ああっイクッ!」
自分の乱れっぷりを思い出すだけでも恥ずかしい。
でも、凄く気持ち良かった。
今までの性生活では殆ど絶頂を経験した事がなかった真弓が、昨日は一晩で何度も達してしまった。
しかも今まで経験した事のある絶頂感とは全く別物で、あの快感が深くて全身まで広がるような気持ち良さは、まさに真弓にとっても初体験だった。
やっぱり身体の相性ってあるのかもしれない……
人妻である真弓が、居候の拓実と身体の関係を持ってしまった事に対して罪悪感がない訳ではない。
でも今は正直〝知ってしまった〟という感情の方が圧倒的に大きい。
知ってしまった、本当のセックスの快楽を。
セックスって相手によってこんなにも違うものなんだ。
世の中にはこんなに気持ち良いものがあったんだと、感動すらしてしまっている。
拓実の寝顔は可愛い。
こんな可愛い男の子とのセックスが、あんなに気持ち良いなんて。
そしてこれからもしばらくは、拓実との2人っきりの生活は続いていく。
そう考えると、またいけない想像ばかりしてしまう。
「……」
真弓は服を着て、しばらく拓実の寝顔を眺めた後、母屋に戻って昼食の準備を始めた。
「拓実くーん!お昼ご飯できたよぉ!ほら、もう起きなきゃだよ。」
「ん……真弓…さん……?」
真弓の声でやっと目を覚ました拓実。
「おはよ、もうお昼だよ、ご飯食べるでしょ?」
「……は、はい。えっと……」
拓実はベッドから起き上がろうとしたところで自分が全裸である事に気付いて顔を赤くした。そして同時に昨夜真弓とした事も思い出したようだ。
そんな拓実を見て真弓はニッコリと笑顔を見せた。
「じゃあ服着たら、こっち来てね。もう準備できてるから。」
「は、はい……」
拓実にとっては初体験の後の目覚めだ。
嬉しいような恥ずかしいような、そんな気分なのだろう。
「拓実君、沢山食べるでしょ?今日も大盛りにしてあげるね。」
「はい、ありがとうございます。」
キッチンに立っている真弓の後姿をじっと見つめる拓実。
今はエプロン姿だけど、数時間前までこの人と裸でセックスしていたんだよなと、どうしても考えてしまう。
真弓の裸姿、柔らかな乳房、キスをした時の感触と舌を絡めたときの甘い味、そして濡れて熱くなった膣にペニスを締め付けられる感覚。
真弓の息遣いと喘ぎ声が、脳裏に焼き付いている。
そんな事を思い出していたら、また股間が疼いてきてしまう。
「拓実君、どうしたの?食べないの?」
「……え?あ、いえ、頂きます!」
「うふふ、美味しい?」
「はい、凄く美味しいです!」
食べっぷりの良い拓実を見て、真弓が嬉しそうにしているといういつも光景。
しかし、そんないつもと同じような昼食の時間を過ごしながらも、真弓も頭の中にあったのは昨夜の事だった。
「……」
食後のデザートを美味しそうに食べている拓実を見つめながら、考える真弓。
恥ずかしくて聞きづらいけど、拓実が今何を考えているのか気になる。そして我慢できなくなった真弓はついにその話題を出してしまう。
「……拓実君……あの……身体大丈夫?」
「……え?」
「ほら、昨日ので……拓実君、沢山頑張ってたから、大丈夫かなぁと思って。」
〝昨日の〟というのはもちろんセックスの事だ。
それを理解して拓実はまた顔を赤くした。
「あ……は、はい、俺は全然大丈夫です。」
「そ、そっか、それなら良いんだけど。」
「……真弓さんは……大丈夫ですか?」
「うん……あ、でもちょっと筋肉痛かも。」
真弓は照れた笑顔を見せながらそう言った。
どうしても笑顔になってしまうのは、気まずくなるのが嫌だからというのもある。
「きっと普段使わない筋肉を使ったんだろうね。」
「そ、そうですね……そういえば俺も内腿がちょっと筋肉痛になってるかもしれません。」
「そうそう、私も内腿なんだよね、あとお腹も。あ、でもこれってさ、もしかしてダイエットには丁度良いかもね。」
「確かにアレって結構インナーマッスル鍛えられますよね。」
「私達、昨日は相当カロリー消費したよねっ、あとで体重計乗ってみようかな。」
「でもあの後って凄くお腹減りませんか?」
「うんうん、私も起きたら腹ペコだったもん。結局その分食べちゃうから意味ないね。」
などと冗談ぽく言って、あははと笑い合う2人。
禁断の関係を持ってしまったにもかかわらず、この冗談で済ましている感じが、2人の間のハードルを下げる。
一度大きな壁を越えてしまったら、その後はもうそれ程抵抗を感じなくなってしまうのが人間だ。
そう、あれ程の快楽を味わってしまった2人が、一度だけでそれを止める事など、不可能だったのだ。
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