千佳は手に持った小さな紙を見て目を丸くしていた。
そしてその横にいる康介は驚いている千佳の様子を見て誇らしげに笑みを浮かべている。
今日は康介が先日受けたテスト、その結果が出た日なのだ。
康介
「どう?ビックリした?」
千佳
「う、うん……驚いちゃった……凄いね康介君。」
かなり高めに立てていた50位以内という目標。
それは千佳が恐らく無理だろうと思いながら立てた目標だ。
しかし康介のテストの結果はそれを大きく上回る30位だった。
その結果に千佳はただただ驚くばかり。
千佳
「本当に、康介君頑張ったんだね。」
康介
「フッ、まぁ俺がちょっと本気出せばこんなもんだよ。」
そう得意気に言う康介。
千佳も康介の家庭教師として成績アップに少しは貢献できたのだと思うと嬉しい気持ちになった。
千佳
「康介君の事見直しちゃった。これなら次は10位以内も夢じゃないね。」
康介
「え?いいよそんなの別に、今回だけだよ。」
千佳
「そんなのもったいないよ、この調子でいけばもっといい大学目指せるし。ね、また今日から頑張ろっ!よし、じゃあ早速今日も始めよっか!」
そう言って勢い良くソファから立ち上がった千佳は、いつも通りに康介の勉強机に向かおうとした。
しかしそんな千佳を康介がすぐに呼び止める。
康介
「ちょっと待てよ千佳先生、何か忘れてないか。」
そして康介のその声で、動きを止めた千佳はばつの悪そうな表情をしていた。
そう、千佳も忘れてはいなかったのだ、あの事を。
あのテスト前に康介とした約束の事を。
康介
「先生、忘れてないよね?あのご褒美の事。」
千佳
「……う、うん……」
まさかこんな事になるとは思っていなかった。
康介がテストであんなにいい点数を取るなんて。
いや、正直に言えば、もしかしてそういう事もあるかもしれないとは少し思ってはいた。
〝ご褒美〟の事も、万が一そういう事があれば仕方ないと覚悟を決めていた。
しかしこうやって実際にその時がやってくると、後悔の念を拭いきれない。
康介
「じゃあさ、ちょっとこっちに来てよ。俺の横に座って。」
千佳
「ぇ……康介君の横……?」
康介
「そうだよ、ここ来て。」
千佳
「でも……あのね、康介君……」
康介
「でもじゃなくて、早く来てよ。」
そう言って、康介は自分が座っているソファを手で軽く叩いた。
千佳
「……う、うん……」
約束した以上千佳もこの状況からは逃れられないと思ったのか、指示通りに康介の横に腰を下ろす。
この時すでに、これから起こることを想像してしまっているのか千佳の顔は真っ赤だった。
嫌じゃない。
触られたいと思っている訳ではないが、康介に身体を触られる事は不思議と嫌ではなかったのだ。
恋人でなくても、康介なら冗談っぽいノリで軽いボディタッチくらいは許せる気がした。
ただ、今は途轍(とてつ)もなく恥ずかしいだけ。
康介
「千佳先生どうしたんだよ、すげぇ顔赤いよ?別に男に胸触られるくらい初めてじゃないだろ?」
千佳
「……あ、あの……康介君、絶対しなきゃダメ?その……やっぱり私……」
康介
「はぁ?何言ってんだよ、約束なんだから当たり前じゃん。俺はそのためにテスト頑張ったんだし。」
千佳
「それは……そうだけど……」
康介に胸を触られるのは、恋人同士でするそれとは根本的に違う。
今横にいる康介は、明らかにスケベ心で千佳の胸の膨らみを見ているのだから。
千佳
「……。」
チラっと康介の手に視線を送る千佳。
男らしい大きい手。でも一方でそのスラッと長い指はとても繊細そうにも見える。
なんというか男性の手でも、康介の手は千佳の目から見て、とてもセクシーだと思えた。
この手がこれから自分の身体に触れてくる。そう考えるだけでなんだか身体が熱くなってくる気がした。
康介
「千佳先生ってホント恥ずかしがり屋なんだな。まぁその方が俺も触り甲斐があるけど。」
千佳
「……もう……エッチなんだから……」
考えてみれば、男の人に身体を触られるのは久しぶりの事。
康介とだって、これだけ長い時間この部屋に2人きりで過ごしてきたけれど、手や身体が触れる場面はなかった。
いや、もちろん2人は恋人ではないのだからそれは当然の事ではあるのだが。
兎に角、誰かに身体を触られるという事に千佳は全く慣れていないのだ。
康介
「じゃあさ、とりあえず俺に背中向けてよ。」
千佳
「え?……背中……向けるの?」
康介
「その方が触りやすいから。ほら、早くそっち向いて。」
千佳
「……うん……」
千佳はそう小さく返事をして、ソファに座ったまま康介に背中を向けるようにして身体の向きを変えた。
康介
「……先生ってさ、小柄だよな。後ろから見ると背中小さいし。」
千佳
「そ、そうかな……」
康介
「小柄なのに巨乳なんてエロイね?」
千佳
「ぅ……もう、変な事言わないでよ……あの、やるならやるで早く済ませて……」
もう顔から火が出そうだった。これ以上この緊張状態が続くのは辛い。
軽く触って、はい終わり!そんな感じでこの罰ゲームのようなご褒美を早く終わらせたいというのが千佳の今の気持ちだ。
康介
「はいはい、じゃあいくよ?」
千佳
「……うん……」
その返事を合図に、後ろから康介の大きな手が千佳の胸の前まで伸びてくる。
千佳はその康介の手を見て、恥ずかしさのあまり思わずグッと目を閉じた。
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