康介の部屋の奥にさらに扉がある事は前から知っていたし、そこが康介の寝室になっている事も聞いていた。
でも入るのはもちろん初めてだ。
康介に連れられその部屋に入ると、先程まで居た部屋とは違う香りを感じる。
芳香剤なのか、お香なのか分からないが、それは決して刺激の強いものではなく、ほのかに香る、優しくてどこか安心を感じるような香り。
寝室は小奇麗にされていて、真ん中には、数人は共に寝れるのではないかと思う程大きなベッドが置かれていた。
千佳
「康介君、いつもここで寝てるの?」
康介
「あぁ、まぁここで寝る時もあるし、向こうの家にも俺の部屋があるからね。そっちで寝る時もあるよ。」
まだ高校生なのに部屋が2つもあって、さらにその内の1つは離れの一軒家だなんて。改めて富田家は裕福なのだと思い知らされる。
康介は一旦千佳の手を離すと、窓のカーテンを閉めに行った。
そして日の光が入らなくなり暗くなった部屋に電気の明かりを点ける。
オレンジ色の少し温かみのある明かりだ。それに部屋の隅には所々に間接照明が設置されていて落ち着いた雰囲気を演出している。まるで高級ホテルの一室のようだ。
康介
「アロマキャンドル使っていい?」
千佳
「うん、なんかこの部屋良い香りすると思ってたんだけど、それだったんだ。」
康介
「そ、落ち着くからね。千佳先生こっち来てよ、ベッドに座ろう。」
千佳
「……うん。」
そう返事をして康介の隣に腰を下ろす千佳。
康介はベッドの横にある棚の引き出しから火を点けるためのライターを取り出す。
康介
「ちょっと待っててよ。」
そしてさらに別の引き出しを開けて、康介は長方形の箱を取り出す。
何を出したんだろうと、千佳は康介が手に持っているものを見る。
コンドームの箱だ。
それが分かった瞬間、千佳の胸が緊張と恥ずかしさで少し締め付けられる。
康介
「えーっと……あれ、新しいの出すか。」
康介はそう小さく呟きながら、手馴れた様子でその箱からコンドームを1個取り出し、キャンドルの横に置く。
そしてさらに新たな別の箱からコンドームを3個取り出し、それもキャンドルの横に置く。
並べられた4個のコンドームの袋に、キャンドルの明かりが反射しているのが、なんだか卑猥だ。
千佳 「……」
当たり前のようにコンドームを出してきた康介に、千佳は内心動揺していた。
いやもちろん、下着だけの姿になってこの寝室に入った時点で千佳も覚悟は決めているつもりだった。
それでも、こんなにも千佳の心が複雑に乱れてしまうのは、やはり康介が恋人ではないからなのかもしれない。
自分の気持ちにも、康介の気持ちにも確信が持てない。
付き合っている訳でもないし、お互いに好きと言った訳でもない。
数分前まで家庭教師と高校生だった2人が、ただ抱き合って、キスをして、そして今はベッドの上にいるんだ。
康介
「さて、いつまでも千佳先生だけその格好じゃなんだしね。」
そう言って康介は服を脱ぎ始める。
千佳はその間、康介から顔を背けていた。
康介
「ふぅ……千佳先生、こっち向いて。」
千佳の肩を康介が抱き寄せて、自分の方に向かせる。
隣の部屋で抱き締められた時とは違って、康介の素肌を感じる。
そして千佳の目に、上半身裸になった康介の姿が映る。
康介
「もっと寄り添って来てよ、こうやってさ。」
千佳
「……ぁ……」
康介がさらに身体を引き寄せると、千佳は康介の上半身に抱きつくような形で密着した。
千佳の頬と手が、康介の胸とお腹の辺りに触れる。
康介の身体はとても男らしくて逞しかった。
厚い胸板、ゴツゴツと固い筋肉で割れた腹筋。
服の上からでもその体格の良さは感じられたが、こうやって裸姿を見て、肌で触れるとさらにその印象は強まる。
その男らしさから漂うフェロモンに、千佳は頭の中が酔ってしまったような感覚に陥る。
アロマキャンドルの香りとは違う、康介の身体の匂い。
……ハァ……
思わず康介の肌に口付けをしたくなる衝動に駆られる。
でも自分からそんなに積極的にはできない。
康介
「千佳先生の髪、サラサラだね。」
そう言って自分の胸に顔をつけている千佳の髪の毛をそっと撫でる康介。
まるで子供の頭をヨシヨシと撫でるように。
そして時々、耳や項を指で軽く触ったりすると、千佳が擽(くすぐ)ったそうに微笑む。
どこか安心感を与えようとするようなその優しい愛撫を、千佳は目を閉じながら受け入れていた。
千佳
「ァン……もう、擽ったいよ。」
康介
「でも気持ち良いでしょ?ていうか千佳先生良い匂いするね、これシャンプーの香りかな。」
千佳
「分かんない……けど、康介君も……」
康介
「俺の匂いなんてするの?」
千佳
「……するよ。」
康介
「ハハッ、なんかエロいね、千佳先生って。」
千佳
「ち、違うよ……」
肌を密着させながらそんな会話を続ける2人。
片方の頬と耳を康介の胸に当てているから、そこから康介の低い声が響いて伝わってくる感覚が心地良い。
しかしそんな甘い時間を切り替えるかのように、康介は次の段階へと進もうとする。
康介
「千佳先生、これ……」
そう囁いて、千佳の背中に手を回す康介。
千佳
「ぇ……何……?……あっ!」
今まで胸にあった圧迫感が急に無くなるのを感じ、思わず声を出した千佳。
康介が千佳のブラジャーのホックを外したのだ。
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