それからも、真弓と拓実は今まで通り毎日一緒に早朝ランニングをし、食事を共にし、一緒に仲良くテレビを見たりと、今まで通り平穏な毎日を送っていた……ように見えたが違った。
「あ、また無くなってる。」
いつも洗濯をする時に真弓はそれに気付く。
そう、実はあのパンツ事件が発生してからも、毎日のように真弓のパンツは無くなっていたのだ。
もちろん犯人は拓実だ。
恐らく拓実はいつも風呂に入る時にパンツを盗んでいるのだろう。
そして拓実はその時に、真弓の脱ぎたてのパンツと交換するように前日に拝借したパンツを洗濯物カゴに戻していた。
だから真弓は毎日、洗濯物カゴに入れ替わって入っている2日前に脱いだパンツを洗っていた。
「もぉ……拓実君ったら、こんなやり方で私が気付かないとでも思ってるのかなぁ。」
いつも洗った下着を干す時に、ブラジャーとパンツの柄が別々になってしまうのだから、気付かない訳がない。
もちろんそれに対して思いつく対策はいくつもある。
下着を盗めないように隠そうと思えば隠せるし、拓実に先に風呂に入ってもらう事だってできる。
でも真弓はそれをしなかった。
こちらが変に気付いた素振りを見せて黙ったまま2人の関係が気まずくなるのも嫌だったし、もしかしたらその内に飽きて止めるかもしれないと思ったから。
しかし、一番の理由はそれらではなかった。
実は真弓もあの日からずっと、覗き行為を続けていたのだ。
「拓実君……今日もしてるのかな……?」
いつものように庭で洗濯物を干し終わったところで、真弓はまた拓実の部屋の窓の方を見つめていた。
拓実の部屋のレースのカーテンは、いつも同じ所に引っ掛かっているから、小さな隙間ではあるものの、そこに顔を近づければ部屋の中が丸見えだった。
いつもいけない事だと分かっていながらも、拓実が自分のパンツの匂いを嗅ぎながらオナニーをしていると思うと、気になって気になって仕方なかった。
そして真弓はその好奇心を抑えきれずに、結局そこへ吸い込まれるようにして窓近くにゆっくりと近づき、部屋の中を覗き込んだ。
そして案の定、真弓が部屋の中を覗いていると、拓実が勉強を中断してオナニーをし始めた。
下半身を惜しげもなく露出して、真弓のパンツの匂いを嗅ぎながら、その可愛げな顔には似合わない巨根を握りしめて扱き始める拓実。
「ハァ……真弓さん……」
いけない事だと分かっているのは、きっと拓実も一緒だろう。それでも止められないのだ。
真弓も、あの衝撃的な光景をまた見たくなって毎日ここへ来てしまう。
拓実にオカズにされている事に対して、真弓は興奮を覚えていたのだ。
――拓実君……凄く気持ち良さそうな顔してる……――
男がオナニーをする姿は、一般的にはあまり見たい物ではないのだろうし、人によっては不快に感じたり気持ち悪いと思うのかもしれない。でも真弓は少なくとも拓実のオナニー姿を見てそうは思っていなかった。
「ハァ……真弓さんっ……出るっ……う゛っ……はァッ……」
――あ、凄い……またあんなに沢山……――
まるで振ったシャンパンの栓を抜いた時のように大量の射精をする拓実。
ここ最近、毎日のように射精をしているというのに、毎回多量の精液を放つ拓実のその精力の強さに、真弓は驚くばかりだった。
そして何よりも、拓実は自分の事を考えながらそれだけの射精をしているのだと思うと、また胸のドキドキが止まらなくなって身体が熱くなる。
「はァ……私……」
拓実が射精する時のとても気持ち良さそうな顔や、終えた後のスッキリした表情を見ていると、真弓はなんだかそれが羨ましく思えた。
男の人は良いよね、出せばスッキリするんだもの。
拓実のオナニーを見てすっかり疼き始めてしまっていた自分の身体を解消できない事に、もどかしさを感じる真弓。
せっかくムラムラする気持ちを抑える事ができていたのに、この覗き行為が日課になってからは毎日ムラムラしっぱなしだった。
このムラムラが今の真弓の一番の悩み。
でも、かと言って拓実のオナニーを見たいという欲求も抑えきれない。
まさに真弓は抜け出せない欲求不満のスパイラルに入ってしまっていた。
「はぁ……もぉ、何か他の事で発散しないと私、どうにかなっちゃいそう……」
覗き行為を終えて、いつものように母屋に戻って来た真弓は本気で頭を抱えていた。
まさかこんなに性欲が強くなっちゃうなんて。まるで自分の身体じゃないみたい。
何とかこれを解消する術を見つけなければいけないけれど、今までみたいに家事を忙しくしてみても効果がない。それはきっと拓実がずっと近くにいるからだ。
「拓実君には悪いけど、昼間は1人でどこかへ出掛けるとか、そういう事をした方がいいのかもしれない。」
しかし、真弓がそんな事を検討し始めていた頃に、さらに事件は起きた。
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